若一王子
にゃくいちおうじ
- 神話・伝説
- 男神・男性

祭神ランキング246位
若一王子とは?
若一王子は熊野信仰から生まれた神仏習合の神。若王子とも呼ばれる。熊野三山で祀られた熊野十二所権現の一柱で、三所権現、五所王子、四所明神に分けられる十二所権現のうち、五所王子の第一位に位置づけられる。本地仏は十一面観音とされた。
熊野十二所権現は、熊野の神々を仏・菩薩の垂迹として捉える本地垂迹思想のもとで形成された神仏習合の神々である。若一王子もその体系を構成する重要な神格で、熊野本宮大社では若宮の祭神を天照大神、本地仏を十一面観音としている。一方、各地へ広がった若一王子信仰には祭神の同定に違いがあり、ニニギと結びつける伝承もみられる。
中世以降、熊野詣が盛んになり熊野権現が全国各地へ勧請されると、若一王子の信仰も各地へ広がった。若一王子は少女や幼童の姿で示現し、熊野権現の勧請に随伴する神であるとする伝承があり、熊野十二所権現すべてではなく若一王子だけを勧請して祀る例も生まれた。このため若王子神社、若一王子神社などの名を持つ神社が各地に成立した。
明治時代の神仏分離によって熊野権現の本地仏との関係が切り離されると、若一王子を天照大神やニニギなどの神道の神として整理した神社もみられる。一方で、現在まで若一王子・若王子の名を残して信仰を伝える神社もあり、神仏習合時代の熊野信仰の姿を現在に伝えている。
長野県大町市の若一王子神社では若一王子を祭神の一柱として祀っている。東京都北区の王子神社も、熊野から若一王子を勧請して若一王子宮と称した歴史を持ち、地名「王子」の由来にもなった。現在は伊邪那美命、伊邪那岐命、天照大御神、速玉之男命、事解之男命の五柱を王子大神と総称して祀っている。若一王子は開運、厄除け、災難除けなどの神として信仰されている。
エピソード
熊野本宮大社の社殿の説明では、若一王子は「若宮」とも記され、五所王子の一柱として祀られている。五所王子の中では、若一王子、禅師宮、聖宮、児宮、子守宮の順に名が挙げられる。熊野本宮大社は、若宮の祭神を天照大神、本地仏を十一面観音として説明している。これは熊野本宮大社の祭祀における神仏習合の伝統を示すもので、若一王子の祭神や本地仏を各地で一律に定めるものではない。
「若王子」「若宮王子」「若一王子」などの呼び名は、時代や資料によって異なる。熊野信仰の中で王子神がどのように位置付けられたかを知るには、こうした名称の違いと、社ごとの祭祀の違いを分けて見る必要がある。
出典・参考:熊野本宮大社「熊野本宮大社について」、平凡社『世界大百科事典』「王子信仰」
王子信仰について、平凡社『世界大百科事典』は、神が貴い児童の姿で現れる信仰として説明する。同書によれば、若王子は少女または幼童の姿で現れる王子神とされ、熊野権現が各地へ勧請された際に、これに伴って祀られた例が多い。若一王子だけを勧請する場合もあったという。
この伝承から分かるのは、若一王子が熊野三山の社殿に祀られた神であるだけでなく、熊野信仰が広がるなかで各地の祭祀にも迎えられた存在だったことである。ただし、熊野詣の道沿いに置かれた「九十九王子」の各社が、すべて若一王子を祀ったという意味ではない。王子社の祭神や由緒は一社ごとに確認する必要がある。
出典・参考:平凡社『世界大百科事典』「王子信仰」
長野県大町市の若一王子神社は、仁科盛遠が熊野那智大社に参詣し、第五殿に祀られていた若一王子を勧請したことから、若一王子の宮と称されるようになったと伝える。神社の由緒では、伊弉冉尊を祀る社に、仁品王と妹耶姫が合祀された後、若一王子が迎えられたとされる。
大町市の説明によれば、境内には神社の社殿のほか三重塔や観音堂も残り、神と仏を一体とする神仏習合の影響が見られる。ここでの若一王子は、熊野から勧請された神として、地域の信仰や祭礼の中に受け継がれてきた。現在の境内に神仏習合の痕跡が残ることは、若一王子への信仰が神社の名称だけでなく、地域の宗教文化とも結び付いてきたことを伝えている。
出典・参考:若一王子神社「由緒沿革」、大町市「若一王子神社」、文化遺産オンライン「若一王子神社観音堂及び宮殿」
京都市下京区の若一神社は、平安時代末期に平清盛が西八条の邸宅を構えた際、敷地内の鎮守社として紀州熊野の若一王子を祀ったことに始まると伝える。京都市の観光案内は、清盛が太政大臣に任じられたことから、若一王子が開運出世の神として信仰を集めたと紹介している。
この由緒は、若一王子への信仰が熊野から各地へ広がり、地域の歴史や人物伝承と結び付きながら新たな神徳を持つようになった例である。ただし、京都市の案内も史実には諸説あると注記している。若一王子の加護によって清盛が出世したと歴史的事実として断定するのではなく、清盛の伝承を背景に、開運出世の神として信仰されるようになった経緯として捉えたい。
出典・参考:京都市観光Navi「若一神社」、『日本大百科全書(ニッポニカ)』「王子信仰」
出典文献
神仏習合の神
ご神徳
別称・異称
にゃくおうじ
その他
同一とされる神様
祀られている主な神社
若一王子神社
(長野県大町市大町2097)
王子神社
(静岡県掛川市山崎1328)
若一神社
(京都府下京区七条御所ノ内本町98)
熊野神社
(新潟県阿賀野市山本新225番地)
若一王子神社
(新潟県佐渡市中原629番地)
