有名度
関脇近江神宮
おうみじんぐう
滋賀県大津市神宮町1-1
自動車清祓所
更新日:2026年10月4日
明治時代の裁判所から移築された自動車清祓所
近江神宮で自動車の交通安全祈願や清祓を行う自動車清祓所は、もともと神社のために建てられた建物ではありません。かつて大津市内にあった大津裁判所本館の玄関車寄せを移築したもので、近江神宮の境内でも異色の歴史を持つ建築です。建てられたのは1890(明治23)年。1971(昭和46)年に裁判所庁舎が解体・建て替えられた際、玄関車寄せが保存され、近江神宮の境内へ移築されました。
近江神宮が創建されたのは1940(昭和15)年なので、自動車清祓所は神宮そのものより約50年も古い建物です。昭和前期に造営された社殿群がまとまって残る境内に、明治時代の裁判所建築が加わっているという意外な見どころとなっています。

車寄せの役割を現在まで受け継ぐ
建物は木造平屋建、銅板葺で、建築面積は26平方メートル。もともと裁判所を訪れる人々を迎える玄関車寄せとして造られたため、建物の前まで車両を寄せられる構造になっています。近江神宮へ移築された後は、この特徴を生かして自動車清祓所として使用されるようになりました。かつて裁判所の玄関で人や車を迎えていた「車寄せ」が、場所と用途を変えながら、現在も自動車を迎え入れる建物として使われているのが興味深いところです。
自動車清祓では車を清め、交通安全を祈願します。歴史的建築物として保存するだけではなく、本来の車寄せとしての性格を生かしながら、現役の神社施設として使い続けられていることも大きな特徴です。
KENPEI(wikipedia CC 表示-継承 3.0)スポンサーリンク
菊の紋章に残る裁判所時代の面影
建物を訪れたら、屋根まわりの細かな意匠にも注目です。屋根の正面には緩やかな曲線を描く「ムクリ破風」が設けられ、その下には蝙蝠形(こうもりがた)の懸魚が取り付けられています。さらに、この懸魚には菊の紋章が残されており、かつて裁判所の玄関を飾っていた建物であることを現在に伝えています。
また、建物の隅柱にはそれぞれ2本ずつ控柱を添えているのも特徴です。文化庁もこうした構造や意匠を自動車清祓所の特徴として挙げています。

国の登録有形文化財
自動車清祓所は1998(平成10)年、国の登録有形文化財に登録されました。近江神宮では本殿、内拝殿、外拝殿、楼門、鳥居など多くの建造物が登録有形文化財となっていますが、その多くは近江神宮の創建に伴って昭和前期に造営されたものです。それに対して自動車清祓所は、明治時代に裁判所建築として誕生し、約80年後に近江神宮へ移築されたというまったく異なる歴史を歩んできました。
1890(明治23)年に裁判所の玄関車寄せとして造られた建物が、130年以上を経た現在は交通安全を祈る場所として使われている――。ムクリ破風や菊の紋章など裁判所時代の面影を探しながら見学したい、近江神宮の隠れた建築の見どころです。
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