カミムスビ 神社の神様 - 神社ファン

カミムスビ

かみむすび

  • 神話・伝説
  • 独神
カミムスビ

表記なし

カミムスビの画像

玉蘭斎貞秀(神佛図會)

祭神ランキング69位

カミムスビとは?

カミムスビは記紀神話などに登場する独神である。古事記では神産巣日神、日本書紀では神皇産霊尊、出雲国風土記では神魂命などと記される。天地が初めて開けた際、アメノミナカヌシ、タカミムスビに続いて高天原に現れた神で、三柱は後世に造化三神と総称された。古事記では独神として現れ、そのまま身を隠したとされる。
神名の「ムスヒ」は、新たな生命や物を生み出し、成長させる神聖な生成力を表すと考えられている。古事記では性別を明記されていないが、神産巣日御祖命《かみむすびみおやのみこと》とも称され、御祖《みおや》として生命の生成や回復に関わることから、母性的な性格を持つ神とする見方がある。タカミムスビが天孫降臨や皇統に深く関わるのに対し、カミムスビは高天原から出雲の神々を助ける場面が目立つ。
オオクニヌシが八十神によって焼けた大石に挟まれて殺された際には、母のサシクニワカヒメが高天原へ上り、カミムスビに救いを求めた。カミムスビはキサガイヒメとウムギヒメを遣わし、キサガイヒメが貝殻を削り、ウムギヒメがそれを受けて母の乳汁として塗ることで、オオクニヌシを生き返らせたとされる。この神話は、カミムスビが生命を再生させる力を持つ神として描かれた代表的な逸話である。
また、オオクニヌシの国作りを助けたスクナビコナとも深い関係を持つ。海の彼方から小さな神が現れた際、クエビコによってカミムスビの御子であることが明らかにされた。カミムスビはスクナビコナを自らの指の間からこぼれ落ちた子であると認め、オオクニヌシと兄弟となって国作りを行うよう命じた。こうしてスクナビコナはオオクニヌシとともに国土の形成や人々の生活を整えることとなった。
さらにスサノオが食物神オオゲツヒメを斬り殺した際、その身体から蚕、稲、粟、小豆、麦、大豆などが生じた。カミムスビはこれらを取らせて種としたと古事記は伝えている。食物神の死から生じた穀物を種として残すこの神話からも、カミムスビが生命を生み育て、地上の豊かさへとつなげる生成の神であることがうかがえる。
このようにカミムスビは天地開闢に現れた根源的な生成神であると同時に、オオクニヌシを蘇生させ、スクナビコナを国作りへ送り出し、五穀の種を残すなど、生命の誕生、再生、成長に深く関わる神として描かれている。後世には「むすび」という言葉から人と人との縁を結ぶ力とも結びつけられ、縁結びの神としても信仰されるようになった。カミムスビには五穀豊穣、豊作祈願、生命力向上、縁結び、厄除け、開運招福などのご利益があるとされる。
カミムスビは出雲大社(島根県出雲市)、御祖神社(福岡県北九州市)、四柱神社(長野県松本市)、東京大神宮(東京都千代田区)などで祀られている。

エピソード

天地の始めに現れた生成の神
『古事記』では、天地が初めて開けたとき、高天原に最初にアメノミナカヌシが現れ、続いてタカミムスビ、カミムスビが現れた。三柱はいずれも相手を伴わず単独で現れた独神《ひとりがみ》であり、姿を現した後、身を隠したと記されている。後世、この三柱は世界の生成に関わる造化三神と総称されるようになった。ただし「造化三神」という呼び名そのものが『古事記』本文に記されているわけではない。
カミムスビの「ムスヒ」は、生命や物を生み出し、成長させる神秘的な働きを表すと考えられている。「ムス」は草木が生えることや生命が生まれることに通じ、「ヒ」は神聖な霊力を示すとされる。現在は「むすび」と読まれることも多いが、古い音に基づく読みとしては「カムムスヒ」が用いられる。
天地開闢の場面では、カミムスビが具体的に国土や神々を作る姿は描かれない。しかし物語が進むと、死者を蘇らせ、穀物の種を残し、国作りを担う神を地上へ送り出す。姿を隠した生成の力が、地上の生命や国土を背後から支えているのである。
独神であることは、性別を持たないことを直接意味しない。『古事記』はカミムスビの性別を明記していないが、御祖神としての呼称や蘇生に関わる働きから、タカミムスビが父性的な神、カミムスビが母性的な神として対をなすと考える説がある。

