オオヤツヒメ 神社の神様 - 神社ファン

オオヤツヒメ

おおやつひめ

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オオヤツヒメ

玉蘭斎貞秀(神佛図會)

祭神ランキング156位

オオヤツヒメとは?

オオヤツヒメは『日本書紀』などに登場する女神である。『日本書紀』では大屋津姫命と記され、大屋津媛命、大屋都比売、大屋姫命などの名でも呼ばれる。スサノオの娘であり、兄に五十猛命、妹にツマツヒメがいる。兄妹三神はいずれも樹木に深く関わる神として伝えられている。
『日本書紀』の一書では、スサノオが自らの鬚髯《ひげ》を抜いて放つと杉に、胸毛は檜に、尻の毛は槇に、眉毛は楠になったとされる。そして杉と楠は船、檜は宮殿、槇は人々を葬る棺に用いるよう定め、さらに多くの木種を生み出したという。スサノオの子である五十猛命は天降る際に多くの木種を持っていたが、韓地には植えず、筑紫から日本各地へまいて青山としたとされる。
さらに別の一書では、五十猛命と妹の大屋津姫命、ツマツヒメの三神が木種を分布させ、紀伊国へ渡ったと記されている。このためオオヤツヒメは五十猛命を補佐しただけの神ではなく、兄妹三神で日本の国土に樹木を広めた神の一柱として位置づけられている。紀伊国は古くから豊かな森林に恵まれ、三神は紀伊の樹木信仰と深く結びついて信仰されてきた。
神名の「屋」を家屋と捉え、オオヤツヒメを樹木そのものだけでなく、木材を利用して造られる家屋や建築に関わる神とみる説もある。スサノオの神話で樹木の用途として船や宮殿などが示されることからも、後世には林業や材木業、建築業など木材に関係する産業の守護神として崇敬されている。
代表的な神社に和歌山県和歌山市の大屋都姫神社があり、オオヤツヒメを主祭神として祀っている。また、同市の伊太祁曽神社でも五十猛命、ツマツヒメとともに祀られている。

エピソード

三兄妹で日本を青山にした木の女神
『日本書紀』神代上の一書では、スサノオが自らの鬚髯《しゅぜん》を抜いて散らすと杉となり、胸毛は檜《ひのき》、尻の毛は柀《まき》、眉毛は櫲樟《くすのき》になったと記されている。スサノオは杉と楠を船に、檜を宮殿に、槇を人々の棺に用いるものと定め、さらに多くの木種を生じさせた。
その木種を各地へ広めたのが、スサノオの子である五十猛命と、その妹のオオヤツヒメ、ツマツヒメであった。本文は三神について、いずれも木種を分布させることができたと記している。したがって、オオヤツヒメは兄の事業を手伝っただけの従属的な神ではなく、兄妹とともに樹木を広めた主体の一柱である。
別の一書では、五十猛命が多くの木種を携えて天降り、新羅には植えずにすべて持ち帰った後、筑紫から大八洲国の各地へまき、国土を青山にしたと語られる。この説話にはオオヤツヒメの名は現れない。五十猛命単独の説話と、三兄妹が木種を分布させた説話は、『日本書紀』に収められた別々の伝承として区別する必要がある。オオヤツヒメの神格を直接伝えるのは後者であり、木々に覆われた国土の形成に関わった女神として描かれている。

出典・参考:『日本書紀』神代上、和歌山県『和歌山県文化情報アーカイブ事業資料』



家屋と建築を守る神とされる理由
オオヤツヒメの神名に含まれる大屋は、大きな家屋や建造物を意味すると解釈されてきた。『日本書紀』には神名の由来を説明する記述はなく、オオヤツヒメ自身が家を建てたとも記されていない。しかし、木種を広めた神であることに加え、屋を含む神名から、樹木だけでなく建築や家屋を守護する神として信仰されるようになった。
『日本書紀』の一書では、スサノオが樹木ごとの用途を定めている。杉と楠は浮宝《うくたから》、すなわち船に用い、檜は瑞宮《みずのみや》の建材とし、槇は人々が葬られる棺の材料にするとされた。樹木は山に生える植物としてだけでなく、船、宮殿、葬具へ姿を変え、人間の生活と社会を支える資源として語られている
オオヤツヒメは、このような用途を持つ木々の種を五十猛命、ツマツヒメとともに分布させた神である。そのため林業や植林だけでなく、製材、木工、造船、建築との結びつきも理解しやすい。ただし、家屋の神という神格は『日本書紀』に明記されたものではなく、神名と木種分布の神話から発展した信仰上の解釈である。古典における樹木の女神という姿と、後世の建築守護神としての信仰を分けて捉えることで、オオヤツヒメの神格がどのように広がったのかが見えてくる。

