國龍神
くにたつのかみ
- 神話・伝説
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國龍神とは?
國龍神は阿蘇地方の神社伝承などに登場する男神。國龍命とも表記され、阿蘇神社では阿蘇十二神の第3神として祀られている。阿蘇の神社伝承では彦八井耳命、草部吉見神とも呼ばれ、同一の神として信仰されている。
彦八井耳命は記紀神話に登場する神武天皇の皇子で、第2代綏靖天皇となる神沼河耳命の兄にあたる。『古事記』では多氏をはじめとする多くの氏族の祖とされる。一方、記紀には彦八井耳命を國龍神や草部吉見神とする記述はなく、これらの神名を結びつける系譜は阿蘇地方に伝わる後世の神社伝承である。
阿蘇神社では健磐龍命を中心としてその一族や関係神からなる阿蘇十二神を祀っており、國龍神もその一柱に数えられる。また阿蘇神社の田作祭では社家の祖先神・年祢神ともされ、阿蘇の農耕や祭祀に深く関わる神として信仰されてきた。
熊本県高森町の草部吉見神社では草部吉見神として祀られている。同社の伝承では、草部吉見神は健磐龍命に先立って阿蘇地方へ入り、土地を開いた神とされる。こうした伝承から阿蘇地方の開拓や農耕を守護する神として崇敬されている。
國龍神を祀る代表的な神社には熊本県阿蘇市の阿蘇神社と熊本県高森町の草部吉見神社があり、阿蘇の地域守護、農業守護、五穀豊穣などの神として信仰されている。
エピソード
『古事記』中巻では、日子八井命は神武天皇と伊須気余理比売の子として記される。一方、熊本県総合博物館ネットワークの草部吉見神社解説は、同社の祭神を彦八井耳命とし、「阿蘇では国龍神、草部吉見神とも呼ぶ」と紹介している。阿蘇の伝承では、彦八井耳命は神武天皇の長男とされ、阿蘇の神々の系譜にも位置付けられる。
このように、國龍神という神名は、古典に記された神名そのものというより、阿蘇地域で彦八井耳命を神として祀る信仰と結び付いて伝わっている。『古事記』の神名と地域の祭神名が重ねられてきた経緯を知る手掛かりとなるが、両者の同一視を全国共通の神話上の設定として扱うことはできない。ここでは、古典の記述と阿蘇の神社伝承を分けて見る必要がある。
出典・参考:『古事記』中巻・神武天皇段、熊本県総合博物館ネットワーク「草部吉見神社(くさかべよしみじんじゃ)高森町」
草部吉見神社に伝わる話では、彦八井耳命は高千穂峰から草部の地に至り、しばらく川走りの窟に住んだという。宮を建てる場所を占うと吉の池が選ばれたが、池には人々を困らせる大蛇が棲んでいた。命は大蛇を退治し、池を埋めて宮を建てた。屋根や壁を草で葺いた館にちなみ、この地を「草部」と呼ぶようになったと伝える。
大蛇が逃げて血を流した場所を地引原、最後に焼かれた場所を灰塚とする地名の由来譚も、同じ伝承の中に記されている。ここでは、國龍神と同一視される彦八井耳命が、土地を脅かす存在を退け、宮の場所を定める神として語られている。ただし、これは草部に伝わる神社の由緒・地域伝承であり、記紀に記された神話や、実際の神社創建時の出来事と同一視できるものではない。
出典・参考:熊本県総合博物館ネットワーク「草部吉見神社(くさかべよしみじんじゃ)高森町」(参考文献:高森町史編さん委員会『高森町史』)
草部吉見神社の解説には、彦八井耳命が日向から乾珠《かんじゅ》と満珠《まんじゅ》という二つの石の玉を持ってきたという伝承も紹介されている。火の玉である乾珠は日照りを、水の玉である満珠は雨をもたらす力を持ち、命は玉によって天候を操り、この地に農業を広めたと語られる。
この話では、國龍神と結び付けられる彦八井耳命は、土地を開く神であると同時に、雨や日照りを通じて農作を左右する神として描かれている。水の湧く御塩井も同社の解説で伝承と関連付けられており、神の力と水の恵みが結び付けられてきたことがうかがえる。ただし、乾珠・満珠の物語は草部に伝わる地域伝承として伝えられたものであり、『古事記』『日本書紀』の記述として紹介することはできない。
出典・参考:熊本県総合博物館ネットワーク「草部吉見神社(くさかべよしみじんじゃ)高森町」(参考文献:高森町史編さん委員会『高森町史』)
阿蘇神社の田作祭《たつくりさい》は、社家の祖先神でもある國龍神(年祢神)の婚儀を表し、五穀豊穣を祈る祭りである。阿蘇神社によると、國龍神は七日間にわたり毎夜異なる社家の家に泊まり、妃神は阿蘇市赤水の宮山地区から迎えられる。祭りの最終日には、夫婦神の前で稲作の過程を演じる田作り神事が行われる。
この祭りでは、國龍神は神話の中の存在にとどまらず、社家の由緒と稲作の実りを結び付ける神として現在の祭祀に現れている。阿蘇神社は祭りを、神の婚儀を通じて五穀豊穣を願うものと説明している。地域の農耕祭事の中で國龍神がどのような神として信仰されているかを知る、現在につながる事例である。
出典・参考:阿蘇神社「田作祭」
ご神徳
ご神徳は不明です。
別称・異称
あそさんのみや
その他
同一とされる神様
神様グループ
祀られている主な神社
阿蘇神社
(熊本県阿蘇市一の宮町宮地3083−1)
若宮神社
(熊本県美里町馬場605)
荻神社
(熊本県阿蘇市波野中江2593)
駄野神社
(熊本県御船町田代765)
寶来吉見神社
(熊本県小国町黒淵2887)
