オモダル
おもだる
- 神話・伝説
- 男神・男性

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング79位
オモダルとは?
オモダルは記紀神話に登場する男神である。『古事記』では於母陀流神《おもだるのかみ》、『日本書紀』では面足尊《おもだるのみこと》と記される。天地が開かれた初めに現れた神世七代《かみよななよ》の第六代にあたり、女神のアヤカシコネと対をなす。
『古事記』はアヤカシコネを「妹」と記しているが、二柱を夫婦神とみる説と兄妹神とみる説がある。記紀には二柱の具体的な事績はほとんど記されておらず、その神格については神名や神世七代における位置などからさまざまな解釈が行われてきた。
「オモダル」は、顔や姿が整い、身体が満ち足りたことを表す神名と考えられている。人体の完成を神格化した神とする説のほか、国土の表面が整ったことや、男女が成熟して国生みの準備が整ったことを表すとする説もある。また、オモダルがアヤカシコネの整った姿を褒め、アヤカシコネが畏れ多いと応じた言葉から二柱の神名が生まれたとする説も伝えられている。
後世には、神世七代の第六代にあたることなどから、仏教の第六天魔王と結びつけられたとする説がある。神仏習合のもとで第六天信仰と結びついた神社のうち、明治の神仏分離以降、オモダルとアヤカシコネを祭神とするようになった神社も多い。現在では二柱を祀る神社で、足病消除、身体健康、子育て、交通安全などさまざまな神徳が信仰されているが、その内容は神社によって異なる。
オモダルは、武蔵第六天神社(埼玉県さいたま市)、馬込第六天神社(埼玉県さいたま市)、稲足神社(東京都あきる野市)、榊神社(東京都台東区)などで祀られ、多度大社(三重県桑名市)では相殿神として祀られている。
エピソード
『古事記』では、天地の始まりに国之常立神とトヨクモノが独神《ひとりがみ》として現れ、その後は男女二柱で一代をなす神々が続く。ウヒヂニとスヒヂニ、角杙神と活杙神、オオトノジとオオトノベに続き、第六代として現れたのがオモダルとアヤカシコネである。その次にイザナギとイザナミが現れ、ここまでを神世七代とする。
『日本書紀』でも面足尊と惶根尊の名で神世七代の第六代に位置づけられている。両書で表記や先行する神々の構成には違いがあるが、オモダルとアヤカシコネの次にイザナギとイザナミが現れる点は共通している。
記紀には、オモダルが国を造ったり、ほかの神々と争ったりした物語は記されていない。しかし、国生みを行うイザナギとイザナミの直前に置かれていることから、世界や人間の姿が完成し、男女による新たな生命の誕生が可能となる段階を表す神と考えられてきた。オモダルは、創世の過程が国生みへ移る直前の完成と充足を象徴する神である。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「神世七代」「於母陀流神」
オモダルの神名は、『古事記』では於母陀流神、『日本書紀』では面足尊と記される。「オモ」を顔や表面を意味する「面」、「ダル」を十分に満ちることを意味する「足る」と解し、顔立ちや身体が整って完成した状態を表すとする説がある。
「面」を国土の表面とみて、まだ形の定まらなかった大地が満ち足りた状態になったことを表すとする説もある。身体の完成と国土の完成を重ね合わせ、次に現れるイザナギとイザナミによる国生みの準備が整ったことを示す神名とする解釈である。
対をなすアヤカシコネとの関係から神名を解く説もある。オモダルの名を、男神が女神の整った容姿を褒めた言葉とし、アヤカシコネの名を、それに対して女神が畏れ多いと感動した言葉とする説である。また、完成した身体を言葉で褒めることによって、命や魂を宿らせる古代の観念を表すとの見方もある。
このほか、境界を守る神像の堂々とした顔や姿を表したとする説や、男女の成熟と生殖を象徴する神とする説もある。記紀はオモダルの神格を直接説明していないため、どれか一つを唯一の正解とすることはできない。ただし、いずれの説も、形が整い、必要なものが満ちた状態をオモダルの中心的な性格としている。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「於母陀流神」「阿夜訶志古泥神」
オモダルは神世七代の第六代にあたることから、後世の神仏習合の中で、仏教の第六天魔王と結びつけられた。第六天魔王は欲界の最上位にある他化自在天《たけじざいてん》に住み、人の欲望を自在に楽しむ一方、仏道修行を妨げる天魔ともされる存在である。本来、記紀のオモダルとは別の神格だが、「第六」という共通点によって習合が進んだ。
第六天魔王への信仰は修験者などによって広められ、関東地方を中心に第六天社、大六天社と呼ばれる神社が祀られた。明治初期の神仏分離によって仏教色の強い祭神をそのまま祀ることが難しくなると、神世七代の第六代であるオモダルとアヤカシコネを祭神とする神社が増えた。社名を第六天神社のまま残した神社がある一方、榊神社や面足神社などへ改称した例もある。
埼玉県さいたま市の武蔵第六天神社では、面足尊と吾屋惶根尊を主神として祀る。「面足」の名に足の字が含まれることから足病消除の神として信仰され、現在では交通安全の神徳も結びついている。東京都あきる野市の稲足神社では、二柱を心身が整った男女の神とし、健康や美容を守る神として祀る。現在のオモダル信仰は、記紀の創世神話、第六天魔王との習合、神仏分離後の祭神変更、神名から生まれた民間信仰が重なって形成されたものである。
出典・参考:武蔵第六天神社公式サイト「第六天神社について」、稲足神社公式サイト「ご由緒・ご祭神」「よくあるご質問」、東京都神社庁「榊神社」
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
神格
ご神徳
別称・異称
おもだるのかみ
古事記
面足尊おもだるのみこと
日本書紀
淤母陀流神おもだるのかみ
その他
淤母陀琉神おもだるのかみ
その他
同一とされる神様
関連する神様
神様グループ
祀られている主な神社
武蔵第六天神社
(埼玉県岩槻区大戸1752)
近津神社
(茨城県大子町町付1218番地)
近津神社
(茨城県大子町下野宮1626番地)
足尾神社
(茨城県石岡市小屋1番地)
馬込第六天神社
(埼玉県岩槻区馬込200)