出典・参考:『日本書紀』神代上、神社ファン「オオヤツヒメ」既存概要



三神が鎮まった紀伊国
『日本書紀』の一書は、オオヤツヒメ、五十猛命、ツマツヒメの三神が木種を分布させた後、紀伊国、現在の和歌山県へ渡って祀られたと伝える。紀伊という国名を木の国に由来するとみる説もあり、森林資源に恵まれた紀伊国では、三神が木の国を象徴する神々として信仰された。
三神を祀る中心的な神社が紀伊国一宮の伊太祁曽神社である。現在は中央の本殿に五十猛命、左右の脇殿に大屋津姫命と都麻津姫命を祀り、三神を一体的に奉斎している。一方、『続日本紀』大宝二年、七〇二年の記事には、伊太祁曽、大屋都比売、都麻都比売の三社を分けて遷したことが記されている。これにより、同じ木種分布神話を共有する三神が、それぞれ独立した神社でも祀られるようになったことが分かる。
『延喜式』神名帳では、紀伊国名草郡に伊太祁曽神社、大屋都比売神社、都麻都比売神社が並んで記載され、三社はいずれも名神大社に列している。オオヤツヒメを主祭神とする大屋都姫神社は、現在の和歌山市宇田森に鎮座する。オオヤツヒメは三兄妹の一柱として祀られるだけでなく、古代から独立した神社と祭祀を持つ重要な神であった。

出典・参考:『日本書紀』神代上、『続日本紀』大宝二年二月二十二日条、『延喜式』神名帳、伊太祁曽神社「境内の御案内」、和歌山県立博物館「九条家本延喜式神名帳」



大屋郷を開いた女神の伝承
島根県大田市大屋町の大屋姫命神社では、大屋姫命の名でオオヤツヒメを主祭神として祀っている。同社に伝わる由緒によれば、大屋姫命はスサノオの娘としてこの地に住み、周辺の造林と開拓を行った後、大屋郷と名づけて鎮座したという。これは『日本書紀』に記された紀伊国の木種分布神話とは異なる、石見国《いわみのくに》、現在の島根県に伝わる地域伝承である。
大屋の地は山地に囲まれ、森林と深く関わりながら生活が営まれてきた地域である。木種を各地に広めた女神を造林と開拓の祖神として迎えた伝承には、山林を育て、その資源によって集落を成り立たせてきた土地の信仰が表れている。大屋という地名についても、大屋姫命が名づけたと伝えられているが、これは神社の古老伝承であり、地名の歴史的な語源として確定しているわけではない。
同社では約百五十年の伝統を持つ大屋神楽が例祭に奉納されてきた。オオヤツヒメは紀伊国だけに閉じた神ではなく、石見国では森林を開き、郷土を築いた祖神として受け継がれたのである。古典の木種分布神話を基礎としながら、それぞれの土地の産業や開拓の歴史に応じて信仰の姿を変えてきたことが分かる。

出典・参考:島根県神社庁「大屋姫命神社」、大田市神社総代会「おおだ宮めぐり 大屋姫命神社」



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出典文献

日本書紀

先代旧事本紀

延喜式

神格

木種の神 林業の神

ご神徳

林業守護 材木業守護 建築業守護

別称・異称

大屋津姫命

おおやつひめのみこと

日本書紀

大屋姫命

おおやひめのみこと

先代旧事本紀

大屋都比売

おおやつひめ

延喜式

大屋比売神

おおやひめのかみ

その他

大屋津比売命

おおやつひめのみこと

その他

大屋都姫命

おおやつひめのみこと

その他

関連する神様

ツマツヒメ 

神様グループ

オオヤツヒメ・ツマツヒメ  八柱御子神 

祀られている主な神社

稲佐神社
(佐賀県白石町辺田2925番)
苕野神社
(福島県浪江町請戸字東向38)
堀ノ内熊野神社
(東京都杉並区堀ノ内二丁目6番6)
大屋都姫神社
(和歌山県和歌山市宇田森59番地)
高積神社
(和歌山県和歌山市禰宜1557番地)