コノハナノサクヤビメ 神社の神様 - 神社ファン

コノハナノサクヤビメ

このはなのさくやびめ

  • 神話・伝説
  • 女神・女性
コノハナノサクヤビメ

国立公文書館(大日本国開闢由来記 CC0)

コノハナノサクヤビメ

玉蘭斎貞秀(神佛図會)

コノハナノサクヤビメ

葛飾北斎(富嶽百景)

祭神ランキング24位

コノハナノサクヤビメとは?

コノハナノサクヤビメは記紀神話などに登場する女神である。古事記では本名を神阿多都比売、別名を木花之佐久夜毘売とし、日本書紀では本名を神吾田津姫、神吾田鹿葦津姫、別名を木花開耶姫とする。更に、播磨国風土記では許乃波奈佐久夜比売命と表記する。大山津見神を父に持ち、姉に石長比売がいる。
コノハナノサクヤビメは美しい女神として知られており、木の花が咲き栄えるような繁栄を象徴する神として描かれるが、その一方で力強さを感じさせる逸話もある。それは夫である邇邇芸命の子を一夜にして身ごもったときのこと。邇邇芸命から自分の子ではないとの疑いを持たれたコノハナノサクヤビメは「天津神である邇邇芸命の本当の子なら何があっても無事に産めるはず」と誓い、産屋に火を放ってその中で火照命・火須勢理命・火遠理命の3柱を無事に産んでみせた。
また、父の大山津見神は、姉の石長比売とコノハナノサクヤビメをともに邇邇芸命へ嫁がせた。石長比売には岩のような永遠の命を、コノハナノサクヤビメには木の花が咲くような繁栄を託していたが、邇邇芸命は石長比売を送り返した。このため天孫の命には限りが生じたと古事記は伝える。
コノハナノサクヤビメは後世、富士山の浅間大神と重ねられ、富士山を鎮める神として富士山本宮浅間大社をはじめとする全国各地の浅間神社で広く祀られるようになった。記紀にはコノハナノサクヤビメを富士山の神とする記述はなく、富士山・浅間信仰との結びつきは後世に形成されたものである。
また、神名の「木花」から桜を象徴する女神としても広く知られている。ただし、古事記に登場する「木の花」が桜であると明記されているわけではなく、桜との結びつきも後世の信仰を含めて見る必要がある。
これらの逸話から、コノハナノサクヤビメのご利益は五穀豊穣、漁業守護、航海安全、子授け、安産、火難除け、醸造業守護などとされる。
コノハナノサクヤビメを祀る代表的な神社には、富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)、河口浅間神社(山梨県富士河口湖町)、都萬神社(宮崎県西都市)などがあり、このほか全国各地の浅間神社で広く祀られている。

エピソード

ニニギに見初められた山神の娘
コノハナサクヤビメは、天孫降臨によって地上へ降ったニニギの妻となった女神である。『古事記』ではオオヤマツミの娘で、神阿多都比売《かむあたつひめ》という名を持ち、別名を木花之佐久夜毘売という。
ニニギは笠沙の岬で美しい女性に出会い、誰の娘なのかと尋ねた。コノハナサクヤビメがオオヤマツミの娘であると答えると、ニニギは結婚を申し込む。彼女は自分では答えず、父に尋ねるよう告げた。
ニニギから求婚されたことを知ったオオヤマツミは大いに喜び、コノハナサクヤビメだけでなく、姉のイワナガヒメも一緒に嫁がせた。
天から地上へ降ったニニギと山の神オオヤマツミの娘との結婚は、その後の皇統へとつながる重要な婚姻となる。二神の間に生まれた子の一柱であるホオリは、さらに海神の娘トヨタマヒメと結ばれ、その系譜は神武天皇へと続いていく。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』



イワナガヒメと二人で嫁いだ理由
ニニギからコノハナサクヤビメへの求婚を喜んだオオヤマツミは、姉のイワナガヒメも一緒に嫁がせた。しかしニニギは、イワナガヒメを容姿が醜いとして送り返し、コノハナサクヤビメだけを妻とした。
オオヤマツミが二人の娘を一緒に嫁がせたことには理由があった。『古事記』では、イワナガヒメを妻とすれば天つ神の御子の命は岩のように永遠となり、コノハナサクヤビメを妻とすれば木の花が咲き栄えるように繁栄するという誓約《うけい》を立てていたとされる。
つまり姉妹は、それぞれ異なる力を象徴する女神だった。イワナガヒメは岩のような永遠の命、コノハナサクヤビメは花が咲くような繁栄をもたらす存在として描かれている。
ニニギはその意味を知らず、コノハナサクヤビメだけを選んだ。美しい妹と醜い姉というだけの物語ではなく、「繁栄」と「永遠」という二つの力のうち、一方だけが選ばれた神話なのである。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』



