大年神
おおとしのかみ
- 神話・伝説
- 男神・男性

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング34位
大年神とは?
大年神は『古事記』などに登場する男神。大歳神と記される場合もある。須佐之男命と神大市比売の間に生まれた神で、稲荷神として知られる宇迦之御魂神の兄神とされている。「年」とは豊年、すなわち穀物の実りを意味すると考えられ、大年神は穀物や農耕を司る神として信仰されている。
『古事記』では、大年神は伊怒比売、香用比売、天知迦流美豆比売との間に多くの神々を生んだ。その子には御年神、大山咋神、奥津日子神、奥津比売命、阿須波神などがおり、大年神の系譜には農耕、山、土地、屋敷、かまどなど、人々の暮らしに関わる神が数多く含まれている。
大年神は、後世には正月に各家庭へ迎えられる年神とも結び付けられた。年神は地域によって年徳神、正月様などとも呼ばれ、門松や鏡餅は年神を迎えて祀る風習として受け継がれている。ただし、『古事記』の大年神と民俗上の年神を完全に同一の神と断定することはできず、農耕神信仰や祖霊信仰などが重なって現在の信仰が形成されたと考えられる。
大年神は全国の大歳神社や大年神社に祀られ、特に旧播磨国にあたる兵庫県南西部には大歳神社が数多く分布する。これらは地域の農耕や集落を守る氏神として信仰されてきた。また、愛知県名古屋市の伊奴神社などでも主要な祭神として祀られている。
エピソード
『古事記』によれば、大年神は須佐之男命と神大市比売《かむおおいちひめ》の間に生まれた神である。神大市比売は山の神・大山津見神の娘で、須佐之男命との間に大年神と宇迦之御魂神《うかのみたまのかみ》を生んだと記されている。このため、稲荷神として広く信仰される宇迦之御魂神は、大年神の弟または妹にあたる。
大年神の「年」は、単なる時間の一年ではなく、稲をはじめとする穀物の実りや収穫を意味する言葉と考えられている。大年神と宇迦之御魂神がともに穀物と深く結び付くのは、母である神大市比売を含め、この神統が農耕や食物の生成を司る神々として捉えられてきたためである。
ただし、大年神の誕生と系譜が詳しく記されているのは主に『古事記』であり、『日本書紀』には同じ形の系譜は見られない。大年神は物語の中心となって活躍する神ではないが、その子孫には農耕、土地、屋敷、山などに関わる多くの神々が連なっている。
出典・参考:古事記、國學院大學古事記学センター
『古事記』には、大年神が複数の女神との間に多くの神々を生んだことが記されている。伊怒比売《いのひめ》との間には大国御魂神、韓神、曾富理神、白日神、聖神が生まれ、香用比売《かぐよひめ》との間には大香山戸臣神と御年神が生まれた。
さらに天知迦流美豆比売《あめのちかるみずひめ》との間には、奥津日子神、奥津比売命、大山咋神、庭津日神、阿須波神、波比岐神、香山戸臣神、羽山戸神、庭高津日神、大土神が生まれたとされる。奥津日子神と奥津比売命はかまど、大山咋神は山や土地、阿須波神と波比岐神は屋敷や敷地に関わる神として信仰されてきた。
大年神の系譜には、田畑だけでなく、山、屋敷、かまど、土地の境界など、人々の暮らしを支える場所や働きに関係する神が多い。大年神は単独の穀物神というだけでなく、農耕と生活空間を守る神々の祖神としても重要な位置を占めている。また、その子・大山咋神は日吉大社や松尾大社の祭神となり、日吉・日枝・山王信仰や松尾信仰を通じて全国に祀られている。
出典・参考:古事記、日吉大社公式サイト、松尾大社公式サイト
日本では古くから、正月に各家庭へ年神を迎え、その年の豊作や家族の安全を祈る風習が行われてきた。門松は年神を迎える目印、鏡餅は年神への供え物とされ、地域によっては年徳神、正月様、歳徳様などとも呼ばれる。
「年」という言葉には穀物の実りという意味があり、『古事記』に登場する穀物神・大年神は、後世の年神信仰と結び付けて理解されるようになった。農耕社会では、一年の始まりに豊作をもたらす神を迎えることが、その年の暮らしを左右する重要な行事だったのである。年神は祖先の霊と結び付けて説明されることもあり、正月には農耕神、祖霊、家を守る神という複数の信仰が重なっている。
ただし、『古事記』の大年神と、各地の民俗行事で迎えられる年神を、古くから完全に同一の神であったと断定することはできない。古典に記された穀物神としての大年神と、後世に形成された正月の来訪神信仰が結び付き、現在の年神像が形作られたと考えるのが適切である。
出典・参考:古事記、国史大辞典「年神」、民俗学辞典
大年神は、大歳神、大歳大神などの名でも全国の神社に祀られている。特に旧播磨国にあたる兵庫県南西部には、大歳神社や大年神社と称する神社が数多く分布する。これらの神社の多くは集落や田畑に近い場所に鎮座し、地域の氏神、農耕神、五穀豊穣の神として信仰されてきた。
大歳神社が農村に広く祀られた背景には、毎年の稲の実りをもたらす大歳神の性格がある。人々は田植えや収穫、年の変わり目などに神へ感謝と祈りを捧げ、豊作、家内安全、地域の安泰を願った。大歳神社は著名な一社を中心に全国へ勧請された単一の神社系統というより、それぞれの土地で農耕と集落を守る神として祀られてきた性格が強い。
大年神は愛知県名古屋市の伊奴神社などでも主要な祭神として祀られている。また、岐阜県の飛騨一宮水無神社では、大歳神と関係の深い御年大神が水無大神の御神名の一つとして挙げられている。大年神の信仰は大歳神社だけに限られず、地域の農耕や土地を守るさまざまな神社の祭祀に取り入れられている。
出典・参考:兵庫県神社庁、伊奴神社公式サイト、飛騨一宮水無神社公式サイト
出典文献
古事記
先代旧事本紀
延喜式
神格
ご神徳
別称・異称
おおとしのかみ
古事記/先代旧事本紀
大歳神おおとしのかみ
延喜式
大歳主神おおとしぬしのかみ
その他
神様グループ
祀られている主な神社
伊奴神社
(愛知県西区稲生町2丁目12)
飛騨一宮水無神社
(岐阜県高山市一之宮町大野郡宮村字石原5323番地)
石神山精神社
(宮城県大和町吉田字麓71 )
下谷神社
(東京都台東区東上野3-29-8)
母智丘神社
(東京都町田市原町田5-12-11)
