火須勢理命
ほすせりのみこと
- 神話・伝説
- 男神・男性

祭神ランキング184位
火須勢理命とは?
火須勢理命は記紀神話に登場する男神である。『古事記』では火須勢理命、『日本書紀』では火闌降命、火酢芹命、火進命などと表記される。ニニギとコノハナノサクヤビメの間に生まれた火に関係する三兄弟の一柱である。ただし、記紀では三兄弟の神名や出生順、海幸彦・山幸彦との対応関係が異なっている。
『古事記』では、コノハナノサクヤビメが一夜で身ごもったことをニニギに疑われ、自らの潔白を証明するため産屋に火を放ち、その中で三柱の神を産んだとされる。火が盛んに燃えている時にホデリ、次に火須勢理命、最後にホオリが生まれた。火須勢理命は三兄弟の第二子として名前が記されるものの、その後の具体的な活躍は語られない。海幸彦として山幸彦と争い、隼人の祖とされるのは兄のホデリである。
一方、『日本書紀』では異なる伝承が記されており、火闌降命を海幸彦、彦火火出見尊を山幸彦として兄弟の争いが展開される。海幸彦は弟に屈服した後、その子孫が隼人となり、代々宮廷を守護するようになったとされる。このため、火須勢理命と火闌降命を対応する神とした場合、『日本書紀』では火須勢理命にあたる神が海幸彦・隼人の祖という重要な役割を担っていることになる。
神名は火の燃焼の状態を表すものと考えられ、「ホ」は火、「スセリ」は火の勢いが進み盛んになることを意味すると解釈されている。燃え盛る産屋の中で誕生した三兄弟は、それぞれ火の燃え始めから盛んな燃焼、火勢の衰えまでを表した神名を持つとする説がある。
火須勢理命は火闌降命と同一視され、海幸彦や隼人の祖神として信仰されることがある。代表的な神社に、火闌降命を祀る宮崎県日南市の潮嶽神社、市房山神宮、隼人神社などがある。
エピソード
『古事記』では、コノハナノサクヤビメがニニギと一夜をともにしただけで懐妊したため、ニニギは自分の子ではなく国つ神の子ではないかと疑った。コノハナノサクヤビメは、ニニギの子であれば火の中でも無事に生まれるはずだと誓い、出入口のない産屋へ入って火を放った。
燃える産屋の中で最初に生まれたのが火照命、次が火須勢理命、最後が火遠理命である。三柱の神名は、火が照り始め、勢いを増し、やがて衰えるまでの燃焼の推移を表すと考えられている。火須勢理命の「スセリ」は、火が勢いよく進む状態を意味するとの説があり、三兄弟の中央に置かれた神名も火の最盛期に対応している。
火須勢理命には『古事記』で独立した事績が語られないが、誕生そのものがコノハナノサクヤビメの潔白と、天孫の子が火にも損なわれない神聖な存在であることを証明している。火を鎮める神というよりも、燃え盛る火の生命力を神名に負った神である。
出典・参考:『古事記』天孫降臨段、『日本書紀』神代下第九段一書第五、西宮一民校注『古事記』新潮日本古典集成、國學院大學古典文化学事業「火須勢理命」
海幸彦と山幸彦の物語では、記紀によって兄神の名前が異なる。『古事記』では火照命が海幸彦となり、弟の火遠理命と釣針をめぐって争う。火須勢理命は三兄弟の一柱として生まれるだけで、その後の物語には登場しない。
一方、『日本書紀』では火闌降命が海幸彦となり、弟の彦火火出見尊と争う。海の幸を得る釣針と山の幸を得る弓矢を交換したことから兄弟の対立が始まり、海神の力を得た弟神に敗れた火闌降命は、弟を守ることを誓った。『日本書紀』は火闌降命を隼人の始祖とし、その服属の様子を表すため、隼人が宮廷で舞を演じるようになったと説明している。
宮崎県日南市の潮嶽神社では、火闌降命を海幸彦として主祭神に祀る。社伝では、弟神との争いに敗れた火闌降命が潮に乗って当地へ着き、宮居を定めて隼人の祖になったとされる。火須勢理命は記紀間の神名の違いによって、名前だけの神にも、海幸彦と隼人の祖にもなる神である。
出典・参考:『古事記』海幸彦と山幸彦段、『日本書紀』神代下第九段・第十段、國學院大學古典文化学事業「火須勢理命」「火照命」、潮嶽神社「御由緒」
出典文献
古事記
日本書紀
新撰姓氏録
先代旧事本紀
ご神徳
ご神徳は不明です。
別称・異称
ほすせりのみこと
古事記
火闌降命ほのすそりのみこと
日本書紀/新撰姓氏録
海幸彦うみさちひこ
日本書紀
火進命ほのすすみのみこと
日本書紀
火酢芹命ほのすせりのみこと
日本書紀
火蘭命ほすそりのみこと
先代旧事本紀
富乃須佐利乃命ほのすせりのみこと
新撰姓氏録
富須洗利命ほすせりのみこと
新撰姓氏録
火乃須曽利神ほのすそりのかみ
その他
火闌命ほのすそりのみこと
その他
関連する神様
祀られている主な神社
日峯神社
(福岡県八幡西区浅川日の峯1丁目8−8)
市房山神宮
(熊本県水上村湯前2017)
潮嶽神社
(宮崎県日南市北郷町北河内8866番)
野間神社
(鹿児島県南さつま市笠沙町片浦4108)
丹内神社
(岩手県久慈市小久慈町25-99)
