ソコツワタツミ
そこつわたつみ
- 神話・伝説
- 不明

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング140位
ソコツワタツミとは?
ソコツワタツミは記紀神話などに登場する海の神である。底津綿津見神、底津少童命などと表記される。黄泉国から戻ったイザナギが、身の穢れを祓うために禊を行った際に生まれた綿津見三神の一柱である。水の底で身をすすいだ時に生まれ、続いて水の中ほどからナカツワタツミ、水の表面からウワツワタツミが生まれた。同じ禊では、底筒男命、中筒男命、表筒男命からなる住吉三神も生まれている。
三柱の綿津見神は阿曇連が祖神として奉斎した神であり、『古事記』では阿曇連を綿津見神の子である宇都志日金拆命の子孫としている。『先代旧事本紀』では、綿津見三神を阿曇連らが祀る筑紫の斯香神《しかのかみ》としている。神名の「ワタ」は海、「ツ」は連体助詞、「ミ」は神霊を表し、ワタツミは海を司る神霊を意味すると考えられている。
ソコツワタツミは海の底から生まれた海神として、ナカツワタツミ、ウワツワタツミとともに海人集団を中心に信仰されてきた。海上安全、航海安全、漁業守護などの神徳で崇敬され、福岡県福岡市の志賀海神社、兵庫県神戸市の海神社などで祀られている。
エピソード
黄泉国から戻ったイザナギは、筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原《あわぎはら》で禊《みそぎ》を行った。『古事記』では、水の底で身をすすいだ際にソコツワタツミが生まれ、次に底筒男命が生まれた。続いて水の中ほどからナカツワタツミと中筒男命、水の上からウワツワタツミと上筒男命が生まれている。
『日本書紀』神代上第五段の一書第六にも同様の神話があり、海の底に潜ってすすいだ時に底津少童命、続いて底筒男命が生まれたと記される。古事記と日本書紀では神名の表記が異なるが、ソコツワタツミが海底に対応する綿津見神である点は共通している。
ソコツワタツミを含む三柱の綿津見神と、底筒男命を含む住吉三神は、同じ禊から生まれ、海の底、中、上に対応する二組の海神である。ただし、記紀では綿津見三神は阿曇連が奉斎する神、筒男三神は住吉大神とされており、両者を同一神とはしていない。ソコツワタツミは、海の最も深い領域を象徴するとともに、死の国から帰ったイザナギの穢れを洗い清める禊から誕生した海神なのである。
出典・参考:『古事記』上巻、『日本書紀』神代上第五段一書第六、國學院大學古典文化学事業「底津綿津見神」
『古事記』は、ソコツワタツミ、ナカツワタツミ、ウワツワタツミの三柱について、阿曇連《あづみのむらじ》らが祖神として奉斎する神であると記している。さらに阿曇連は、綿津見神の子である宇都志日金拆命の子孫とされる。『日本書紀』神代上の一書第六も、底津少童命、中津少童命、表津少童命を阿曇連らが祀る神としている。
阿曇氏は海人を統率し、航海や漁業、海上交通に関わった古代の有力氏族である。その拠点の一つと考えられている筑前国《ちくぜんのくに、現在の福岡県》の志賀島には、綿津見三神を祀る志賀海神社が鎮座する。『先代旧事本紀』では三柱を、阿曇連らが祀る筑紫の斯香神と記しており、斯香は志賀に通じると考えられている。
志賀海神社は玄界灘を望む海上交通の要衝にあり、『延喜式』神名帳では志賀海神社三座として名神大社に列している。『万葉集』にも志賀の皇神を忘れないと詠む歌が残り、古くから海上の守護神として信仰されたことがうかがえる。ソコツワタツミは神話上の海底の神であるだけでなく、海を生活と活動の場とした阿曇氏の祖神として、航海の安全を守る具体的な信仰へ結びついた神である。
出典・参考:『古事記』上巻、『日本書紀』神代上第五段一書第六、『先代旧事本紀』、國學院大學古典文化学事業「底津綿津見神」「志賀海神社」、福岡市文化財情報検索「志賀海神社」
播磨国《はりまのくに、現在の兵庫県》の海神社では、ソコツワタツミが主祭神として祀られ、ナカツワタツミとウワツワタツミが配祀されている。神戸市垂水区の海辺に鎮座し、古くから航海安全、漁業繁栄、生業繁栄の守護神として信仰されてきた神社である。
社伝によれば、神功皇后が朝鮮半島からの帰路に暴風雨に遭い、船を進められなくなった際、綿津見三神を祀って祈願した。すると風波が鎮まり、無事に都へ帰ることができたため、三神を祀る社を建てたことが海神社の始まりとされる。この創建譚は海神社に伝わる後世の社伝であり、記紀にソコツワタツミが神功皇后の船を救ったとする直接の記述があるわけではない。
海神社では、神輿を船へ乗せて海上を渡御する神幸祭が現在も行われている。海底に対応するソコツワタツミが三神の中心に祀られ、海上を進む神輿が地域の海を巡る祭礼は、神話の海神が漁業や船舶に携わる人々の守護神として受け継がれてきたことを示している。ソコツワタツミは、明石海峡を望む垂水の地で海の底から海上までを守る綿津見三神の中心として信仰されているのである。
出典・参考:海神社公式サイト「ご由緒」、兵庫県神社庁「海神社」、神戸市垂水区「史跡・名所案内」
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
神格
ご神徳
別称・異称
そこつわたつみのかみ
古事記
底津少童命そこつわたつみのみこと
日本書紀/先代旧事本紀
底津小童命そこつわたつみのみこと
その他
底綿津美神そこつわたつみのかみ
その他
同一とされる神様
神様グループ
祀られている主な神社
海神社
(兵庫県垂水区宮本町5−1)
志賀海神社
(福岡県東区大字志賀島877)
龍宮神社
(北海道小樽市稲穂3丁目22番11号)
川會神社
(長野県池田町大字会染字十日市場12079)
赤尾渋垂郡辺神社
(静岡県袋井市高尾193)
