ツマツヒメ
つまつひめ
- 神話・伝説
- 女神・女性

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング176位
ツマツヒメとは?
ツマツヒメは『日本書紀』に登場する女神である。抓津姫命、都麻都比賣命、爪津姫神、枛津姫命などとも表記される。伝承によっては抓津彦命と記され、男神として伝えられる場合もある。スサノオの娘で、兄に五十猛命、姉にオオヤツヒメがいる。
『日本書紀』の一書では、スサノオが髭や胸毛などから杉、檜、槙、楠などの樹木を生み、それぞれの用途を定めたという伝承に続いて、五十猛命が天降る際に多くの木種を持っていたことが語られている。五十猛命はその木種を韓地には植えず、すべて持ち帰って筑紫から始めて大八洲国中にまき、青山にしたとされる。そしてオオヤツヒメとツマツヒメの二柱も五十猛命とともに木種をまき、紀伊国へ渡ったと記されている。
この伝承から、五十猛命、オオヤツヒメ、ツマツヒメの三柱は樹木や林業に深く関わる神として信仰され、紀伊国を中心に祀られてきた。現在では三柱を合わせて「伊太祁曽三神」と呼ぶこともあり、林業や木材業、建築業などの守護神として崇敬されている。
神名の「ツマ」については、建築に用いる材木や建物の妻と関係する名称とみる説などがあるが、その語義は確定していない。ツマツヒメは樹木を国土へ広めた神話から、林業守護、材木業守護、建築業守護などの神徳で信仰されている。代表的な神社に和歌山県和歌山市の都麻津姫神社、伊太祁曽神社などがある。
エピソード
『日本書紀』神代上の一書では、スサノオが鬚や胸毛、尻毛、眉毛を抜いて放つと、それぞれ杉、檜、槙、樟になったと記されている。スサノオは杉と樟を船、檜を宮殿、槙を棺に用いるよう定め、さらに多くの木種を子の五十猛命へ授けた。
五十猛命は妹のオオヤツヒメ、ツマツヒメとともに木種を国中へまいた。青山となった土地は数多く、三神は最後に紀伊国(和歌山県)へ渡ったとされる。ツマツヒメはスサノオから直接木種を授けられた神としてではなく、兄の五十猛命を助け、姉のオオヤツヒメとともに国土を樹木で満たした女神として描かれている。
この神話では、樹木は自然に生い茂るだけの存在ではない。船によって人や物を運び、宮殿によって暮らしを支え、棺によって死者を送るために欠かせない資源である。ツマツヒメが林業や材木業、建築業の守護神とされるのは、三兄妹の植樹が人々の生活と国土経営の基盤を整えた物語だからである。
出典・参考:『日本書紀』神代上第八段一書第五、宇治谷孟訳『日本書紀』講談社学術文庫、和歌山県公式観光サイト「『古事記・日本書紀』に登場する和歌山の名所!」
『日本書紀』は、国中へ木種をまいた五十猛命、オオヤツヒメ、ツマツヒメの三神が紀伊国(和歌山県)へ渡ったと記している。紀伊国では五十猛命を祀る伊太祁曽神社、オオヤツヒメを祀る大屋都姫神社、ツマツヒメを祀る都麻津姫神社が成立し、三神は現在「伊太祁曽三神」と総称されている。
三社は当初から現在地に鎮座していたわけではない。伊太祁曽神社の社伝では、三神はもと日前神宮・國懸神宮の鎮座地に祀られていたが、両宮の鎮座に伴って遷座し、その後に三神が分かれて祀られるようになったという。『延喜式』神名帳にも、紀伊国名草郡の神社として伊太祁曽神社、大屋都比売神社、都麻都比売神社が記載されている。
ツマツヒメは三兄妹のうち単独の神話がほとんど伝わらない女神である。しかし紀伊国では、国土へ木を広めた三神の一柱として独立した神社に祀られ、姉兄と一体の木の神として信仰されてきた。記紀神話の短い記述が、紀伊国の森林と木材文化を背景に、三社からなる地域信仰へ発展したのである。
出典・参考:『日本書紀』神代上第八段一書第五、『延喜式』神名帳、伊太祁曽神社「御由緒」、和歌山県公式観光サイト「『古事記・日本書紀』に登場する和歌山の名所!」
出典文献
日本書紀
先代旧事本紀
神格
ご神徳
別称・異称
つまつひめのみこと
日本書紀
抓津姫命つまつひめのみこと
先代旧事本紀
都麻都比売つまつひめ
延喜式
抓津比売神つまつひめのかみ
その他
抓都姫神つまつひめのかみ
その他
柧津姫命つまつひめのみこと
その他
都麻津姫命つまつひめのみこと
その他
都麻津比売命つまつひめのみこと
その他
関連する神様
神様グループ
祀られている主な神社
稲佐神社
(佐賀県白石町辺田2925番)
苕野神社
(福島県浪江町請戸字東向38)
堀ノ内熊野神社
(東京都杉並区堀ノ内二丁目6番6)
高積神社
(和歌山県和歌山市禰宜1557番地)
都麻都姫神社
(和歌山県和歌山市平尾字若林957番地)
