オオヤマツミ
おおやまつみ
- 神話・伝説
- 男神・男性

玉蘭斎貞秀(神佛図會)

表記なし
祭神ランキング6位
オオヤマツミとは?
オオヤマツミは記紀神話などに登場する男神。古事記では大山津見神、日本書紀では大山祇神などと表記され、和多志大神、酒解神などの名でも祀られる。イザナギとイザナミの神生みによって生まれた山の神であり、古事記ではカヤノヒメとともに山野の神々を生んだとされる。アシナヅチ、テナヅチ、コノハナノサクヤビメ、イワナガヒメなど多くの神々の祖につながる存在でもある。
山の神を表す「山津見」の名に美称の「大」がつくことから、日本の山の神を代表する存在として信仰されてきた。古事記ではカヤノヒメとの間に天之狭土神、国之狭土神、天之狭霧神、国之狭霧神、天之闇戸神、国之闇戸神、大戸惑子神、大戸惑女神を生んだとされ、山野を構成する自然神の祖としての性格も見られる。
一方、『伊予国風土記』逸文には、伊予国の御島に鎮座する大山積神を和多志大神と呼び、仁徳天皇の時代に百済から渡ってきた神であるとの伝承が記されている。現在の大山祇神社では山の神・海の神・渡航の神として崇敬されている。山は航海する人々にとって重要な目印でもあり、山神であるオオヤマツミが海上交通を守護する神として信仰された背景の一つと考えられる。
また、天孫ニニギにコノハナノサクヤビメを嫁がせた際には、イワナガヒメも一緒に送り出した。ニニギがイワナガヒメだけを送り返したため、天孫の命には限りが生じたと古事記は伝える。
さらに、コノハナノサクヤビメが御子を産んだことを喜び、酒を造って神々に奉ったという伝承から酒造の神としても信仰されている。
これらのことから、オオヤマツミのご利益は農業守護、山林業守護、鉱山業守護、漁業守護、航海安全、醸造業守護、商売繁盛、家庭平安などとされる。
オオヤマツミは大山祇神社(愛媛県今治市)をはじめ、全国各地の大山祇神社、三島神社、山神社などで広く祀られている。
エピソード
オオヤマツミは、山そのものを司る神として『古事記』の神生みに登場する。イザナギとイザナミが国土を生んだ後、風・木・野など自然を司る神々を生む中で、大山津見神は山の神として生まれた。神名の「ツミ」は神霊を表す語とされ、「オオヤマツミ」は大いなる山の神を意味すると考えられている。 『古事記』では、山の神として生まれた大山津見神が、野の神であるカヤノヒメとともに山野に関わる八柱の神を生む。山と野を一体として捉え、そこから土・霧・谷など山野のさまざまな性質を表す神々が生まれる構成になっている。 一方、『日本書紀』には、イザナギが火の神カグツチを斬った際、その体から大山祇をはじめとする山の神々が生まれたとする一書もある。記紀には山の神の誕生について複数の伝承があり、大山祇という神名も異なる場面に現れる。オオヤマツミを理解する際には、これらの伝承を一つの物語として混同しないことが重要である。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業
『古事記』でオオヤマツミが山の神としての性格をよく示すのが、野の神カヤノヒメとともに八柱の神を生む場面である。イザナギとイザナミの神生みによって大山津見神と野椎神が生まれた後、二神は山と野に因んで神々を生んだと記される。 生まれたのは天之狭土神・国之狭土神、天之狭霧神・国之狭霧神、天之闇戸神・国之闇戸神、大戸惑子神・大戸惑女神の八柱である。狭土は土地、狭霧は霧、闇戸は谷間などを表すと解され、山野を構成するさまざまな要素が神格化されている。 オオヤマツミは単に一つの山を守る神として描かれているのではない。山の神と野の神から、山野の土地や霧、谷などに関わる神々が生まれるという系譜そのものが、自然界を広く包み込む神格を示している。後世に山林・農業・鉱山など山と関係する幅広い生業の守護神として信仰される背景を考えるうえでも、この神生みは重要なエピソードである。
出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業
オオヤマツミが『古事記』で自ら言葉を発する重要な場面が、ニニギと娘たちの婚姻である。ニニギは笠沙の岬でオオヤマツミの娘コノハナノサクヤビメに出会い、結婚を望む。父であるオオヤマツミはこれを大いに喜び、姉のイワナガヒメも一緒に多くの贈り物とともに送り出した。 ところがニニギはイワナガヒメを送り返し、コノハナノサクヤビメだけを妻とした。オオヤマツミは、イワナガヒメを妻にすれば天つ神の御子の命は岩のように永遠となり、コノハナノサクヤビメを妻にすれば木の花が咲くように繁栄するよう誓約して二人を送ったのだと明かす。そしてイワナガヒメが返されたため、天つ神の御子の寿命は木の花のようにはかなくなると告げた。 『古事記』は、これを歴代天皇の寿命が永遠ではない理由としている。オオヤマツミはこの神話で、岩が象徴する永続性と花が象徴する繁栄を娘たちに託し、天孫と皇統の寿命に関わる神として描かれている。
