タキリビメ 神社の神様 - 神社ファン

タキリビメ

たきりびめ

  • 神話・伝説
  • 女神・女性
タキリビメ

細田富延(神代正語常磐草)

祭神ランキング33位

タキリビメとは?

タキリビメは記紀神話に登場する女神。アマテラスとスサノオの誓約の段で、アマテラスがスサノオの十握剣を噛み砕き、吹き出した霧の中から生まれた三女神の一柱で、姉妹のタギツヒメ、イチキシマヒメと合わせて宗像三女神と呼ばれる。また、同じ誓約で生まれた五柱の男神と合わせて五男三女神と呼ばれている。
『古事記』では多紀理毘売命と記すほか、奥津島比売命の異名を持ち、宗像の沖津宮に鎮座する神とされる。『日本書紀』本文では田心姫と記されるが、諸異伝には田霧姫などの神名も見られ、三女神の名前や誕生順、鎮座地の組み合わせは伝承によって異なる。『古事記』では大国主神に嫁ぎ、阿遅鉏高日子根神と下光比売命を産んだとされる。
現在の宗像大社では、田心姫神の名で沖ノ島の沖津宮に祀られている。宗像三女神はアマテラスから海上の道に降り、天孫を助けるよう命じられた神々である。古くから海上交通と国家を守る神として崇敬され、宗像信仰とともに全国へ広がった。タキリビメを祀る神社は多く、単体で祀る神社としては日光二荒山神社が有名である。海の神、水の神、航海の神とされ、海上安全、交通安全、大漁祈願などのご利益がある。

エピソード

誓約でスサノオの剣から生まれた女神
タキリビメは、アマテラススサノオが高天原で行った誓約《うけい》から生まれた宗像三女神の一柱である。スサノオが高天原を訪れた際、アマテラスは国を奪いに来たのではないかと疑い、武装して迎えた。スサノオは邪心がないことを示すため、互いの持ち物から神を生む誓約を申し出た。
『古事記』では、アマテラスがスサノオの十拳剣《とつかのつるぎ》を受け取り、三つに折って天真名井《あめのまない》の水ですすいだ。これを噛み砕き、吹き出した息の霧から最初に生まれたのが多紀理毘売命である。続いて市寸島比売命多岐都比売命が生まれ、三柱は宗像三女神として胸形君らに祀られる神とされた。
『日本書紀』本文でも、アマテラスがスサノオの剣を噛み砕き、吹き出した霧から三女神が生まれる。ただし、神名は田心姫、湍津姫、市杵嶋姫と記され、諸異伝では名前や誕生の順序が異なる。タキリビメを常に三女神の長女とすることはできないが、『古事記』と『日本書紀』本文では最初に生まれた女神として描かれている。
この誕生神話により、タキリビメはアマテラスの息から現れた神であると同時に、スサノオの剣を物実《ものざね》として生まれた神でもある。宗像三女神がアマテラスとスサノオの双方に深く結びつくのは、この誓約によって誕生したためである。

出典・参考:『古事記』上巻、『日本書紀』巻第一 神代上 第六段



異なる神名と宗像大社沖津宮への鎮座
タキリビメには、多紀理毘売命、田心姫、田霧姫、奥津島比売命など複数の神名が伝わる。『古事記』では多紀理毘売命と記され、奥津島比売命という別名を持ち、宗像三女神のうち沖津宮《おきつみや》に鎮座する神とされている。
『日本書紀』本文では田心姫《たごりひめ》と記され、沖津宮に鎮座する。現在の宗像大社でも、玄界灘の沖ノ島にある沖津宮の祭神は田心姫神である。このため、多紀理毘売命と田心姫神は、一般に同じ宗像三女神の一柱として扱われている。田心姫はタキリビメとは別の姉妹ではなく、『日本書紀』や現在の宗像大社で用いられる神名である。
ただし、『日本書紀』の諸異伝では、瀛津島姫《おきつしまひめ》や市杵島姫を沖津宮の神とする説もあり、三女神の神名と鎮座地の組み合わせは一定していない。古典には複数の伝承が収められているため、現在の宗像大社の祭神配置を、すべての異伝に共通するものとして扱うことはできない。
タキリビメが奥津島比売命とも呼ばれるのは、沖ノ島に鎮座する神としての性格を示している。沖ノ島は古代から大陸へ向かう海路の要衝に位置し、島そのものが宗像大社の境内として守られてきた。タキリビメは、この島に鎮まって海の道を守る女神として信仰されている。

