ハニヤスビメ
はにやすびめ
- 神話・伝説
- 女神・女性

祭神ランキング65位
ハニヤスビメとは?
ハニヤスビメは記紀神話などに登場する女神である。古事記では波邇夜須毘売神と記し、日本書紀では埴山姫、埴山媛などの名で登場する。また、日本書紀の一書には男女に分かれない土の神として埴安神の名も見える。
イザナミが火の神カグツチを生んだ際、大やけどを負って病に伏した苦しみの中から成った神の一柱である。古事記では、イザナミが病の中で排泄した屎からハニヤスヒコとハニヤスビメが成ったと記され、二柱は対をなす男女の土神とされている。
神名にある「ハニ」は、土器などの材料となる粘土を意味する「埴《はに》」と考えられている。このことからハニヤスビメは土や粘土を司る神とされ、土器や陶器を作る人々からも信仰されてきた。また屎から生まれたという神話を、田畑を肥やす肥料や豊かな土壌と結びつけ、農作物の成長を司る農耕神として捉える考えもある。土から作られる土器は穀物や水などを保存するためにも欠かせないものであり、土の神、陶器の神、農業の神という神格は古代の人々の暮らしの中で深く結びついていたと考えられる。
日本書紀の一書では、イザナミの死に際して土の神である埴山姫と水の神である罔象女が生まれ、さらに火の神カグツチが埴山姫を娶って稚産霊を生んだとされる。稚産霊の頭には蚕と桑が生じ、臍には五穀が生じたと記されている。火と土から生命や穀物を生み出す神が誕生するこの伝承からも、埴山姫が大地の生産力と深く関係する神であることがうかがえる。
後世には土そのものを守る神として、田畑の開墾だけでなく土地造成や土木にも信仰が広がった。また大地が作物を生み育てることや、稚産霊を生んだという日本書紀の伝承から、子授けや安産とも結びつけられている。ハニヤスビメには陶器業守護、開墾守護、土木業守護、五穀豊穣、子授け、安産守護などのご利益があるとされる。
ハニヤスビメは川原神社(愛知県名古屋市)や埴山姫神社(山形県鶴岡市)などで祀られている。
エピソード
ハニヤスビメは、『古事記』の神生みでイザナミから生まれた土の女神である。イザナミは火の神カグツチを生んだことで陰部に大やけどを負い、病に伏した。その苦しみの中で、吐瀉物から金山毘古神と金山毘売神、屎《くそ》から波邇夜須毘古神と波邇夜須毘売神《はにやすびめのかみ》、尿から弥都波能売神と和久産巣日神が成った。
ハニヤスビメとハニヤスヒコは、同じ屎から成った一対の男女神である。『古事記』では、イザナミが通常の意味で二柱を「生んだ」のではなく、屎から「成った」と表現されている。神々の誕生を通して、死や穢れとみなされる排泄物からも、土や水、作物を育てる力が生じることを示す神話と考えられている。
排泄物は田畑を肥やす肥料となり、作物を育てる土へ戻っていく。そのためハニヤスビメは、単なる大地の神ではなく、土壌を豊かにして農作物を育てる農耕神、肥料の神としても信仰されるようになった。
出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「波邇夜須毘売神」「弥都波能売神」
ハニヤスビメの神名にある「ハニ」は、土器や陶器の材料となる粘土を意味する「埴《はに》」と考えられている。「ヤス」については、粘土を練って柔らかくすることを表すとする説や、土を安定させる「安」の意味とする説がある。神名からも、ハニヤスビメが土や粘土を司る神であることが分かる。
粘土は、器や甕《かめ》、祭祀に使う土器などの材料となった。農耕によって収穫した穀物を保存し、水や食物を運ぶためにも土器は欠かせなかった。このため、土の神、陶器の神、農業の神というハニヤスビメの神格は、それぞれ別のものではなく、古代の暮らしの中で深く結びついている。
また、『日本書紀』には、神武天皇が天香山《あめのかぐやま》の埴土を取って多くの平瓮《ひらか》を作り、諸神を祀ったことで天下を平定できたという伝承がある。その土を取った場所は埴安《はにやす》と呼ばれた。ハニヤスビメと天香山との直接の関係を語る神話ではないが、神聖な埴土で祭器を作る信仰と、土を司るハニヤスビメの神格とのつながりがうかがえる。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「波邇夜須毘売神」
『古事記』ではハニヤスヒコとハニヤスビメの二柱が登場するが、『日本書紀』の一書では男神は現れず、埴山姫《はにやまひめ》または埴山媛《はにやまひめ》という女神が生まれたと記される。一書第四では、『古事記』と同じようにイザナミの大便から埴山媛が生まれたとしている。また、一書第六には男女に分かれない土の神・埴安神が登場する。
『日本書紀』一書第二では、火の神カグツチが土の神である埴山姫を妻とし、稚産霊を生んだ。稚産霊の頭には蚕と桑が生じ、臍《へそ》には五穀が生じたと伝えられている。土の神と火の神から、養蚕や穀物を生み出す生産の神が誕生したのである。
火は植物を焼き、命を奪う力を持つ一方、焼畑によって新たな作物を育て、粘土を焼いて土器へ変える力でもある。火の神カグツチと土の女神ハニヤスビメの結びつきは、火と土から新しい生命や生活の道具が生み出されることを表す神話と考えられている。
出典・参考:『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「波邇夜須毘売神」「和久産巣日神」
群馬県高崎市の榛名神社では、火産霊神《ほむすびのかみ・カグツチ》と埴山姫神《はにやまひめのかみ・ハニヤスビメ》を主祭神として祀っている。イザナミに大やけどを負わせた火の神と、その苦しみの中から生まれた土の女神が、現在では火と土を司る二柱として並んで祀られているのである。
榛名神社は榛名山の山中に鎮座し、境内には御姿岩《みすがたいわ》をはじめとする奇岩や巨岩がそびえる。火山活動によって形づくられた山に火の神と土の神を祀ることから、五穀豊穣、鎮火、開運などの信仰を集めている。
山形県鶴岡市の羽黒山にある埴山姫神社では、埴山姫命を祀る。土、田畑の土壌、陶器の神とされ、田畑の開墾や陶磁器業、子宝、安産を守る神として信仰されている。また、埴山彦命と対をなす男女神であることから、縁結びの神としても信仰されている。
出典・参考:榛名神社公式サイト、鶴岡市観光公式サイト「埴山姫神社」
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
延喜式
神格
ご神徳
別称・異称
はにやすびめのかみ
古事記
埴山姫はにやまひめ
日本書紀/延喜式
埴安媛はにやすひめ
日本書紀
埴安姫はにやすひめ
先代旧事本紀
埴夜須毘売命はにやすひめのみこと
その他
埴安比売命はにやすひめのみこと
その他
埴安毘売命はにやすびめのみこと
その他
埴山比売命はにやまひめのみこと
その他
埴山毘売神はにやまひめのかみ
その他
波邇夜須比売神はにやすひめのかみ
その他
波邇安姫命はにやすひめのみこと
その他
神様グループ
祀られている主な神社
愛宕神社
(京都府右京区嵯峨愛宕町1)
榛名神社
(群馬県高崎市榛名山町849番地)
大井神社
(静岡県島田市大井町2316)
烈々布神社
(北海道東区北42条東10丁目1番地)
上山鼻神社
(北海道南区藻岩山)
