天之御中主神 神社の神様 - 神社ファン

天之御中主神

あめのみなかぬしのかみ

  • 神話・伝説
  • 独神
天之御中主神

玉蘭斎貞秀(神佛図會)

天之御中主神

表記なし

祭神ランキング45位

天之御中主神とは?

天之御中主神は記紀神話に登場する独神である。古事記では天地が初めて現れたとき、高天原に最初に成った神として記される。続いて高御産巣日神、神産巣日神が現れ、この三柱は造化三神と総称される。さらに宇摩志阿斯訶備比古遅神と天之常立神を加えた五柱は別天津神と呼ばれ、いずれも独神として成り、その身を隠したとされる。
古事記では天之御中主神が最初に現れるものの、その後の神話には登場せず、国土やほかの神々を生み出すといった具体的な事績も記されていない。神名は一般に「天の中央を領する主の神」などと解釈される。「中」を天地・宇宙の中心とみることから、後世には宇宙の中心に位置する根源神、万物を統べる最高神などと解釈されるようになった。ただし、こうした神格は古事記に具体的に記されたものではなく、神名や天地開闢の最初に出現することをもとに発展した後世の思想・信仰によるところが大きい。
高御産巣日神と神産巣日神は、その神名に含まれる「ムスヒ」から生成・創造の力を持つ神と考えられている。これに対して天之御中主神は、天地の始まりに最初に現れながら具体的な活動を行わないことから、後世には二柱の産霊神を統べる根源的な存在として捉える思想も生まれた。近世以降の神道説や教派神道などでは特に重視され、宇宙や天地万物の根源に位置する神として説かれることもある。
日本書紀では本文で最初に現れる神は国常立尊であり、天御中主尊は天地開闢を伝える一書第四に、高皇産霊尊、神皇産霊尊とともに登場する。このため、古事記と日本書紀では天之御中主神の位置づけに違いが見られる。
後世には天の中央をつかさどる神という性格から、北極星や北斗七星を神格化した妙見信仰と結びついた。妙見は仏教の妙見菩薩と北極星・北斗七星に対する星辰信仰が習合して広まったもので、天之御中主神と同一視される例が生まれた。明治時代の神仏分離に際して、それまで妙見を祀っていた社の中には、祭神を天之御中主神とした例も見られる。千葉神社(千葉県千葉市)では天之御中主大神を北辰妙見尊星王と同一の神として祀り、秩父神社(埼玉県秩父市)でも祭神の一柱として祀られている。
また、全国総本宮水天宮(福岡県久留米市)や水天宮(東京都中央区)では、天御中主神が安徳天皇、高倉平中宮、二位の尼とともに祀られている。こうした後世の妙見信仰や水天宮信仰との結びつきによって、天之御中主神には星や方位、開運、厄除け、安産、子授け、水難除けなど多様な信仰が形成されている。

エピソード

『古事記』で最初に現れた神
『古事記』は、天地が初めて現れたとき、高天原に成った神として天之御中主神の名を最初に記している。天之御中主神に続いて高御産巣日神、神産巣日神が現れ、この三柱はいずれも独神《ひとりがみ》として成り、その身を隠した。
その後、国土がまだ浮かぶ脂のようで、海月《くらげ》のように漂っていたとき、葦の芽のように萌え上がるものから宇摩志阿斯訶備比古遅神《うましあしかびひこぢのかみ》と天之常立神《あめのとこたちのかみ》が現れる。この二柱も独神として身を隠し、最初の五柱はほかの天津神と区別して別天津神《ことあまつかみ》と呼ばれる。
天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神の三柱は、『古事記』序文の記述に基づいて造化三神《ぞうかさんしん》と総称される。造化とは万物を生成する働きを意味する。ただし、『古事記』本文には、天之御中主神が国土やほかの神々を造ったとは記されていない。
天之御中主神は、日本神話の冒頭に現れながら、言葉を発することも、具体的な行動を起こすこともなく、その後の物語には登場しない。最初に現れ、直ちに身を隠すという短い記述だけが残された、極めて抽象的な神である。

出典・参考:『古事記』、國學院大學「古事記神名データベース・天之御中主神」



『日本書紀』では最初の神ではない
天之御中主神は日本神話で最初に現れた神として知られているが、これは主に『古事記』の記述による。『日本書紀』の本文では、天地が分かれた後、国土がまだ形を整えていないなかで最初に現れた神を国常立尊《くにのとこたちのみこと》としている。
『日本書紀』は天地開闢について、本文とは異なる複数の伝承を「一書に曰く」として収録している。その一書第四には、高天原に生まれた神として天御中主尊、高皇産霊尊《たかみむすひのみこと》、神皇産霊尊《かみむすひのみこと》の三柱が記される。ただし、この伝承でも天御中主尊が天地の最初に現れた唯一の神として描かれているわけではなく、国常立尊や国狭槌尊《くにのさつちのみこと》に続いて名が挙げられている。
『古事記』では天之御中主神が冒頭に単独で現れ、続いて二柱の産巣日神が現れる。一方、『日本書紀』では多数ある天地開闢伝承の一つに、三柱がまとめて登場する。この違いから、天之御中主神を日本神話全体に共通する最初の神と断定することはできない。
記紀は同じ神々を扱いながら、天地の始まりや最初に現れた神を異なる形で伝えている。天之御中主神の位置を説明するときは、『古事記』と『日本書紀』の違いを分けて考える必要がある。