出典・参考:『古事記』上巻、『日本書紀』巻第一 神代上 第六段、宗像大社「由緒」「沖津宮」



大国主神との間に生まれた二柱の神
『古事記』では、タキリビメは宗像三女神の一柱として誕生した後、大国主神の系譜にも登場する。大国主神が胸形の奥津宮に鎮座する多紀理毘売命を娶り、二柱の神をもうけたと記されている。
最初に生まれたのは阿遅鉏高日子根神《あぢすきたかひこねのかみ》で、迦毛大御神《かものおおみかみ》とも呼ばれる。もう一柱は高比売命《たかひめのみこと》で、下光比売命《したてるひめのみこと》とも呼ばれる女神である。阿遅鉏高日子根神と下光比売命は、のちの国譲り神話で天若日子《あめのわかひこ》の死にかかわる神として登場する。
この系譜により、タキリビメは海上守護を担う宗像の女神であるだけでなく、出雲の国造りを行った大国主神の后神としての性格も持つ。高天原の誓約から生まれた宗像三女神の一柱が、大国主神と結ばれ、国津神の系譜へ連なっているのである。
ただし、タキリビメと大国主神の婚姻や二柱の子神について記すのは『古事記』である。現在の宗像大社では田心姫神を沖津宮に祀っているが、その由緒において大国主神の后神であることを中心としているわけではない。古典の系譜と現在の宗像信仰は分けて捉える必要がある。

出典・参考:『古事記』上巻



海の道を守り、全国へ広がった宗像の神
『日本書紀』では、アマテラスが宗像三女神に対し、海上の道へ降り、天孫を助けて天孫から祀られるよう命じたと記されている。この神勅により、タキリビメを含む宗像三女神は、海の道と国家を守る神として位置づけられた。
宗像大社の沖津宮が鎮座する沖ノ島は、九州と朝鮮半島の間に位置する。古代には大陸との外交や交易にかかわる重要な海路上にあり、4世紀から9世紀にかけて国家的な祭祀が行われた。島から出土した多数の奉献品は、航海の安全や対外交流の成就を願う祭祀が長期間続いたことを伝えている。沖津宮に祀られるタキリビメは、宗像三女神の中でも外海に面する最も沖合の宮を守る神である。
宗像の神々は古くから各地へ勧請された。『日本三代実録』や『延喜式』には各地の宗像神社や関連する神社が記され、現在も厳島神社をはじめ、宗像三女神を祀る神社が全国に分布している。タキリビメが多くの神社で祀られているのは、宗像信仰が海上交通の広がりとともに各地へ伝わったためである。
こうした信仰から、タキリビメは海の神、航海の神として崇敬され、海上安全、交通安全、大漁祈願などのご利益を持つ神とされている。

出典・参考:『日本書紀』巻第一 神代上 第六段、宗像大社「由緒」「沖津宮」



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出典文献

古事記

日本書紀

先代旧事本紀

播磨国風土記

神格

海の神 水の神 航海の神

ご神徳

海上安全 交通安全 大漁祈願 商売繁盛

別称・異称

多紀理毘売命

たきりひめのみこと

古事記

奥津島比売命

おきつしまひめのみこと

古事記/播磨国風土記

田心姫

たこりひめ

日本書紀

田霧姫命

たきりひめのみこと

日本書紀

田心姫命

たこりひめのみこと

日本書紀/先代旧事本紀

瀛津島姫命

おきつしまひめのみこと

先代旧事本紀

奥津島姫命

おきつしまひめのみこと

先代旧事本紀

多岐理姫命

たぎりひめのみこと

その他

多岐理比売命

たぎりひめのみこと

その他

多岐理毘売命

たぎりびめのみこと

その他

多岐里比売神

たきりひめのかみ

その他

多気理比売命

たきりひめのみこと

その他

多祇留姫

たきりひめ

その他

多紀理姫命

たきりひめのみこと

その他

多紀理媛命

たきりひめのみこと

その他

多紀理比売命

たきりひめのみこと

その他

多紀理比女命

たきりひめのみこと

その他

多紀理毘売神

たきりびめのかみ

その他

多紀里比売命

たきりひめのみこと

その他

多紀里毘売命

たぎりひめのみこと

その他

瀛津島媛神

おきつひめのかみ

その他

田心媛命

たこりひめのみこと

その他

田心比咩命

たごりひめのみこと

その他

田心比売命

たごりひめのみこと

その他

田意比売命

たごりひめのみこと

その他

田紀理毘売命

たきりびめのみこと

その他

関連する神様

イチキシマヒメ  タギツヒメ 

神様グループ

宗像三女神  五男三女神 

祀られている主な神社

厳島神社
(広島県廿日市市宮島町1-1)
日光二荒山神社
(栃木県日光市山内2307)
宗像大社 沖津宮
(福岡県宗像市大島沖之島)
日光二荒山神社 中宮祠
(栃木県日光市中宮祠2484)
日光二荒山神社 奥宮
(栃木県日光市中宮祠二荒山)