出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「神産巣日神」、神社本庁「神話のお話」



殺されたオオクニヌシを蘇らせる
オオクニヌシが八十神とともに因幡へ向かった後、八十神たちは美しいヤガミヒメがオオクニヌシを選んだことを恨んだ。そして伯耆国の手間山で、赤く焼いた大岩を猪だと偽って山上から落とし、それを受け止めるよう命じた。オオクニヌシは焼けた岩に押し潰され、命を落としてしまった。
母神のサシクニワカヒメは息子の死を嘆き、高天原へ上ってカミムスビに救いを求めた。願いを聞いたカミムスビは、キサガイヒメとウムギヒメを地上へ遣わした。二柱が貝殻を削ったものと母の乳汁を用いて傷を治療すると、オオクニヌシは麗しい若者の姿を取り戻し、再び歩き出した。
貝殻を削った粉や乳汁による治療は、古代の薬や火傷の手当を反映しているとする説がある。同時に、母の乳によって命を取り戻す描写は、カミムスビが持つ母性的な生成力を象徴しているとも考えられている。カミムスビは自ら地上へ降りるのではなく、適切な神々を選んで遣わすことで生命を再生させたのである。
オオクニヌシは後に八十神から再び命を狙われるが、試練を乗り越えて葦原中国の国作りを担うことになる。ここでカミムスビが蘇らせたのは一人の神の命だけではなく、これから地上を整えていく国作りの可能性でもあった。

出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「神産巣日神」「大国主神」「𧏛貝比売」「蛤貝比売」



スクナビコナを国作りへ送り出す
オオクニヌシが出雲の御大之御前《みほのみさき》にいたとき、海の彼方から天之羅摩船《あめのかがみのふね》に乗った小さな神が現れた。その船はガガイモの実で作られ、神は蛾の皮を衣としていた。オオクニヌシが名を尋ねても答えず、周囲の神々も正体を知らなかった。
そこでヒキガエルの神がクエビコなら知っているだろうと告げた。クエビコは歩くことはできないが、天下のことを知る知恵の神である。クエビコは、小さな神がカミムスビの御子であるスクナビコナだと見抜いた。
報告を受けたカミムスビは、スクナビコナが自分の指の間からこぼれ落ちた子であると認めた。そしてオオクニヌシと兄弟の契りを結び、力を合わせて葦原中国を作り固めるよう命じた。二柱は協力して国土の開発を進め、人々や家畜の病を治す方法、鳥や虫などによる災いを防ぐためのまじないを定めたと伝えられている。
小さなスクナビコナは、温泉、医薬、酒造、穀物などと結びつく知恵の神である。カミムスビはその能力を見抜き、地上の国作りに必要な協力者として送り出した。カミムスビの生成力は、生命を直接生み出すだけでなく、異なる神々を結び合わせ、その働きを育てる力としても表れている。なお、『古事記』ではスクナビコナをカミムスビの子とするが、『日本書紀』の一書ではタカミムスビの子としている。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「神産巣日神」「少名毘古那神」



