底筒男命
そこつつのおのみこと
- 神話・伝説
- 男神・男性

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング41位
底筒男命とは?
底筒男命は記紀神話に登場する男神である。古事記では底筒之男命、日本書紀では底筒男命と記される。イザナギから生まれた神で、中筒男命、表筒男命と合わせて住吉三神と呼ばれる。三神を総称して住吉大神ともいい、神社によっては神功皇后にあたる息長帯姫命を合わせて祀ることもある。
イザナギが黄泉国から戻り、その穢れを清めるために筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原で禊を行った際に生まれた。古事記ではイザナギが水の底で身をすすいだ時に底筒之男命が生まれ、水の中ほどから生まれた中筒之男命、水面から生まれた上筒之男命とともに墨江之三前大神とされている。日本書紀にも同様に底筒男命、中筒男命、表筒男命の三神が禊から生まれたとする伝承が記されている。
住吉三神は神功皇后の伝承にも重要な神として登場する。古事記では仲哀天皇の死後に神託を求めた際、底筒男、中筒男、上筒男の三柱の大神が神名を明かし、神功皇后の遠征を守護したとされる。日本書紀でも神功皇后の伝承に底筒男、中筒男、表筒男の三神が登場し、航海を助ける神として重要な役割を果たしている。
こうした伝承から住吉三神は海や航海を守る神として国家的な崇敬を受けるようになった。古代には遣唐使などが海を渡る際にも住吉大神に航海の安全を祈願した。住吉大社が鎮座する住吉の地も古くから海上交通の要地であり、住吉大神は海上安全だけでなく、漁業、海運、貿易など海に関係する人々から広く信仰されてきた。また、イザナギの禊から生まれたことから、穢れを除く祓い清めの神としても信仰されている。
住吉大神は和歌や文学を守護する神としても知られる。『住吉大社神代記』をはじめとする住吉信仰の伝承や平安時代以降の文学の中で和歌との結びつきを深め、多くの歌人から崇敬を集めた。海の神、航海の神、祓いの神という古くからの神格に加え、後世には和歌の神としての性格も強くなった。
底筒男命には海上安全、航海安全、漁業守護、海運・貿易守護、交通安全、厄除け、文芸上達などのご利益があるとされる。底筒男命を含む住吉三神は全国各地の住吉神社で広く祀られている。その総本社である住吉大社(大阪府大阪市)では第一本宮に底筒男命、第二本宮に中筒男命、第三本宮に表筒男命、第四本宮に神功皇后が祀られている。また筑前国一宮の住吉神社(福岡県福岡市)をはじめ、各地の住吉神社でも住吉三神の一柱として祀られている。
エピソード
黄泉国から戻ったイザナギは、死の国で身についた穢れを清めるため、筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原《あはきはら》で禊《みそぎ》を行った。『古事記』では、水の底で身をすすいだ際に底津綿津見神《そこつわたつみのかみ》とともに生まれたのが、底筒男命である。
続いて水の中ほどから中筒男命、水面から表筒男命が生まれ、この三柱は墨江之三前大神《すみのえのみまえのおおかみ》、すなわち住吉三神とされた。『日本書紀』にも、イザナギが海底に沈んで身をすすいだとき、底津少童命《そこつわたつみのみこと》に続いて底筒男命が生まれたと記されている。
底筒男命の「底」は、その誕生した場所である水底に対応する。海中から生まれた住吉三神は海の神として信仰される一方、禊によって現れたことから、穢れを清める祓《はらえ》の神とも仰がれてきた。底筒男命は、海の最も深い場所を名に負う神として、住吉信仰を支える一柱となっている。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學「古事記神名データベース」、住吉大社公式サイト「住吉大社の由緒」
大阪府大阪市の住吉大社では、底筒男命が第一本宮の祭神として祀られている。第二本宮には中筒男命、第三本宮には表筒男命、第四本宮には息長足姫命《おきながたらしひめのみこと》、すなわち神功皇后が祀られ、四つの本宮が住吉大社の中心を形づくっている。
第一・第二・第三本宮は縦一列に並び、第三・第四本宮は横に並ぶ。この独特の配置は大海原を進む船団のようであるとも説明され、古代の祭祀形態を伝えるものとされる。四本宮の本殿はいずれも住吉造と呼ばれる古い神社建築様式で、現在の社殿は文化7年(1810年)に造営され、すべて国宝に指定されている。
底筒男命を祀る第一本宮は、この本宮配置の最も奥に鎮座する。水底から生まれた底筒男命、その後に生まれた中筒男命と表筒男命が順に祀られており、神話に登場する三柱の関係が、住吉大社の本宮にも明確に表されている。
出典・参考:住吉大社公式サイト「住吉大社の由緒」「建築様式」、文化庁「国指定文化財等データベース」
底筒男命は、中筒男命・表筒男命とともに住吉大神として信仰され、古くから航海の安全を守る神とされた。住吉大社の近くには、古代の港である住吉津《すみのえのつ》が開かれ、海外へ向かう船と都を結ぶ重要な場所となっていた。
奈良時代に遣唐使が派遣される際には、住吉大神に航海の無事を祈ったと伝えられる。『万葉集』巻十九には、「住吉に斎く祝《はふり》が神言《かむごと》と 行くとも来とも船は早けむ」と詠まれている。住吉に仕える神職が受けた神託のとおり、行きも帰りも船は速やかに進むだろうという意味の歌である。
海の底から生まれた底筒男命は、海の中ほどと水面から生まれた二神とともに、海全体を守る住吉大神として仰がれた。その信仰は漁民や船乗りだけでなく、外交使節や海運業者にも広がり、海を越えて旅立つ人々の心の支えとなった。
出典・参考:『万葉集』巻十九・4243番歌、奈良県立万葉文化館「万葉百科」、住吉大社公式サイト「住吉大社の神様」、文化庁「住吉大社」
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
神格
ご神徳
別称・異称
そこつつのおのみこと
古事記
底筒男そこつつのお
古事記
底筒男命そこつつおのみこと
日本書紀/先代旧事本紀
底土命そこつちのみこと
日本書紀/先代旧事本紀
底筒雄そこつつのお
日本書紀
関連する神様
神様グループ
祀られている主な神社
住吉大社
(大阪府住吉区住吉2-9-89)
住吉神社
(福岡県博多区住吉3丁目1−51)
安住神社
(栃木県高根沢町上高根沢2313)
桜神宮
(東京都世田谷区新町3丁目21-3)
住吉神社
(北海道小樽市住ノ江2丁目5番1号)
