八坂刀売神 神社の神様 - 神社ファン

八坂刀売神

やさかとめのかみ

  • 神話・伝説
  • 女神・女性

祭神ランキング56位

八坂刀売神とは?

八坂刀売神は『続日本後紀』に登場する女神である。八坂刀売命、八坂斗女命とも表記され、文献によっては前八坂刀売神、八坂刀自神、八坂比売命、八坂姫、姫大明神などの別名も見られる。長野県の諏訪大社に祀られるタケミナカタの妃神とされ、記紀神話には登場しないことから、諏訪地方で古くから信仰された神と考えられる。それ故に出自には諸説あり、ワタツミの娘で宇都志日金拆命《うつしひかなさくのみこと》の妹にあたるとされたり、ニギハヤヒの従者であった天八坂彦命《あめのやさかひこのみこと》の娘とする説もある。
神名の「八坂」は、信濃に多い坂道や峠にちなみ、旅を安全に導く女神を表すともいわれる。また、「弥栄《いやさか》」に通じることから、繁栄をもたらす神とも解されている。
八坂刀売神は、多くの逸話を持つ神でもある。諏訪湖の御神渡りは、上社のタケミナカタが下社の八坂刀売神に会いに行くためにできる道だという伝説が知られている。また、タケミナカタとけんかをして下社へ移った八坂刀売神が、化粧用の湯を含ませた綿を運び、その途中で滴った雫から諏訪地方の温泉が生まれたという湯玉伝説もある。こうした伝承や諏訪大神としての信仰から、五穀豊穣、縁結び、夫婦和合、旅行安全などの神徳があるとされている。
八坂刀売神は、諏訪大社の上社前宮、下社春宮・秋宮をはじめ、全国の諏訪神社や妻科神社(長野県長野市)などで祀られている。

エピソード

記紀に登場しない諏訪の女神
八坂刀売神《やさかとめのかみ》は、八坂刀売命、八坂刀女命、八坂斗女命などとも表記される諏訪地方の女神である。『古事記』や『日本書紀』には登場せず、その出自や諏訪へ鎮座した経緯を伝える古代の神話も残されていない。
八坂刀売神が文献に初めて現れるのは、平安時代の国史『続日本後紀』である。承和9年(842)、信濃国《しなののくに・現在の長野県》の健御名方富命前八坂刀売神に従五位下の神階が授けられた。この記録から、八坂刀売神がすでに建御名方神と深く結びついた重要な神として、朝廷にも認められていたことが分かる。
その後も建御名方神とともに神階を上げ、嘉祥3年(850)には従五位上、仁寿元年(851)には従三位、貞観9年(867)には正二位に達した。記紀神話には姿を見せない一方、八坂刀売神は諏訪の地で古くから大きな信仰を集め、国家からも高い神威を認められた女神なのである。

出典・参考:『続日本後紀』、『日本文徳天皇実録』、『日本三代実録』



建御名方神とともに祀られる諏訪大神
八坂刀売神の出自は明らかではないが、後世の諏訪信仰では建御名方神の妃神とされ、二柱をあわせて諏訪大神と呼ぶ。建御名方神が『古事記』の国譲り神話に登場するのに対し、八坂刀売神には国譲りに伴って諏訪へ来たという記述はない。二柱の夫婦関係は、諏訪で育まれた信仰として区別して考える必要がある。
諏訪大社は、諏訪湖の南側にある上社前宮と上社本宮、北側にある下社春宮と下社秋宮の二社四宮からなる。現在の諏訪大社では、前宮に八坂刀売神、本宮に建御名方神を祀り、春宮と秋宮には建御名方神、八坂刀売神、八重事代主神を祀っている。
諏訪大神は雨風や水をつかさどり、五穀豊穣と生命の根源を守る神として信仰されてきた。建御名方神と八坂刀売神が夫婦神とされることから、八坂刀売神には縁結びや夫婦和合の神徳も結びつけられている。全国の諏訪神社でも、建御名方神とともに祀られることの多い女神である。

出典・参考:『古事記』、諏訪大社公式サイト「諏訪大社について」「四つの神社」



御神渡りは夫婦神が会う道
厳しい寒さで諏訪湖が全面結氷すると、気温の変化によって氷が膨張と収縮を繰り返し、湖面に長い亀裂と氷の盛り上がりが現れることがある。この現象は御神渡り《おみわたり》と呼ばれ、諏訪を代表する冬の風物詩となっている。
諏訪には、この氷の道は上社の建御名方神が、下社に祀られる妃神の八坂刀売神へ会いに行った跡であるという伝説がある。上社と下社が諏訪湖を挟んで鎮座していることから、自然現象が離れて暮らす夫婦神の物語と結びついたのである。
御神渡りが現れると、諏訪市の八劔神社《やつるぎじんじゃ》が湖上を確認し、拝観式を行う。御神渡りが現れない年は明けの海と呼ばれる。八坂刀売神は、この伝説によって諏訪湖の自然と夫婦神の結びつきを象徴する女神となり、縁結びや夫婦和合の信仰とも結びついている。

出典・参考:諏訪市観光協会「諏訪湖御神渡り」、下諏訪観光協会「諏訪湖の御神渡り」、諏訪市博物館



温泉を生んだ湯玉伝説
諏訪地方には、八坂刀売神が温泉を生み出したという湯玉《ゆだま》伝説が伝えられている。あるとき八坂刀売神は夫の建御名方神とけんかをし、上社の地を離れて諏訪湖の北側にある下社へ移ることになった。
八坂刀売神は、日頃使っていた化粧用の湯を綿に含ませて運んだ。ところが道中で綿から湯が滴り落ち、その雫が落ちた場所から次々と温泉が湧き出したという。下諏訪へ着いて湯を含んだ綿を置いた場所からも温泉が湧き、綿の湯と呼ばれるようになったと伝えられている。
これは記紀などに記された神話ではなく、上諏訪から下諏訪にかけて温泉が豊富に湧く土地から生まれた伝説である。諏訪湖の御神渡りが建御名方神から八坂刀売神へ向かう物語であるのに対し、湯玉伝説では八坂刀売神自身が上社から下社へ移動する。八坂刀売神は、水や農耕を守るだけでなく、諏訪の温泉をもたらした女神としても親しまれているのである。

出典・参考:諏訪市博物館「湯玉伝説」、下諏訪観光協会「下諏訪温泉」



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出典文献

続日本書紀

神格

夫婦和合の神

ご神徳

五穀豊穣 縁結び 夫婦和合

別称・異称

八坂刀売神

やさかとめのかみ

続日本後紀

八坂刀女命

やさかとめのみこと

その他

八坂刀美命

やさかとみのみこと

その他

八坂戸売神

やさかとめのかみ

その他

八坂斗売命

やさかとめのみこと

その他

八坂斗女命

やさかとめのみこと

その他

八坂豆売命

やさかとめのみこと

その他

八阪刀売命

やさかとめのみこと

その他

神様グループ

諏訪大神 

祀られている主な神社

諏訪大社 上社前宮
(長野県茅野市宮川2030)
諏訪大社 下社秋宮
(長野県下諏訪町5828)
諏訪大社 下社春宮
(長野県下諏訪町193)
札幌諏訪神社
(北海道東区北12条東1丁目1番10号)
五社神社諏訪神社
(静岡県中央区利町302-5)