タカミムスビ
たかみむすび
- 神話・伝説
- 独神

玉蘭斎貞秀(神佛図會)

表記なし
祭神ランキング48位
タカミムスビとは?
タカミムスビは記紀神話などに登場する神である。古事記では高御産巣日神、日本書紀では高皇産霊尊と記され、古事記では天若日子の物語以降、高木神とも呼ばれる。天地が初めて現れたとき、高天原に天之御中主神に続いて現れた神で、神産巣日神とともに造化三神の一柱とされる。独神として成り、その身を隠したと記されている。
神名の「ムスヒ」は、ものを生み出し成長させる生成の力を表すと考えられている。高木神という別名から樹木や高木に関係する神格を想定する説もある。また神産巣日神と対になる存在として、タカミムスビを男神、カミムスビを女神とみる説もあるが、記紀には二柱を夫婦とする記述はなく、タカミムスビの性別も明記されていない。
タカミムスビは造化三神の中でも特に具体的な活動が多く、天照大御神とともに葦原中国の平定や天孫降臨を進める重要な神である。国譲りでは地上へ派遣する神々の選定に関わり、使命に背いた天若日子が高天原へ放った矢を受け取ると、その矢を地上へ投げ返した。もし天若日子に邪心がなければ当たらず、邪心があれば当たるようにと誓って投げた矢は天若日子の胸を貫き、その命を奪った。
天孫降臨では天照大御神とともに孫のニニギを葦原中国へ降す。また神武東征においても重要な役割を担い、熊野で神武天皇の軍勢が危機に陥ると、建御雷神の神剣を高倉下のもとへ降し、さらに八咫烏を遣わして熊野から大和への道を導かせた。天地開闢に現れる根源的な生成神であると同時に、天孫から神武天皇へと続く皇統を助ける神として描かれている。
御子には知恵を司る思金神や、天忍穂耳命の妃となりニニギを産んだ万幡豊秋津師比売命などがいる。このためタカミムスビはニニギの母方の祖父にもあたり、自らの孫を天孫として地上へ送り出したことになる。
タカミムスビは宮中でも重視され、神祇官の八神殿では第一殿に神産日神、第二殿に高御産日神が祀られ、皇室を守護する神として崇敬された。生成や発展を司り、皇統を助ける神として、開運招福、諸願成就、産業繁栄などの信仰とも結びついている。現在は高木神社(東京都墨田区)の主祭神として祀られ、東京大神宮(東京都千代田区)でも造化三神の一柱として祀られている。
エピソード
『古事記』によれば、天地が初めて現れたとき、高天原《たかまのはら》に最初に成ったのが天之御中主神であり、それに続いて高御産巣日神《たかみむすひのかみ》と神産巣日神が現れた。この三柱は造化三神《ぞうかさんしん》と呼ばれ、いずれも男女の組を持たずに単独で現れた独神《ひとりがみ》で、その姿を隠したと記されている。
神名のムスヒは、生命や万物を生み、成長させる生成の働きを表す言葉と考えられている。ただし『古事記』は、タカミムスビが天地や万物を直接つくったとは記していない。世界の始まりに現れ、のちに地上の統治や天孫降臨を動かす根源的な力を備えた神として描いているのである。
タカミムスビとカミムスビは対になる神とみなされることがあるが、記紀には二柱を夫婦とする記述はない。男神と女神の組として説明する説もあるものの、その性別は明確ではなく、古典ではそれぞれ異なる場面で独自の働きを見せている。
出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「高御産巣日神」
タカミムスビは世界の始まりに現れただけの神ではない。『古事記』の葦原中国《あしはらのなかつくに》平定では、天照大御神とともに高天原の命令を下し、地上へ遣わす神々を選ぶ司令神として登場する。
『古事記』では、天若日子の物語以降、タカミムスビは高木神《たかぎのかみ》とも呼ばれる。天若日子が使命を果たさなかったため、次の使者を選ぶ段階では、思金神をはじめとする神々に意見を求め、最終的に建御雷神らを地上へ派遣した。建御雷神が大国主神に国譲りを迫る物語も、この命令を受けて始まる。
高木神という異名から樹木信仰に起源をもつ神とする説もあるが、確定したものではない。少なくとも『古事記』では、高木神はタカミムスビの異名として用いられ、国譲りや天孫降臨を進める高天原の中心的な司令神を表している。
出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「高御産巣日神」