なぜ天皇の寿命は限られた?
ニニギイワナガヒメを送り返し、コノハナサクヤビメだけを妻としたことは、人の命に限りがある理由を説明する神話へとつながっている。
二人の娘を一緒に嫁がせたオオヤマツミは、イワナガヒメには岩のように変わらない永遠の命を、コノハナサクヤビメには木の花が咲き栄えるような繁栄を託していた。
しかしニニギはイワナガヒメを送り返した。そのため天つ神の御子の命は岩のような永遠性を失い、木の花のように栄える一方で、その命には限りが生じたという。『古事記』は、これが歴代天皇の寿命が長久ではない理由だと説明している。
『日本書紀』の一書にもよく似た伝承があるが、人間一般の寿命に結びつける異伝も伝えられている。
コノハナサクヤビメが象徴する「花」は、美しさだけを意味するものではない。花は華やかに咲き栄える一方、やがて散っていく。姉の岩が象徴する永遠性と対になることで、繁栄と限りある命を象徴する女神としての姿が浮かび上がる。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』



一夜で身ごもったことを疑われる
ニニギと結婚したコノハナサクヤビメは、一夜の契りによって身ごもった。ところがニニギは、一夜だけで妊娠するはずがないとして、生まれてくる子は自分の子ではなく国つ神の子ではないかと疑った。
夫から疑いをかけられたコノハナサクヤビメは、自らの潔白を証明するため、誓約を立てる。生まれてくる子がニニギの子でなければ無事には生まれず、本当に天つ神の御子であるニニギの子ならば、どのような状況でも無事に生まれると宣言したのである。
そしてコノハナサクヤビメは、出入口のない産屋を造って中へ入り、土で隙間を塗り塞いだ。そのうえで、出産を迎えると自ら産屋に火を放った。
疑いに言葉だけで答えるのではなく、神の前で誓いを立て、その真偽を結果によって示す。コノハナサクヤビメの火中出産は、三柱の子が天孫ニニギの正統な子であることを証明する神話でもある。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』



炎の中で三柱の神を産んだ
コノハナサクヤビメは、自ら火を放った産屋の中で出産した。もし身ごもった子がニニギの子でなければ無事には生まれないという誓約によって、自らの潔白を証明しようとしたのである。
『古事記』では、燃え盛る炎の中からホデリ、火須勢理命、ホオリの三柱が無事に誕生した。三柱が火の中でも無事に生まれたことで、子どもたちがニニギの子であることが証明された。
三柱のうちホデリは、後に海幸彦として知られる神となる。一方のホオリは山幸彦として海神の宮を訪れ、トヨタマヒメと結婚する。その子孫から神武天皇へと系譜が続いていく。
コノハナサクヤビメの火中出産は、母神自身の潔白を示すだけの物語ではない。そこから生まれた子が天孫の正統な血を受け継いでいることを示し、天孫から皇統へと続く系譜を支える重要な神話となっている。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』



コノハナサクヤビメは桜の神?
コノハナサクヤビメは、現在では桜を象徴する女神として紹介されることが多い。神名の「木花」を桜の花と捉え、花が咲き誇るような美しさや繁栄を表す神とする解釈である。
しかし、「木花」がもともと桜だけを意味していたのかについては慎重に考える必要がある。『古事記』では、父オオヤマツミがコノハナサクヤビメについて、木の花が咲き栄えるように天孫が栄えることを願って嫁がせたと語っているが、その花を桜とは明記していない。
一方、後世にはコノハナサクヤビメと桜との結びつきが広く定着し、富士山と桜を象徴する女神としても信仰されるようになった。
そのため、コノハナサクヤビメを桜の神とすること自体が誤りなのではない。記紀では「木の花」が繁栄の象徴として語られ、それが後世の信仰の中で桜と強く結びついていったと見ることで、神話上の姿と現在の神格の両方を捉えることができる。

