ミヅハノメ
みづはのめ
- 神話・伝説
- 女神・女性

表記なし
祭神ランキング25位
ミヅハノメとは?
ミヅハノメは記紀神話に登場する女神である。古事記では弥都波能売神、日本書紀では罔象女神と記され、神社によっては水波能売命などと表記される。オカミ神などとともに日本を代表する水の神として知られている。
ミヅハノメはイザナミが火の神カグツチを出産し、重い火傷を負った際に生まれた神である。古事記では、苦しむイザナミの尿から弥都波能売神が生まれ、続いてワクムスビが生まれたと記されている。
日本書紀の一書にもよく似た神話があり、カグツチを生んだことで亡くなろうとするイザナミが尿をし、そこから罔象女が生まれ、続いて土の神である埴山媛が生まれたとされる。さらにカグツチが埴山媛を娶り、その間にワクムスビが生まれたとする。このように古事記と日本書紀では、ミヅハノメとともに登場する神々や系譜に違いがある。
神名については「ミヅ」を水、「ハ」を「早」と捉え、水が勢いよく湧き出す様子を表すとする説などがある。井戸や泉、湧水などと結びつけて信仰されることも多く、生活に欠かすことのできない水を司る神として祀られてきた。ただし、記紀にミヅハノメを井戸の神とする記述があるわけではなく、神名の解釈にも諸説がある。
水は人々の生活だけでなく、稲作や農業にも欠かすことができない。このためミヅハノメは農耕に必要な水を司り、雨をもたらし、あるいは水害を鎮める水神としても信仰されるようになった。
ミヅハノメには、水を利用する産業と結びついた独特の伝承もある。福井県越前市の岡太神社・大瀧神社には、川上に美しい女性が現れ、村人に紙漉きの技術を教えたという伝承が残されている。この女性は川上御前と呼ばれ、紙祖神として祀られている。川上御前をミヅハノメと結びつける伝承もあり、水に恵まれた越前の地で発展した越前和紙の信仰へとつながっている。
また後世には五行思想と結びつき、水を司る神として祀られる例も見られる。木のククノチ、火のカグツチ、土のハニヤスヒメ、金のカナヤマヒコなどとともに、自然を構成する五行の「水」を担う神として信仰されることもある。
こうした神話や信仰から、ミヅハノメのご利益は祈雨・止雨、治水、水難除け、農業守護などとされる。
ミヅハノメを祀る代表的な神社には、丹生川上神社中社(奈良県吉野郡東吉野村)、金蛇水神社(宮城県岩沼市)、大井神社(静岡県島田市)などがある。このほか、井戸や泉、湧水など生活に身近な水を守る神として、全国各地の神社で祀られている。
エピソード
ミヅハノメは『古事記』『日本書紀』に登場する水の女神である。『古事記』では弥都波能売神、『日本書紀』では罔象女神と表記される。
『古事記』では、イザナミが火の神カグツチを産んだことで陰部を焼かれ、病に伏した場面で誕生する。苦しむイザナミの吐瀉物や大便、尿から次々と神々が生まれ、その尿からワクムスビとともに生まれたのがミヅハノメである。
『日本書紀』の一書にもよく似た伝承があり、イザナミが火の神を産んだ際に焼かれて亡くなる間際、その尿から罔象女と土の神が生まれたとされる。
清らかな泉や川から生まれたのではなく、イザナミが火の神を産み、命を落とす場面から誕生する。この独特な出生を持ちながら、ミヅハノメは後世、人々の暮らしを支える水を司る神として信仰されてきた。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』
水の神であるミヅハノメが誕生するきっかけとなったのは、対照的な存在である火の神カグツチの誕生だった。
イザナミはカグツチを産んだことで大火傷を負い、病に伏す。その苦しみの中で身体からさまざまな神が生まれ、尿から誕生したのがミヅハノメである。
『古事記』『日本書紀』は、この火と水の関係について詳しい意味を説明していない。そのため、火を鎮めるために水神が生まれたとまで断定することはできない。
それでも、火の神の誕生によってイザナミが傷つき、その場面から水を司る神が誕生するという組み合わせは印象的である。火と水という対照的な神格を持つ二柱が、一つの神話の中で誕生を結びつけられているのである。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』
日本神話には、ミヅハノメのほかにもクラオカミノカミやタカオカミ、水分神《みくまりのかみ》など複数の水神が登場する。いずれも水に関わる神だが、その性格は必ずしも同じではない。
ミヅハノメは特に井戸や泉、湧水など、人々の生活に身近な水を司る神として説明されることが多い。神名の「ミヅハ」についても、水の出始めや水の湧き出るところなどに関係するとする説がある。
ただし、『古事記』『日本書紀』にミヅハノメが「井戸の神」であると明記されているわけではなく、神名の解釈にも諸説がある。そのため井戸だけを司る神と限定するのではなく、水源や湧水を含む生活に身近な水と深く結びついた神と見るのがよい。
水神をすべて同じ性格の神として捉えるのではなく、人々がどのような水を神聖なものとして祀ったのかを見ると、ミヅハノメの特徴が見えてくる。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』
ミヅハノメを祀る代表的な神社が、奈良県東吉野村の丹生川上神社中社である。現在の中社では罔象女神を主祭神として祀り、水の祖神として篤い信仰を集めている。