葦原中国を平定するために遣わされた天若日子は、大国主神の娘である下照比売と結婚し、長い年月が過ぎても高天原へ報告しなかった。そこで高天原から雉《きじ》の鳴女《なきめ》が様子を確かめるために遣わされたが、天若日子は授けられた弓矢で鳴女を射殺してしまう。
鳴女を貫いた矢はそのまま高天原まで届き、タカミムスビのもとへ落ちた。矢に血が付いていることを確かめたタカミムスビは、それが天若日子に授けた矢であると見抜いた。そして、天若日子が命令に背いてこの矢を放ったのであれば本人に当たるようにとの誓約《うけい》を立て、地上へ投げ返した。
矢は朝の寝床にいた天若日子の胸を射抜き、その命を奪った。放った矢が自分へ返ってきたことから、この場面は返し矢の物語として知られている。高天原の使命を破った者を見定め、誓約によって裁きを下すタカミムスビの厳格な一面を伝える神話である。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「高御産巣日神」
タカミムスビは、天孫降臨の主人公である邇邇芸命の母方の祖父にあたる。タカミムスビの娘である万幡豊秋津師比売命と、天照大御神の御子である天忍穂耳命との間に生まれたのがニニギである。
『古事記』では、天照大御神と高木神がニニギに葦原中国を治めるよう命じる。ニニギには八尺勾璁《やさかのまがたま》、鏡、草薙剣《くさなぎのつるぎ》が授けられ、天児屋命や布刀玉命などの神々が随行した。タカミムスビは地上へ降る孫を送り出すとともに、その統治を支える神々を整えたのである。
『日本書紀』には、タカミムスビが中心となって天孫降臨を命じる伝承も収められている。記紀や異伝によって命令を下す神の描かれ方には違いがあるが、タカミムスビが皇孫の降臨を導く重要な神である点は共通している。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「高御産巣日神」
タカミムスビは、天孫降臨だけでなく神武天皇の東征にも深く関わる。『古事記』によれば、神武天皇の一行が熊野に入ったとき、大熊の姿で現れた神の力を受け、天皇も兵士たちも倒れてしまった。
そのとき熊野の高倉下が一振りの剣を持参すると、神武天皇は意識を取り戻し、倒れていた兵士たちも目を覚ました。高倉下の夢には天照大御神と高木神が現れ、建御雷神に地上を助けるよう命じていた。建御雷神は自ら降る代わりに、かつて国譲りに用いた剣を高倉下の倉へ降ろしたのである。この剣は布都御魂とされ、のちに石上神宮《いそのかみじんぐう》で祀られた。
さらに高木神は、険しい山中を進む神武天皇のもとへ八咫烏を遣わした。八咫烏は熊野から大和へ向かう道を先導した。タカミムスビは剣によって危機を救い、八咫烏によって進むべき道を示した守護神としても描かれているのである。
出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「高御産巣日神」
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
古語拾遺
延喜式
新撰姓氏録
山城国風土記
神格
ご神徳
別称・異称
たかみむすひのかみ
古事記
高木大神たかぎのおおかみ
古事記
高皇産霊尊たかみむすひのみこと
日本書紀/先代旧事本紀/古語拾遺
高木命たかぎのみこと
先代旧事本紀
高魂尊たかみむすひのみこと
先代旧事本紀
神漏岐かむろき
延喜式
神漏伎命かむろきのみこと
延喜式
神魯企かむろき
延喜式
神留伎命かむるきのみこと
古語拾遺
高媚牟須比命たかみむすひのみこと
新撰姓氏録
高御牟須比乃命たかみむすひのみこと
新撰姓氏録
天照高弥牟須比命あまてるたかみむすひのみこと
山城国風土記 逸文
高天彦神たかまひこのかみ
その他
高御産日神たかみむすひのかみ
その他
高御産霊神たかみむすひのかみ
その他
高御魂日命たかみたまひのみこと
その他
高産巣日神たかみむすひのかみ
その他
高産霊神たかみむすひのかみ
その他
高皇産巣日神たかみむすひのかみ
その他
高皇産日神たかみむすびのかみ
その他
神様グループ
祀られている主な神社
戸隠神社 火之御子社
(長野県長野市戸隠2412)
丹内山神社
(岩手県花巻市東和町谷内2区303)
桜神宮
(東京都世田谷区新町3丁目21-3)
唐松神社
(秋田県大仙市協和境字下台94)
宇多須神社
(石川県金沢市東山1丁目30-8)
