オオワタツミ 神社の神様 - 神社ファン

オオワタツミ

おおわたつみ

  • 神話・伝説
  • 男神・男性
オオワタツミ

玉蘭斎貞秀(神佛図會)

祭神ランキング57位

オオワタツミとは?

オオワタツミは記紀神話などに登場する海の神である。古事記では大綿津見神と記され、ほかに大海津見神、和多都美神などの表記も見られる。後世では男神として扱われることが多い。日本書紀では海神、海神豊玉彦などの名で海を司る神が登場する。
古事記ではイザナギとイザナミが国生みを終えた後に行った神生みで誕生する。大事忍男神、家宅に関係する神々に続いて海の神として大綿津見神が生まれ、その後には水戸神、風神、木神、山神など自然を司る神々が次々と生まれている。神名の「ワタ」は海、「ツ」は連体助詞、「ミ」は神霊を表すとする説があり、「ワタツミ」は海を司る神霊を意味すると考えられている。
海幸彦・山幸彦神話では、綿津見大神が海神の宮の主として登場する。山幸彦のホオリは、兄である海幸彦ホデリから借りた釣針をなくしてしまい、塩椎神の助けを受けて海神の宮へ向かった。そこで海神の娘トヨタマヒメと出会って結婚し、3年を過ごした。やがて綿津見大神は海の魚を集めて失われた釣針を探し出し、ホオリに潮満珠と潮干珠を授けて地上へ送り返した。
神生みで誕生する大綿津見神と、海幸彦・山幸彦神話に登場する綿津見大神について、古事記は両者が同一神であるとは明記していない。しかし、ともに海を司るワタツミ神であることから、一般には同一または極めて近い神格として扱われることが多い。日本書紀にも海神豊玉彦などの海神が登場し、トヨタマヒメの父として描かれている。
ホオリとトヨタマヒメの間にはウガヤフキアエズが生まれた。さらにウガヤフキアエズは海神の娘でトヨタマヒメの妹にあたる玉依姫命と結婚し、その間に後の神武天皇が生まれる。この系譜によって海神は皇室の母系の祖先に位置づけられ、天孫から神武天皇へと続く皇統に海神の血統が加わることになる。
一方、イザナギが黄泉国から帰還して禊を行った際には、底津綿津見神、中津綿津見神、上津綿津見神の綿津見三神が生まれている。これら三神は神生みで誕生した大綿津見神とは出生が異なるため、記紀神話上は区別して考える必要がある。綿津見三神は阿曇連らの祖神として祀られ、大綿津見神を含むワタツミ神への信仰は古代の海人集団や航海・漁業とも深く結びついていった。
オオワタツミは海を司る神として航海安全、海上安全、漁業守護、大漁などの信仰を集めている。代表的な神社には穂高神社(長野県安曇野市)や大海神社(大阪府大阪市)があり、このほか全国各地の綿津見神社、海神社などで海神として祀られている。

エピソード

神生みによって誕生した大海原の神
オオワタツミは、『古事記』では大綿津見神《おおわたつみのかみ》と記される海の神である。『日本書紀』には少童命《わたつみのみこと》や海神《わたつみ》などの名が見られ、海神宮の主は豊玉彦《とよたまひこ》とも呼ばれている。
『古事記』によれば、イザナギとイザナミは国生みを終えると、続いて自然や生活に関わる神々を生んだ。大事忍男神と家宅六神に続き、8番目に生まれたのが大綿津見神である。その後には水戸、風、木、山、野などをつかさどる神々が生まれており、大綿津見神は世界を構成する大海原を代表する神として位置づけられている。
ワタツミのワタは海、ツは連体助詞、ミは神秘的な力を持つ霊格を表し、海の神霊という意味と考えられている。自然としての海そのものではなく、海とその恵みを支配する神とする見方もある。また、大という美称が付くことから、特定の海域ではなく、広大な海全体を象徴する神と考えられている。
一方、『古事記』ではスサノオもイザナギから海原を治めるよう命じられている。両者の関係は説明されていないが、大綿津見神は神生みによって海を象徴する存在として生まれ、スサノオは後に海原の統治を命じられた神として、それぞれ異なる場面に登場する。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「大綿津見神」



山幸彦を海神宮へ迎えた海の王
『古事記』の海幸彦山幸彦神話では、大綿津見神と同類の海神である綿津見大神が、海底にある海神宮の主として登場する。山幸彦と呼ばれるホオリは、兄である海幸彦のホデリから借りた釣針をなくし、塩椎神の助けを受けて海神宮へ向かった。
海神はホオリが天つ神の御子であることを知ると、宮殿へ迎えて丁重にもてなした。さらに娘の豊玉毘売と結婚させ、ホオリは海神宮で3年を過ごした。やがてホオリが失った釣針を思い出して嘆くと、海神は海中に住む大小の魚を集め、その行方を尋ねた。すると鯛の喉から、なくした釣針が見つかった。
海神は釣針を返すだけでなく、潮を満たす塩盈珠《しおみつたま》と、潮を引かせる塩乾珠《しおひるたま》をホオリへ授けた。さらに釣針を兄へ返す方法と、二つの珠を使って兄を従わせる方法を教え、鰐《わに》にホオリを地上まで送らせた。
海神は娘を嫁がせ、失われた釣針を探し、潮を動かす神宝まで授けた。海の生き物と潮の満ち引きを支配する力を示し、窮地に陥ったホオリを救った海の王として描かれている。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「綿津見神」「海幸山幸」



