中筒男命
なかつつのおのみこと
- 神話・伝説
- 男神・男性

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング36位
中筒男命とは?
中筒男命は記紀神話に登場する男神である。古事記では中筒之男命、日本書紀では中筒男命と記される。イザナギから生まれた神で、底筒男命、表筒男命と合わせて住吉三神と呼ばれる。三神を総称して住吉大神ともいい、神社によっては神功皇后にあたる息長帯姫命を合わせて祀ることもある。
イザナギが黄泉国から戻り、その穢れを清めるために筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原で禊を行った際に生まれた。古事記ではイザナギが水の中ほどで身をすすいだ時に中筒之男命が生まれ、水底から生まれた底筒之男命、水面から生まれた上筒之男命とともに墨江之三前大神とされている。日本書紀にも同様に底筒男命、中筒男命、表筒男命の三神が禊から生まれたとする伝承が記されている。
住吉三神は神功皇后の伝承にも重要な神として登場する。古事記では仲哀天皇の死後に神託を求めた際、底筒男、中筒男、上筒男の三柱の大神が神名を明かし、神功皇后の遠征を守護したとされる。日本書紀でも神功皇后が神託を求めた際、表筒男、中筒男、底筒男の三神がその名を現し、後に皇后の遠征を助ける神として描かれている。
こうした伝承から住吉三神は航海を守護する神として国家的な崇敬を受けるようになった。古代には遣唐使などが海を渡る際にも住吉大神が祀られ、航海の安全を祈願した。住吉大社が鎮座する住吉の地も古くから海上交通の要地であり、住吉大神は海上安全だけでなく、海運、貿易、外交などを守護する神として信仰を広げていった。
また、住吉大神は和歌の神としても広く信仰されている。平安時代以降、和歌や文学と深く結びつき、歌人から崇敬される文芸の守護神となった。さらにイザナギの禊から生まれた神であることから祓い清めの神としての性格も強く、海の神、航海の神、祓いの神、和歌の神という複数の神格を持つ。
中筒男命を含む住吉三神は全国各地の住吉神社に祀られている。その総本社である住吉大社では、第一本宮に底筒男命、第二本宮に中筒男命、第三本宮に表筒男命、第四本宮に神功皇后が祀られている。中筒男命には住吉大神として、海上安全、漁業守護、交通安全、厄除け、海運・貿易守護、文芸上達などのご利益があるとされる。
エピソード
イザナギが黄泉国の穢れを清めるために行った禊《みそぎ》から生まれた神である。『古事記』では中筒之男命、『日本書紀』では中筒男命と記される。
『古事記』によれば、イザナギは筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原《あわきはら》で禊を行った。水の底で身をすすぐと底津綿津見神と底筒之男命、水の中ほどですすぐと中津綿津見神と中筒之男命、水面ですすぐと上津綿津見神と上筒之男命が生まれた。中筒男命は、海を三つの領域に分けたうちの中ほどに対応する神である。
『日本書紀』の一書にも、イザナギが水の底、中ほど、水面ですすいだ際に、底筒男命、中筒男命、表筒男命が生まれたとする伝承が収められている。三柱は住吉三神と呼ばれ、単独ではなく一組の海神として信仰されてきた。
中筒男命は水中から生まれたという神話により、海や航海を守る神として位置づけられた。同時に、黄泉の穢れを取り除く禊から現れたことから、清めや祓いとも深く結びつく神である。
出典・参考:『古事記』上巻、『日本書紀』巻第一 神代上
中筒男命は、底筒男命、表筒男命とともに住吉大神として神功皇后の物語に登場する。『日本書紀』によれば、仲哀天皇の崩御後、神功皇后は神託に従って海を渡った。住吉三神はその航海を守護し、船を目的地へ導いた神々として語られている。
皇后が船団を進めると、追い風が起こり、海の魚が船を支えたと記される。この航海の成功によって、住吉三神は海上守護の神として特に重んじられるようになった。中筒男命もその一柱として、海上安全や航海守護を担う神となった。
帰還後、住吉大神の荒魂《あらみたま》は長門国(現在の山口県)に祀られ、和魂《にぎみたま》は摂津国(現在の大阪府)の大津渟中倉長峡《おおつのぬなくらのながお》に鎮まることを望んだと『日本書紀』は伝える。この地が現在の住吉大社の鎮座地に当たるとされ、神功皇后は田裳見宿禰《たもみのすくね》を神主として住吉三神を祀った。
中筒男命を含む住吉三神は、この神話を通じて皇室と国家の航海を守る神となった。のちには漁業、海運、貿易など海に関わる人々から広く信仰され、交通安全を守る神としても崇敬されている。
出典・参考:『日本書紀』巻第九 神功皇后紀、住吉大社「由緒」
大阪府大阪市の住吉大社では、底筒男命、中筒男命、表筒男命、息長足姫命《おきながたらしひめのみこと》をそれぞれ別の本宮に祀っている。中筒男命が祀られるのは第二本宮である。第一本宮には底筒男命、第三本宮には表筒男命、第四本宮には神功皇后に当たる息長足姫命が祀られている。
三柱を別々の本殿に祀る構成は、中筒男命が住吉三神の一柱であることを明確に示している。一方、各地の住吉神社では三柱を合わせて住吉大神として祀ることが多い。祭神ランキングで高い位置にあるのも、住吉信仰が各地へ広がり、中筒男命が住吉三神の一柱として多くの神社に祀られているためである。
住吉大神は海上守護だけでなく、和歌の神としても信仰された。『伊勢物語』には住吉の浜を舞台に歌を詠む場面があり、中世以降は住吉明神が和歌の守護神として重んじられた。ただし、これは中筒男命だけの神格ではなく、住吉大神全体に成立した信仰である。
中筒男命は、禊によって水中から生まれた海神であり、住吉三神の一柱として航海や交通を守り、さらに住吉信仰の広がりとともに文芸の守護神としても崇敬されてきた。
出典・参考:住吉大社「御祭神」「本宮」、『伊勢物語』
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
神格
ご神徳
別称・異称
なかつつのおのみこと
古事記
中筒男なかつつのお
古事記
中筒男命なかつつおのみこと
日本書紀/先代旧事本紀
赤土命あかつちのみこと
日本書紀/先代旧事本紀
中筒雄なかつつのお
日本書紀
関連する神様
神様グループ
祀られている主な神社
住吉大社
(大阪府住吉区住吉2-9-89)
住吉神社
(福岡県博多区住吉3丁目1−51)
安住神社
(栃木県高根沢町上高根沢2313)
桜神宮
(東京都世田谷区新町3丁目21-3)
住吉神社
(北海道小樽市住ノ江2丁目5番1号)
