オオミヤノメ
おおみやのめ
- 神話・伝説
- 女神・女性

玉蘭斎貞秀(神佛図會)

表記なし
祭神ランキング59位
オオミヤノメとは?
オオミヤノメは古語拾遺などに登場する女神である。古語拾遺や延喜式神名帳では大宮売神、伏見稲荷大社では大宮能売大神と表記される。宮殿に仕えて君臣の間を取り持つ神として描かれ、宮中を守護する重要な神の一柱である。
古語拾遺では、天照大神が天岩戸から出た後に新しい宮殿が造営された際、太玉命が久志備に生んだ神として大宮売神が登場する。大宮売神は天照大神の御前に仕え、宮中の内侍のように善言美詞を用いて君臣の間を和らげ、天皇の心を喜ばせる役割を担ったとされる。この記述から、宮殿そのものや宮廷に仕える女性を神格化した神とする説もある。
オオミヤノメは宮中で祀られた八神の一柱でもある。延喜式では神祇官西院に祀られる御巫八神の中に大宮売神が含まれ、皇居の平安や天皇を守護する神として祭祀された。宮中に仕えて人々の関係を調和させる神格から、人と神、人と人との間を取り持つ神として信仰され、家内和合、家内安全、人間関係円満などの神徳とも結びついている。
後世には芸能の神アメノウズメと同一視されることもあった。宮比神御伝記などには両神を同一神とみる説が伝えられ、実際に同一の神格として祀る神社も見られる。ただし古語拾遺ではアメノウズメと大宮売神はそれぞれ別の神として登場するため、本来から同一神であったと断定することはできない。
伏見稲荷大社では大宮能売大神として祀られ、宇迦之御魂大神、佐田彦大神、田中大神、四大神とともに五柱を合わせて稲荷大神と称する。稲荷信仰の中では、人々の間を円満にして商売を繁栄へ導く神として崇敬され、商売繁盛、事業繁栄のほか、人と接する商売や接客業を守る神としても信仰されている。
代表的な神社には大宮売神社(京都府京丹後市)がある。大宮売神の名を冠する式内社で、大宮売神と若宮売神を祀っている。また伏見稲荷大社(京都府京都市)をはじめ、各地の神社でも配神として祀られている。オオミヤノメのご利益は商売繁盛、事業繁栄、家内和合、家内安全、人間関係円満などとされる。
エピソード
オオミヤノメは、『古語拾遺』に大宮売神《おおみやのめのかみ》の名で登場する女神である。『古事記』や『日本書紀』にはその名が見えず、平安時代初期の大同2年《807年》に斎部広成《いんべのひろなり》が編纂した『古語拾遺』が、その役割を詳しく伝えている。 天照大神が天岩戸から出て新しい宮殿へ移ると、天児屋命と太玉命《ふとだまのみこと》は宮殿に注連縄《しめなわ》を張り、オオミヤノメを天照大神の御前に仕えさせた。『古語拾遺』では、オオミヤノメを太玉命から不思議な力によって生まれた神とし、当時の宮中で天皇の近くに仕えた内侍《ないし》のような存在だったと説明している。
オオミヤノメは、善言《よきことば》と美詞《うるわしいことば》によって君主と臣下の間を和らげ、天皇の心を喜ばせる役割を担った。武力で宮殿を守るのではなく、心配りと言葉によって宮中の秩序と平安を保つ神だったのである。この伝承から、人間関係を調和させ、家内和合や円満な交際を守る神として信仰されるようになった。
出典・参考:『古語拾遺』、角館總鎭守神明社「古語拾遺 現代語訳」
『古語拾遺』によれば、神武天皇が橿原宮《かしはらのみや》で即位した際、天上の神々の命によって神籬《ひもろぎ》が設けられた。そこには高皇産霊神、神産霊神、魂留産霊神、生産霊神、足産霊神、オオミヤノメ、事代主神、御膳神の八柱が祀られたという。
平安時代の『延喜式』神名帳でも、神祇官に祀られる「御巫祭神八座」の一柱として大宮売神の名が記されている。御巫《みかんなぎ》は宮中で神々を祀った女性であり、この八柱は天皇の生命や皇居の平安を守る宮中八神として信仰された。