女神の亡骸から生じた穀物の種
高天原を追放されたスサノオは、食物を求めてオオゲツヒメを訪ねた。オオゲツヒメは鼻や口、尻からさまざまな食物を取り出し、それを調理してスサノオに差し出した。しかし、その様子をのぞき見たスサノオは、女神が食物を汚していると誤解し、怒って殺してしまった。
亡くなったオオゲツヒメの頭からは蚕、目からは稲、耳からは粟、鼻からは小豆、陰部からは麦、尻からは大豆が生じた。するとカミムスビは、女神の身体から生じたものを穀物の種として取らせた。死の中から、養蚕と五穀という人々の暮らしを支える新たな恵みが誕生したのである。
『古事記』は、カミムスビ自身が種を拾い集めて人間に与えたとは記していない。カミムスビは穀物を種として取り上げさせることで、亡骸から生まれた生命を次の世代へつなぐ役割を果たした。ここにも、失われた命を新たな生命へ転じる「ムスヒ」の力が表れている。
この神話では、食物を生み出したオオゲツヒメの死が稲や粟などの起源となり、カミムスビがそれらを栽培可能な種へと位置づける。生命は死によって途絶えるのではなく、種となって土へ戻り、再び芽を出す。カミムスビが五穀豊穣や農業の神として信仰される背景には、この循環を司る姿がある。

出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「神産巣日神」「大宜都比売神」



生成のムスヒから縁を結ぶ神へ
カミムスビの本来の神格は、生命や作物を生み出して成長させる「ムスヒ」の力にある。ところが時代が下ると、「ムスヒ」は人と人との縁を「結ぶ」という言葉とも重ねられるようになった。カミムスビとタカミムスビは、男女の縁だけでなく、家族、仕事、土地など、あらゆるもののつながりを整える神としても信仰されている。
長野県松本市の四柱神社では、アメノミナカヌシ、タカミムスビ、カミムスビ、アマテラスの四柱を主祭神として祀る。同社では、カミムスビとタカミムスビを万物を生成し、結び、調和させる神としている。四柱の神徳を合わせて受けられることから、すべての願いがかなう「願いごとむすびの神」として崇敬を集めている。
東京都千代田区の東京大神宮でも、天地万物の生成を司る造化三神の一柱としてカミムスビを祀る。東京大神宮は神前結婚式を創始した神社として知られ、縁結びの神社として広く信仰されている。同社の「結守」にも、カミムスビとタカミムスビが万物の結びを司るという信仰が表れている。
ただし、神名の「ムスヒ」を現代語の「結ぶ」だけで説明することはできない。生命を生み、育て、異なる存在を結び合わせて世界を完成へ導く力が、後世の縁結び信仰へと広がったのである。

出典・参考:國學院大學 古典文化学事業「神産巣日神」、四柱神社公式サイト、東京大神宮公式サイト



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出典文献

古事記

日本書紀

先代旧事本紀

延喜式

古語拾遺

新撰姓氏録

出雲国風土記

神格

万物生成の神

ご神徳

豊作祈願 縁結び 厄除け 開運招福

別称・異称

神産巣日神

かみむすひのかみ

古事記

神産巣日御祖命

かみむすひみおやのみこと

古事記

神皇産霊尊

かみむすひのみこと

日本書紀/先代旧事本紀

神漏美

かむろみ

延喜式

神漏弥命

かむろみのみこと

延喜式

神産魂命

かみむすびのみこと

延喜式

神魂神

かみむすびのかみ

延喜式

神魯美

かむろみ

延喜式

神産霊神

かみむすひのかみ

古語拾遺

神留弥命

かむるみのみこと

古語拾遺

神魂命

かみむすひのみこと

新撰姓氏録/出雲国風土記

神御産巣日神

かみむすひのかみ

その他

神産日神

かみむすひのかみ

その他

神皇産霊命

かみむすひのみこと

その他

神皇魂命

かみむすびのみこと

その他

神様グループ

造化の三神  別天津神  宮中八神 

祀られている主な神社

丹内山神社
(岩手県花巻市東和町谷内2区303)
桜神宮
(東京都世田谷区新町3丁目21-3)
唐松神社
(秋田県大仙市協和境字下台94)
四柱神社
(長野県松本市大手3-3-20)
大國神社
(宮城県青葉区芋沢字末坂27-14)