二人の娘から皇室へ続く系譜
海神には、豊玉毘売と玉依毘売という二人の娘がいた。姉の豊玉毘売は、海神宮を訪れたホオリと結婚し、地上へ戻った夫を追って海辺を訪れると、鵜の羽を用いた産屋で御子を産んだ。この御子が鵜葺草葺不合命である。
豊玉毘売は、出産する姿を見ないようホオリに頼んだ。しかし、約束を破ったホオリに本来の姿を見られたため、海へ帰ってしまう。豊玉毘売は御子を養育するため、妹の玉依毘売を地上へ遣わした。
成長した鵜葺草葺不合命は玉依毘売と結婚し、4柱の御子をもうけた。その末の御子が若御毛沼命《わかみけぬのみこと》、またの名を神倭伊波礼毘古命《かむやまといわれびこのみこと》といい、後の神武天皇となった。
海神は豊玉毘売を通じて神武天皇の父方の祖先となり、玉依毘売を通じて母方の祖先にもなった。二人の娘によって海神の血統が皇室へ受け継がれたため、海をつかさどるだけでなく、皇室につながる祖神としても位置づけられている。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「豊玉毘売」「玉依毘売」



大綿津見神と綿津見三神の違い
『古事記』には、大綿津見神のほかにもワタツミの名を持つ神々が登場する。イザナギが黄泉国《よみのくに》から戻り、筑紫の日向で禊を行った際、海の底、中ほど、水面で身をすすいだことによって、底津綿津見神、中津綿津見神、上津綿津見神が生まれた。三柱はあわせて綿津見三神と呼ばれる。
大綿津見神がイザナギとイザナミの神生みによって生まれたのに対し、綿津見三神はイザナギの禊から生まれている。そのため、記紀上は出生の異なる神々として区別される。綿津見三神は海人の氏族である阿曇連《あずみのむらじ》が祀る祖神とも記されている。
ただし、海神宮の主である綿津見大神を含め、ワタツミと呼ばれる神々の関係は記紀でも明確に説明されていない。すべて同一神とも、完全に別々の神とも断定できず、海の神を表すワタツミという名のもとに、それぞれ異なる性格を持つ神々が伝えられたと考えられている。
神社信仰でも、住吉大社の大海神社では海神宮の主にあたる豊玉彦命を祀り、志賀神社では綿津見三神を祀っている。穂高神社では、海神の後裔とされる安曇族の祖神・穂高見命とともに綿津見命が祀られている。こうした信仰は各地の海人によって広まり、航海安全や漁業守護、海陸交通の守護へと受け継がれた。

出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「大綿津見神」「綿津見神」、住吉大社公式サイト「大海神社」「志賀神社」、穂高神社公式サイト「穂高神社を知る」



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出典文献

古事記

日本書紀

先代旧事本紀

神格

海の神

ご神徳

航海安全 漁業守護 病気平癒 家内安全 安産祈願

別称・異称

大綿津見神

おおわたつみのかみ

古事記/先代旧事本紀

綿津見神

わたつみのかみ

古事記

少童命

わたつみのみこと

日本書紀/先代旧事本紀

海神

わたつみ

日本書紀

海童

わたつみ

日本書紀

豊玉彦

とよたまひこ

日本書紀

綿積命

わたつみのみこと

新撰姓氏録

和多羅豊命

わたらとよのみこと

新撰姓氏録

大和多羅命

おおわたらのみこと

新撰姓氏録

綿積豊玉彦神

わたつみよとよたまひこのかみ

新撰姓氏録

和多都弥

わたつみ

山城国風土記 逸文

大海津見神

おおわたつみのかみ

その他

和多津美命

わたつみのみこと

その他

和多津見神

わたつみのかみ

その他

和田津美神

わたつみのかみ

その他

大海神

おおわたつみのかみ

その他

大海積大神

おおわたつみのおおかみ

その他

大海竜命

おおわたつみのみこと

その他

大渡津見神

おおわたつみのかみ

その他

大綿津海神

おおわたつみのかみ

その他

大綿積大神

おおわたつみのおおかみ

その他

小童命

わたつみのみこと

その他

少海童神

わたつみのかみ

その他

海津見神

わたつみのかみ

その他

海祇神

わたつみのかみ

その他

綿津海神

わたつみのかみ

その他

綿津美命

わたつみのみこと

その他

神様グループ

三十五神 

祀られている主な神社

穂高神社
(長野県安曇野市穂高字宮脇6079)
沼名前神社
(広島県福山市鞆町後地1225番地 )
箱崎八幡神社
(長崎県壱岐市芦辺町箱崎釘の尾触823)
船魂神社
(北海道函館市元町7番2号)
神威神社
(北海道積丹町大字来岸町10番地)