出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業



なぜ富士山の神になった?
現在、コノハナサクヤビメは富士山を代表する神として広く知られ、全国各地の浅間神社で祀られている。しかし、記紀のコノハナサクヤビメの神話には、富士山に鎮まったという物語は記されていない。
コノハナサクヤビメはオオヤマツミの娘であり、山の神につながる女神である。また、自ら産屋に火を放ち、その炎の中で三柱の子を産んだという強烈な火中出産の神話を持つ。
一方、富士山では古くから噴火を鎮めるための信仰が行われ、浅間大神が祀られてきた。後世、その浅間大神とコノハナサクヤビメが重ねられ、富士山の神として信仰されるようになった。
現在の富士山本宮浅間大社ではコノハナサクヤビメを主祭神として祀り、全国各地の浅間神社でも広く祀られている。記紀の時代から富士山の神だったとするのではなく、山神の娘という性格や火中出産の神話を持つ女神が、長い浅間信仰の歴史の中で富士山の神と重なり、現在の姿が形成されたと捉えるのがよい。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、富士山本宮浅間大社



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出典文献

古事記

日本書紀

先代旧事本紀

播磨国風土記

神格

山の神 火の神 酒造の神 安産・育児の神

ご神徳

五穀豊穣 漁業守護 航海安全 子授け 安産 火難除け 醸造業守護

別称・異称

神阿多都比売

かむあたつひめ

古事記

佐久夜毘売

さくやびめ

古事記

木花之佐久夜毘売

このはなさくやびめ

古事記

鹿葦津姫

かしつひめ

日本書紀

吾田津姫

あたつひめ

日本書紀

吾田鹿葦津姫

あかたしつひめ

日本書紀

木花開耶姫

このはなさくやひめ

日本書紀

神吾田津姫

かむあたつひめ

日本書紀

神吾田鹿葦津姫

かむあたかしつひめ

日本書紀

豊吾田津姫

とよあたつひめ

日本書紀

木花開邪姫

このはなさくやひめ

先代旧事本紀

木花之開姫

このはなのさくやひめ

先代旧事本紀

木花開姫

このはなさくやひめ

先代旧事本紀

許乃波奈佐久夜比売命

このはなさくやひめのみこと

播磨国風土記

木乃花咲耶姫之

このはなのさくやひめのみこと

その他

木乃花咲耶比女命

このはなさくやひめのみこと

その他

木之花之佐久夜毘売命

このはなのさくやひめのみこと

その他

木之花佐久夜姫神

このはなさくやひめのかみ

その他

木之花佐久夜比売命

このはなさくやひめのみこと

その他

木之花佐久屋比売命

このはなさくやひめのみこと

その他

木之花咲屋姫命

このはなさくやひめのみこと

その他

木之花開耶姫命

このはなさくやひめのみこと

その他

木花佐久夜毘売

このはなさくやびめ

その他

木花佐久屋比売命

このはなさくやひめのみこと

その他

木花佐久弥毘売命

このはなさくやひめのみこと

その他

木花佐久耶姫命

このはなさくやひめのみこと

その他

木花佐久耶毘咩命

このはなさくやひめのみこと

その他

木花咲爺姫命

このはなさくやひめのみこと

その他

木花咲耶比売命

このはなさくやひめのみこと

その他

木花咲那姫命

このはなさくやひめのみこと

その他

木花咲邪姫神

このはなさくやひめのかみ

その他

木花咲開姫大神

このはなさくやひめのおおかみ

その他

木花開也比売命

このはなさくやひめのみこと

その他

木花開耶媛

このはなさくやひめ

その他

木華佐久耶比咩神

このはなさくやひめのかみ

その他

木華咲耶姫命

このはなさくやひめのみこと

その他

木華開耶姫

このはなさくやひめのみこと

その他

神吾田鹿葦津姫命

かんあたかあしつひめのみこと

その他

神阿多津姫命

かむあたつひめのみこと

その他

神阿多都姫命

かむあたつひめのみこと

その他

祀られている主な神社

霧島神宮
(鹿児島県霧島市霧島町田口2608-5)
河口浅間神社
(山梨県富士河口湖町河口一番地)
静岡浅間神社
(静岡県葵区宮ヶ崎町102-1)
産泰神社
(群馬県前橋市下大屋町569番地)
浅間神社
(山梨県笛吹市一宮町一ノ宮一六八四)