八百万神
やおよろずのかみ
- 神話・伝説
- 集団

祭神ランキング280位
八百万神とは?
八百万神は記紀神話などに登場する神々の総称。特定の一柱を指す神名ではなく、数えきれないほど多く存在する神々を表す言葉である。「八百万」は文字どおり800万を意味するものではなく、「八百」や「万」という大きな数を表す言葉を重ねることで、非常に数が多いことを意味している。
『古事記』では八百万の神々が集まる場面がたびたび描かれている。天照大神が須佐之男命の乱暴な行いを恐れて天の石屋に隠れると、世界は暗闇に包まれ、さまざまな災いが発生した。そこで八百万の神々は天安河原に集まり、思金神の知恵を借りて天照大神を石屋から出す方法を相談した。天児屋命、布刀玉命、天宇受売命、伊斯許理度売命などの神々がそれぞれの役割を果たし、天照大神を再び外へ導いた。この神話では、八百万神は多くの神々が協力して問題を解決する存在として描かれている。
八百万神という言葉は、日本で信仰されてきた神々の多様性とも深く結びついている。記紀神話に登場する神々だけでなく、山や海、川などの自然に関係する神、土地を守る神、祖先神、生活や生業に関係する神など、日本ではさまざまな神々が祀られてきた。そのため八百万神は、こうした無数の神々を広く表す言葉として現在まで用いられている。
後世には、旧暦10月になると全国の神々が出雲へ集まり、縁結びをはじめ人々に関わるさまざまな事柄について神議りを行うという信仰が形成された。一般に旧暦10月を神無月と呼ぶのに対し、神々が集まる出雲では神在月と呼ぶとされ、現在も出雲地方では神在祭が行われている。
島根県出雲市の万九千神社には、出雲へ集まった八百万神が神議りを終えた後に同社へ集まり、直会を行ってそれぞれの鎮座地へ旅立つという伝承がある。八百万神は特定の姿や神格を持つ一柱の神ではなく、日本で祀られてきた数多くの神々そのものを表す存在として信仰されている。
エピソード
『古事記』上巻の天の石屋の段では、天照大神が石屋に隠れると、世界が暗くなり、さまざまな災いが起きたと語られる。そこで八百万神は天安河原に集まり、思金神に策を考えさせた。神々は鏡や玉を作らせ、祝詞を奏上し、天宇受売命が舞うなど、神々の力を結集して天照大神を外へ誘い出そうとする。天照大神が石屋の戸を少し開けたところ、天手力男神がその手を取って外へ導き、世界に光が戻った。
この場面の八百万神は、個別の神名をもつ一群というより、問題解決のために集まった多くの神々を表す。物語では、思金神の計画、祭具や祝詞、舞、力による働きかけが組み合わされ、災いを鎮める。神々が集まって相談し、それぞれ異なる役割を担う姿は、八百万神という表現が示す神々の多様さを具体的に伝えている。
出典・参考:『古事記』上巻「天の石屋戸」、國學院大學古典文化学事業「思金神」
『古事記』の国譲り神話では、高天原の神々が天安河の河原に集められ、葦原中国を誰に治めさせるかが議論される。天照大神と高御産巣日神の命を受けた神々は、思金神の案をもとに使者を地上へ派遣する。使者との交渉を経て、最後には建御雷神が出雲へ赴き、大国主神に国を譲るよう求めた。物語は、国を譲る条件や大国主神の子である事代主神の意向にも触れ、国譲りの決定へ進んでいく。
ここでも八百万神は、特定の神々の固定された名簿ではなく、高天原の神々が集まって決定を行う場面を表している。天の石屋の段では災いを鎮めるために集まり、この段では地上の統治をめぐって相談する。どちらも神々の集議を描くが、国譲り神話は高天原側と葦原中国側の交渉や、統治権の移り変わりを物語の中心に据えている。なお、『日本書紀』には本文のほか複数の異伝があり、登場する神や展開は『古事記』と同一ではない。
出典・参考:『古事記』上巻「葦原中国平定」、國學院大學古典文化学事業「葦原中国平定①」
出雲地方では、旧暦10月に全国の神々が出雲へ集まるという神在月の信仰が伝わる。出雲大社では神迎神事・神迎祭で神々を迎え、神在祭の期間に神議りが行われるとされる。神在祭を終えた神々は、出雲市の万九千神社に立ち寄り、神議りを締めくくる直会をしたのち、各地へ帰るという。同社では、この旅立ちに関わる神事を神等去出《からさで》と呼んでいる。
万九千神社の由緒では、八百万神は同社の祭神としても祀られており、神在祭の最後に立ち寄る神々として信仰されている。これは『古事記』の天の石屋や国譲りに描かれた神々の集議とは異なる、出雲地方で受け継がれてきた祭礼と神社の由緒である。全国の神々が実際に一堂に会する事実を示すものとしてではなく、神在祭を中心に地域で形づくられてきた信仰として捉えたい。万九千神社では大穴牟遅命や少彦名命とともに八百万神を祀り、神々の滞在と旅立ちを伝えている。
出典・参考:万九千神社「ご由緒」「神在祭・神等去出祭」、出雲大社「令和7年 八百萬の神々と共に~神在祭~」
ご神徳
ご神徳は不明です。
別称・異称
やそがみ
その他
八十万神やそよろずのかみ
その他
千万神ちよろずのかみ
その他
祀られている主な神社
初嶋大神宮
(兵庫県尼崎市築地2丁目6−17)
万九千神社
(島根県出雲市斐川町併川258)
萩原稲荷神社
(大分県大分市萩原1丁目14−25)
宗忠神社
(北海道岩見沢市栄町5丁目7-82)
萬神社
(岐阜県大野町公郷988番地)