宮中八神のうち、オオミヤノメは宮殿の内側にあって、そこへ出入りする人々を見守り、君臣の関係を整える神とされた。宮殿の門を守る豊磐間戸命《とよいわまどのみこと》と櫛磐間戸命《くしいわまどのみこと》が外から災いが入ることを防いだのに対し、オオミヤノメは宮殿内部の人間関係や奉仕が滞りなく行われるよう守ったのである。宮殿を意味する「大宮」と、女性を表す「売《め》」を名に持つ、宮中祭祀と深く結び付いた女神である。
出典・参考:『古語拾遺』、『延喜式』神名帳
伏見稲荷大社では、オオミヤノメを大宮能売大神《おおみやのめのおおかみ》の名で祀っている。同社の本殿には、宇迦之御魂大神、佐田彦大神、大宮能売大神、田中大神、四大神の五柱が祀られ、合わせて稲荷大神と称されている。
稲荷信仰は、もともと稲の実りや五穀豊穣を願う信仰を中心としていたが、商工業の発展とともに商売繁盛や事業繁栄を守る信仰へ広がった。稲荷大神の一柱となったオオミヤノメも、商売や仕事を円滑にする神として崇敬されるようになった。
『古語拾遺』では、オオミヤノメは心配りの行き届いた言葉によって君主と臣下の間を和らげる神とされている。後世にはこの働きが、人と人、人と商いの縁を取り持つ力として解釈された。特に客と直接向き合う旅館や商店、百貨店などでは、接客に必要な愛嬌、機転、言葉遣いを守る神として信仰されている。宮中の調和を守った女神の神徳が、稲荷信仰と結び付くことで、商売繁盛、接客業守護、家内安全、家族和合へ広がったのである。
出典・参考:『古語拾遺』、伏見稲荷大社公式サイト「稲荷大神について」、鵠沼伏見稲荷神社公式サイト「御祭神」
オオミヤノメは、後世の神社信仰では芸能の女神として知られるアメノウズメと同一視されることがある。京都府京丹後市の大宮売神社では、大宮売神と若宮売神《わかみやめのかみ》を祀り、大宮売神をアメノウズメ、若宮売神を豊受大神とする伝承が受け継がれている。
大宮売神社は『延喜式』神名帳に載る式内社で、大宮売神の名を社名に持つ代表的な神社である。境内からは古代の土器や祭祀遺物が出土しており、古くから祭祀が行われた場所であったことが分かっている。現在は縁結び、安産、子孫繁栄、文化発展などの守護神として信仰されている。
ただし、『古語拾遺』ではオオミヤノメとアメノウズメは別々の神として描かれている。アメノウズメは天岩戸の前で歌舞を演じ、天孫降臨ではニニギに随行した。一方、オオミヤノメは新しい宮殿で天照大神の御前に仕え、君臣の間を和らげたとされる。二柱を同一神とする考えは古典そのものの記述ではなく、両神が宮廷に仕える女神であり、言葉や芸能を通じて場を和ませるという共通点から成立した後世の信仰上の同一視である。
出典・参考:『古語拾遺』、『延喜式』神名帳、京丹後市デジタルミュージアム「大宮売神社石灯籠」、京丹後市観光公社「大宮賣神社」
出典文献
先代旧事本紀
古語拾遺
延喜式
新撰姓氏録
神格
ご神徳
別称・異称
おおみやのめのかみ
先代旧事本紀/古語拾遺
大宮乃売おおみやのめ
延喜式
宮能売神みやのめのかみ
新撰姓氏録
大宮乃女命おおみやのめのみこと
その他
大宮咩神おおみやのめのかみ
その他
大宮姫命おおみやひめのみこと
その他
大宮比売命おおみやひめのみこと
その他
大宮能売命おおみやのめのみこと
その他
同一とされる神様
神様グループ
祀られている主な神社
伏見稲荷大社
(京都府伏見区深草藪之内町68)
祐徳稲荷神社
(佐賀県鹿島市古枝乙1855)
三光稲荷神社
(愛知県犬山市大字犬山字北古券41-1)
志和稲荷神社
(岩手県紫波町升沢字前平17)
高山稲荷神社
(青森県つがる市牛潟字鷲野沢147-1)