出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學「古事記神名データベース・天之御中主神」




「天の中央の主」という神名
天之御中主神の神名は、一般に「天の中央を領する主の神」という意味に解釈されている。「天」は高天原をはじめとする天上の世界、「御中」はその中央、「主」はあるじとして領有し、支配する存在を表す。
ただし、この神名が示す範囲については複数の考え方がある。高天原の中央を治める神とする説、天地全体の中心に位置する神とする説、万物の生成を支える根源的な神とする説などである。宇宙の根源神や最高神という説明も、この神名と『古事記』で最初に現れた位置をもとに発展した解釈である。
『古事記』本文には、天之御中主神が宇宙を創造したことや、ほかの神々を指揮したこと、すべての神の頂点に立つことは記されていない。天孫降臨や国譲りでは高御産巣日神が命令を下すが、天之御中主神は再び登場しない。
天之御中主神は具体的な姿や物語をもたないため、後世の神道思想では、その抽象性をもとにさまざまな神格が与えられた。宇宙の中心をつかさどる神、万物生成の根源となる神、すべてを統一する神という姿は、古代神話の短い記述をもとに後世に形作られていったものである。

出典・参考:『古事記』、國學院大學「古事記神名データベース・天之御中主神」




妙見信仰と結びついた星の神
天之御中主神は、後世に妙見信仰と結びつき、北極星や北斗七星を象徴する星の神として祀られるようになった。妙見信仰は、北極星を神格化した妙見菩薩に対する信仰であり、中国の道教や仏教、陰陽道などの影響を受けながら日本各地へ広がった。
千葉県千葉市の千葉神社では、北辰妙見尊星王《ほくしんみょうけんそんじょうおう》を天之御中主大神と同じ神として主祭神に祀っている。天の中央を領する主という天之御中主神の神名と、北の空の中心に位置する北極星の性格が重ねられたのである。
妙見信仰は武家からも厚く信仰された。とくに千葉氏や、その一族である相馬氏は妙見菩薩を守護神として崇敬した。相馬氏が治めた福島県の相馬地方では妙見信仰が広まり、相馬中村神社など相馬妙見三社と呼ばれる神社に受け継がれている。
また、相馬氏の流れをくむ北海道札幌市の相馬神社では、天之御中主大神を主祭神として祀っている。このように、妙見菩薩を祀っていた神社のなかには、明治時代の神仏分離を経て、天之御中主神を祭神とするようになった神社がある。
天之御中主神が北極星や北斗七星の神であるという記述は、『古事記』や『日本書紀』には存在しない。星の神としての性格は、古代神話に記された神格ではなく、妙見信仰との習合や神仏分離を通して定着した後世の信仰である。

出典・参考:『古事記』、千葉神社公式サイト「御祭神」、相馬中村神社公式サイト「御由緒」、相馬神社公式サイト「御由緒」、神社ファン「妙見信仰系」




水天宮で安産・子授けの神として祀られる
福岡県久留米市の水天宮は、全国の水天宮の総本宮であり、天御中主神、安徳天皇、高倉平中宮《たかくらたいらのちゅうぐう》、二位の尼《にいのあま》を祀っている。筑後川に面して鎮座し、水難除けや海上安全をはじめ、安産や子授けの神社として信仰されてきた。
東京都中央区の水天宮は、久留米藩主有馬家が文政元年(1818)に久留米から江戸の上屋敷へ御分霊を勧請したことに始まる。現在も久留米の水天宮と同じ四柱を祀り、とりわけ安産や子授けを願う参拝者の信仰を集めている。
『古事記』の天之御中主神には、水や出産に関係する物語は記されていない。水難除けや安産、子授けというご神徳は、天地開闢神話から直接導かれたものではなく、水天宮で受け継がれてきた水天信仰や安徳天皇をはじめとする祭神の伝承と結びついて形成されたものである。
天之御中主神は具体的な働きが記されていない神であるため、祀られる神社の歴史によって異なる性格をもつようになった。妙見信仰では星と方位を守る神、水天宮では水難除けや安産を守る神として信仰されており、古代神話の抽象的な神が後世の信仰によって身近な守護神となったことが分かる。

出典・参考:『古事記』、全国総本宮水天宮公式サイト「御祭神・由来」「御祈願案内」、水天宮公式サイト「水天宮のご案内」



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出典文献

古事記

日本書紀

先代旧事本紀

伊勢国風土記 逸文

古語拾遺

新撰姓氏録

続日本記

神格

宇宙の根源神

ご神徳

安産祈願 長寿祈願 開運招福 出世開運 学業上達 技術向上 海上安全 厄除け 病気平癒 中風病退除 農業守護 養蚕守護

別称・異称

天之御中主神

あめのみなかぬしのかみ

古事記

天御中主尊

あめのみなかぬしのみこと

日本書紀/先代旧事本紀/伊勢国風土記 逸文/日本後紀

天御中主神

あめのみなかぬしのかみ

古語拾遺

天御中主命

あめのみなかぬしのみこと

新撰姓氏録/続日本紀

同一とされる神様

妙見菩薩  

神様グループ

別天津神 

祀られている主な神社

秩父神社
(埼玉県秩父市番場町1-3)
丹内山神社
(岩手県花巻市東和町谷内2区303)
桜神宮
(東京都世田谷区新町3丁目21-3)
水天宮
(福岡県久留米市瀬下町265番ノ1)
日高神社
(岩手県奥州市水沢区日高小路13)