出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業
オオヤマツミは山の神として知られる一方、瀬戸内海の大三島に鎮座する大山祇神社では海や渡航を守る神としても信仰されてきた。その背景を伝える重要な資料が『伊予国風土記』逸文である。 逸文では、御島《みしま》(現在の愛媛県大三島)に鎮座する神を大山積神とし、別名を和多志大神《わたしのおおかみ》と記す。また、この神は仁徳天皇の時代に百済から渡ってきて津の国の御島に鎮座した神と同じであるという伝承も載せている。大山祇神社も、この記述をもとに御祭神を山の神であると同時に大海原・渡航の神としている。 山の神であるオオヤマツミが、記紀の時点から一律に海神として描かれているわけではない。大三島を中心とする信仰の中で、島や海上交通を守る神としての性格が明確になったと見る必要がある。山と海という一見異なる神格を持つのは、古典の異なる伝承と地域の信仰が重なって形成されたオオヤマツミの大きな特徴である。
出典・参考:『伊予国風土記』逸文、大山祇神社
オオヤマツミは山の神だけでなく、酒造の神としても信仰されている。この神格は、娘コノハナノサクヤビメの出産にまつわる伝承と結びついている。 『日本書紀』の一書には、木花開耶姫が火の中で三柱の御子を無事に出産した後、大山祇神がその誕生を喜び、狭名田《さなだ》の稲を用いて天甜酒《あまのたむざけ》を造り、神々に供えたという伝承がある。このため大山祇神は酒解神《さかとけのかみ》、木花開耶姫は酒解子神《さかとけこのかみ》とも呼ばれ、酒造の祖神として信仰されるようになった。 大山阿夫利神社でも大山祇大神を酒解神の名で酒造の祖神として祀り、酒祭が行われている。大山祇神社でも大山積神を造酒の守護神として崇敬している。山の神オオヤマツミが酒造の神でもあるのは、山と酒を単純に結びつけた後世の解釈ではなく、娘の御子誕生を祝い自ら酒を醸したとする古い伝承に根拠を持つ神格である。
出典・参考:『日本書紀』、大山祇神社、大山阿夫利神社
オオヤマツミの信仰を語るうえで中心となるのが、愛媛県今治市大三島の大山祇神社である。『延喜式』神名帳には伊予国越智郡の大山積神社として記載され、現在の大山祇神社では大山積大神一座を祀っている。『伊予国風土記』逸文に見える御島の大山積神・和多志大神の伝承を受け、山だけでなく海や渡航を守る神としても崇敬されてきた。 一方、静岡県の三嶋大社では大山祇命と積羽八重事代主神の二柱を祀り、総じて三嶋大明神と称している。同社は伊豆半島や伊豆諸島の噴火・造島、海上交通に関わる信仰を背景に成立したとしており、大山祇命を山森農産の守護神としている。 このようにオオヤマツミ信仰は、一つの神社だけに限定されない。大山祇神社をはじめ、三島信仰や各地の大山祇神社・山神社などへ広がり、地域によって山林、農産、海上安全など異なる側面が強調されてきた。全国で非常に多く祀られるオオヤマツミの神格の広さは、こうした各地の信仰の積み重ねによって形づくられている。
出典・参考:『延喜式』、『伊予国風土記』逸文、大山祇神社、三嶋大社
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
伊予国風土記 逸文
神格
ご神徳
別称・異称
おおやまつみのかみ
古事記
山祇やまつみ
日本書紀
大山祇神おおやまつみのかみ
日本書紀/先代旧事本紀
大山上津見神おおやまかみつみのかみ
先代旧事本紀
和多志大神わたしのおおかみ
伊予国風土記 逸文
大山積神おおやまつみのかみ
伊予国風土記 逸文
大山住命おおやまずみのみこと
その他
大山津美命おおやまつみのみこと
その他
大山祇見命おおやまつみのみこと
その他
大山罪乃御祖命おおやまつみのみおやのみこと
その他
大山都美命おおやまつみのみこと
その他
大山都見命おおやまつみのみこと
その他
山津見命やまつみのみこと
その他
神様グループ
祀られている主な神社
大山阿夫利神社
(神奈川県伊勢原市大山355)
三嶋大社
(静岡県三島市大宮町2-1-5)
大山祇神社
(愛媛県今治市大三島町宮浦3327)
岩木山神社
(青森県弘前市百沢寺沢27)
湯殿山神社(出羽三山神社)
(山形県鶴岡市田麦俣字六十里山7)
