ウワツワタツミ
うわつわたつみ
- 神話・伝説
- 不明

祭神ランキング141位
ウワツワタツミとは?
ウワツワタツミは記紀神話などに登場する海の神である。上津綿津見神、表津少童命などと表記される。黄泉国から戻ったイザナギが、身の穢れを祓うために禊を行った際に生まれた綿津見三神の一柱である。水の底から生まれたソコツワタツミ、水の中ほどから生まれたナカツワタツミに続き、水の表面で身をすすいだ時に生まれた。同じ禊では、底筒男命、中筒男命、表筒男命からなる住吉三神も生まれている。
三柱の綿津見神は阿曇連が祖神として奉斎した神であり、『古事記』では阿曇連を綿津見神の子である宇都志日金拆命の子孫としている。『先代旧事本紀』では、綿津見三神を阿曇連らが祀る筑紫の斯香神《しかのかみ》としている。神名の「ワタ」は海、「ツ」は連体助詞、「ミ」は神霊を表し、ワタツミは海を司る神霊を意味すると考えられている。
ウワツワタツミは海の表面から生まれた海神として、ソコツワタツミ、ナカツワタツミとともに海人集団を中心に信仰されてきた。海上安全、航海安全、漁業守護などの神徳で崇敬され、福岡県福岡市の志賀海神社、兵庫県神戸市の海神社などで祀られている。
エピソード
黄泉国から戻ったイザナギは、筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原《あわぎはら》で禊《みそぎ》を行った。『古事記』では、水の底で身をすすいだ際にソコツワタツミ、水の中ほどですすいだ際にナカツワタツミが生まれ、最後に水の上ですすいだ際にウワツワタツミが生まれた。続いて生まれたのが表筒男命である。
『日本書紀』神代上第五段の一書第六にも同様の神話があり、海底から底津少童命、潮の中から中津少童命、潮の上から表津少童命が生まれたと記される。ウワツワタツミは、海の底、中、上という垂直方向に分けられた三つの領域のうち、海面に近い領域に対応する海神である。
ウワツワタツミを含む綿津見三神と、表筒男命を含む住吉三神は、同じ禊から生まれ、海の底、中、上に対応する二組の海神として描かれている。ただし、記紀では綿津見三神は阿曇連が奉斎する神、筒男三神は住吉大神とされており、両者を同一神とはしていない。ウワツワタツミは海の表を象徴し、船が行き交う海上と人々の暮らしを結ぶ海神として信仰されてきた。
出典・参考:『古事記』上巻、『日本書紀』神代上第五段一書第六、國學院大學古典文化学事業「上津綿津見神」
ウワツワタツミは、『古事記』では上津綿津見神、『日本書紀』神代上第五段の一書第六では表津少童命と表記される。上と表はいずれも海の底や中に対する海面側の領域を示し、ソコツワタツミ、ナカツワタツミとともに海を三層に分ける神名となっている。
『古事記』の上津綿津見神には、上の字を宇閉《うへ》と読む訓注が付されている。このため神名をウヘツワタツミと読む説と、ほかの語を修飾する際に音が変化したウハツワタツミと読む説がある。現在はウワツワタツミという読みが広く用いられるが、古典の訓読には複数の考え方がある。
福岡県福岡市の志賀海神社では、底津綿津見神、仲津綿津見神とともに表津綿津見神の名で祀られている。ここでは『古事記』の上津ではなく、『日本書紀』と同じく海の表を示す表津の表記が受け継がれている。上津綿津見神と表津綿津見神は別の神ではなく、古典や神社によって異なる文字で表されたウワツワタツミの神名である。
出典・参考:『古事記』上巻、『日本書紀』神代上第五段一書第六、國學院大學古典文化学事業「上津綿津見神」「志賀海神社」、福岡市文化財情報検索「志賀海神社」
『古事記』は、ウワツワタツミを含む三柱の綿津見神について、阿曇連《あづみのむらじ》らが祖神として奉斎する神であると記している。さらに阿曇連は、綿津見神の子である宇都志日金拆命の子孫とされる。『日本書紀』神代上の一書第六も、底津少童命、中津少童命、表津少童命を阿曇連らが祀る神としている。
阿曇氏は海人を統率し、航海や漁業、海上交通に関わった古代の有力氏族である。その祭祀を伝える代表的な神社が、筑前国《ちくぜんのくに、現在の福岡県》の志賀島に鎮座する志賀海神社である。『延喜式』神名帳では志賀海神社三座として名神大社に列し、『万葉集』にも志賀の皇神を忘れないと詠む歌が残されている。
志賀海神社は玄界灘を望む海上交通の要衝にあり、底津綿津見神、仲津綿津見神、表津綿津見神を祀る。現在も漁の安全や大漁を願う参拝が行われ、歩射祭、山誉祭、神幸行事などの祭礼が受け継がれている。海面に対応するウワツワタツミは、海を渡る船や漁業に携わる人々にとって最も身近な海の領域を守る神として、阿曇氏の祖神から広く海上を守護する神へと信仰を広げたのである。
出典・参考:『古事記』上巻、『日本書紀』神代上第五段一書第六、『先代旧事本紀』、國學院大學古典文化学事業「上津綿津見神」「志賀海神社」、福岡市文化財情報検索「志賀海神社」
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
神格
ご神徳
別称・異称
うわつわかつみにかみ
古事記
表津少童命うわつわたつみのみこと
日本書紀/先代旧事本紀
表津小童命うわつわたつみのみこと
その他
表津海童命うわつわたつみのみこと
その他
表綿津美神うわつわたつみのかみ
その他
同一とされる神様
神様グループ
祀られている主な神社
海神社
(兵庫県垂水区宮本町5−1)
志賀海神社
(福岡県東区大字志賀島877)
龍宮神社
(北海道小樽市稲穂3丁目22番11号)
赤尾渋垂郡辺神社
(静岡県袋井市高尾193)
龍神宮
(和歌山県田辺市上秋津龍神山)