丹生川上神社は古くから朝廷から重視された水神の社である。中社の鎮座地では高見川、日裏川、四郷川が合流し、夢淵と呼ばれる深い淵を形成しており、現在も水と深く結びついた祭祀が受け継がれている。
丹生川上神社は中世以降に所在が分からなくなり、近代の比定を経て、現在では上社・中社・下社の三社がある。中社ではミヅハノメ、上社ではタカオカミ、下社ではクラオカミノカミが祀られている。
三柱はいずれも水神として信仰されているが、同じ神というわけではない。それぞれ異なる神話や神格を持つ水神が、丹生川上の三社で祀られているのである。
出典・参考:丹生川上神社、丹生川上神社上社、丹生川上神社下社
丹生川上神社は、古くから朝廷による祈雨・止雨の祈りが行われた神社として知られている。
雨が必要なときには黒い馬を、長雨を止めたいときには白い馬などを奉る祭祀が行われた。農耕を基盤とする社会にとって雨は欠かせない一方、多すぎれば洪水や作物への被害をもたらす。そのため水神には、雨を降らせることと雨を鎮めることの両方が祈られた。
こうした丹生川上神への祈雨・止雨は古代の朝廷による祭祀として行われ、水を司る神が国家にとっても重要な存在だったことを示している。
現在、丹生川上神社中社ではミヅハノメが主祭神として祀られている。ただし、古代の丹生川上神社で祀られた神をそのまま現在の中社のミヅハノメだけに限定して考えるのではなく、丹生川上における古くからの水神信仰と、現在の祭神を分けて見る必要がある。
出典・参考:丹生川上神社、『続日本紀』
ミヅハノメは、井戸や泉などに関わる水神としてだけでなく、後世には五行思想の「水」を司る神として祀られる例も見られる。
五行思想では、世界を構成するものを木・火・土・金・水の五つに分けて捉える。日本の神々と結びつけた祭神構成では、木をククノチ、火をカグツチ、土をハニヤスビメ、金をカナヤマヒコノカミ、水をミヅハノメとする組み合わせが見られる。
神社ファンでは、この五柱を祀る神社を「五行神系」として分類している。特定の一社を総本社としてそこから全国へ勧請された神社系統とは異なり、五行という思想によって複数の神々が一組として祀られているのが特徴である。
ここではミヅハノメは生活用水だけではなく、自然界を構成する五つの要素のうち「水」を象徴する神として位置づけられている。記紀に記された水神が、後世の思想と結びつくことで新たな祭祀の形に組み込まれた例と見ることができる。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』
ミヅハノメは、特定の大きな神社系統だけに祀られる神ではなく、各地のさまざまな神社で祭神として祀られている。
その背景の一つとして考えられるのが、ミヅハノメが人々の生活に身近な水を司る神として信仰されてきたことである。井戸や泉、湧水などは飲み水や炊事をはじめ、人が暮らしていくために欠かすことのできない存在だった。その水を守る神も、それぞれの地域で必要とされたと考えられる。
そのため、一つの中心的な神社から全国へ広がるだけでなく、それぞれの地域で水の守護を願ってミヅハノメが勧請・合祀され、もともとの神社系統とは異なる神社にも祭神として加えられた可能性がある。
さらに、ミヅハノメには別の広がり方も見られる。後世には五行思想の「水」を司る神として、ククノチ、カグツチ、ハニヤスビメ、カナヤマヒコノカミなどと一緒に祀られる例があり、神社ファンではこうした祭神構成を「五行神系」として分類している。
個々の神社がミヅハノメを祀るようになった経緯はそれぞれ異なるため、一つの理由だけで説明することはできない。しかし、生活に欠かせない水を守る神として地域ごとに祀られたと考えられる広がりと、五行の「水」を担う神として祀られる広がりの両方を見ることで、ミヅハノメがさまざまな神社の祭神として現れる理由が見えてくる。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
神格
ご神徳
別称・異称
みずはのめのかみ
古事記
罔象女みつはのめ
日本書紀
罔象女神みつはのめのかみ
先代旧事本紀
岡象女命みずはのめのみこと
その他
弥津波能売命みつはのめのみこと
その他
弥豆波能売神みずはのめのかみ
その他
弥都波売神みつはのめのかみ
その他
弥都波能売命みずはのめのみこと
その他
水波乃売命みずはのめのみこと
その他
水波之売神みずはのめのかみ
その他
水波之女命みずはのめのみこと
その他
水波廼女神みずはのめかみ
その他
水波能売命みずはのめのみこと
その他
水波触売神みずはのめのかみ
その他
水波野売神みずはのめのかみ
その他
水罔女命みずはのめのみこと
その他
水羽女尊みずはのめのみこと
その他
水象女尊みずはのめのみこと
その他
水速女命みずはやめのみこと
その他
水都波能女神みづはのめのかみ
その他
罔象売神みずはのめのかみ
その他
罔象姫命みずはひめのみこと
その他
罔象能女命みずはのめのみこと
その他
美津波売能命みつはめのみこと
その他
美津波女命みつはのめのみこと
その他
美津波能売命みずはのめのみこと
その他
美都波売之神みずはのめのかみ
その他
美都波能売命みずはのめのみこと
その他
美都波能女神みずはのめのかみ
その他
神様グループ
祀られている主な神社
金蛇水神社
(宮城県岩沼市三色吉字水神7 )
丹生川上神社
(奈良県東吉野村小968)
大井神社
(静岡県島田市大井町2316)
水天宮
(北海道小樽市相生町3番1号)
抱返神社
(秋田県仙北市田沢湖卒田字黒倉139)
