ネサク 神社の神様 - 神社ファン

ネサク

ねさく

  • 神話・伝説
  • 女神・女性らしい

祭神ランキング110位

ネサクとは?

ネサクは記紀神話に登場する神である。古事記では根析神、根拆神、日本書紀では根裂神などと表記される。性別について記紀には明確な記述がなく、女神と断定することはできない。
古事記では、イザナギが妻イザナミの死の原因となった火の神カグツチを十拳剣で斬った際、その剣先についた血が岩群にほとばしり、そこから石拆神、根拆神、石筒之男神の三柱が生まれたとされる。さらに刀の根元についた血から甕速日神、樋速日神、建御雷之男神が生まれるなど、カグツチを斬った刀とその血から多くの神々が誕生している。
日本書紀にもカグツチを斬ったことによって磐裂神と根裂神が生まれる伝承があり、さらに異伝では磐裂根裂神の子として磐筒男と磐筒女が生まれ、その子として経津主神が誕生したとされる。経津主神は刀剣や武威と深く関係する神であり、この系譜からもネサクはイワサクとともに剣の霊威に関係する神として捉えられてきた。ただし、日本書紀はイワサクとネサクを夫婦神とは明記していない。
神名の「根裂」は、根を裂くほどの強大な力を表すと考えられている。岩を裂くイワサクと対をなし、岩や木の根をも切り裂く剣の鋭さや威力を神格化した神とする説があるほか、木の根を裂くほどの雷の力を表した神とする説もある。また、カグツチを刀で斬った際に生まれたことや、経津主神へとつながる日本書紀の系譜から、刀剣や武神との関係も指摘されている。農耕や鉱業との関係を説く見方もあるが、こうした神格が記紀に直接記されているわけではない。
ネサクはイワサクとともに祀られることが多く、後世の神社信仰では五穀守護、農業守護、武運、剣術上達、健康長寿、無病息災、開運招福などのご利益があるとされる。
ネサクを祀る代表的な神社に加蘇山神社(栃木県鹿沼市)や磐裂根裂神社(栃木県下都賀郡壬生町)がある。加蘇山神社ではイワサク、ネサク、タケミカヅチが五穀守護・武勇の神として祀られている。また赤星神社(愛知県名古屋市)では根裂尊を祀っている。赤星は明けの明星である金星を意味するとされるが、神社名とネサクとの関係については明確ではない。

エピソード

剣先の血から生まれた根を裂く神
『古事記』によれば、イザナミは火の神カグツチを生んだことで重い火傷を負い、神避りした。妻の死を悲しんだイザナギは、腰に帯びていた十拳剣でカグツチの首を斬った。この剣は天之尾羽張、またの名を伊都之尾羽張という。
その剣先についた血が湯津石村《ゆついわむら》と呼ばれる岩の群れにほとばしり、最初に石析神、次に根析神であるネサク、続いて石筒之男神が生まれた。さらに剣の根元についた血から甕速日神、樋速日神、建御雷之男神が生まれ、柄に集まった血からは闇淤加美神と闇御津羽神が生まれている。ネサクは、カグツチの体そのものからではなく、カグツチを斬った剣に付着した血から化成した神なのである。
ネサクは常にイワサクと並んで現れ、その名は岩の根を切り裂くほどの剣の力を表すと解釈されている。また、岩と木の根をそれぞれ裂く力と捉え、落雷の激しさを神格化した神とする説もある。ただし記紀にはネサクの働きや性格を説明する物語はなく、剣神・雷神という神格は誕生場面と神名から導かれた解釈である。火神の血が剣と岩に触れて生まれたことが、ネサクを鋭い力や岩石に関わる神として理解する基礎となっている。

出典・参考:『古事記』上巻「伊耶那美命の死」、『日本書紀』神代上第五段一書、國學院大學古典文化学事業「根析神」



イワサクと夫婦神なのか―経津主神へ続く異伝
『古事記』では、剣先の血からイワサク、ネサク、石筒之男神の順に三柱が生まれる。それぞれが同じ血から化成した神として列挙されており、イワサクとネサクが夫婦であるとも、石筒之男神が二神の子であるとも記されていない。ネサクの系譜を考える際には、この『古事記』の記述と『日本書紀』の異伝を分ける必要がある。
『日本書紀』神代上第五段の一書にも、磐裂神、根裂神、磐筒男命が生まれたとする記述がある。一方、国譲り神話が語られる神代下第九段では、経津主神の系譜について、磐裂根裂神の子である磐筒男と磐筒女から生まれた神であると記している。ここでは磐裂と根裂を連ねて一体の神名のように表記しており、別々の二神を指すのか、一体化した神を指すのかについても解釈が分かれる。
この記述からネサクをイワサクの妻、磐筒男と磐筒女命の母と説明する例もあるが、『日本書紀』はネサクの性別や両神の婚姻を明記していない。確実にいえるのは、ネサクが磐裂神や磐筒の神々を介し、国譲りで武威を示す経津主神の祖神に位置付けられていることである。剣の血から生まれたネサクが、刀剣と武威に関わる神の系譜へ組み込まれている点に、『日本書紀』独自の展開が見られる。

出典・参考:『古事記』上巻「伊耶那美命の死」、『日本書紀』神代上第五段一書・神代下第九段、國學院大學古典文化学事業「根析神」



石裂山で山岳神として祀られたネサク
栃木県鹿沼市の石裂山《おざくさん》に鎮座する加蘇山神社では、ネサクはイワサク、タケミカヅチと共に主祭神として祀られている。石裂山は標高879mの険しい岩山で、古くから山岳信仰の対象とされてきた。山の中腹には岩窟があり、近世の地誌にも石裂神と根裂神を祀る場所があったと記されている。岩を裂くという神名を持つ二神が、奇岩や岩窟のある山の信仰と結び付いた例である。
社伝では、神護景雲年間に日光を開いた勝道上人が山を開いたとされる。『日本三代実録』元慶2年(878)9月16日条には、下野国(栃木県)の賀蘇山神社へ従五位下を授けた記事がある。ただし、この賀蘇山神社が現在の加蘇山神社と、石裂山の南麓にある賀蘇山神社のどちらを指すかは確定していない。後世には源頼義や地域の武将が戦勝を祈願したとの伝承もあり、現在は三柱を五穀守護・武勇の神として祀っている。
栃木県壬生町の磐裂根裂神社でも、イワサクとネサクが並んで主祭神となっている。同社では健康長寿、無病息災、病気平癒、家内安全、厄除けなどの神徳が掲げられている。記紀のネサクには独立した活躍が記されていないが、栃木県ではイワサクと一組になり、岩山を守る山岳神、五穀と武勇を守護する神、生活の安寧をもたらす神として信仰が発展したのである。


スポンサーリンク

出典文献

古事記

日本書紀

神格

剣の神 生命力の神

ご神徳

開運長寿

別称・異称

根拆神

ねさくのかみ

古事記

根裂神

ねさくのかみ

日本書紀

関連する神様

イワサク 

神様グループ

イワサク・ネサク 

祀られている主な神社

磐裂根裂神社
(栃木県壬生町安塚1772)
星宮神社
(栃木県佐野市大蔵町2928)
星宮神社
(栃木県下野市下古山1553)
星宮神社
(栃木県栃木市平柳町1丁目23番26号)
劔神社
(福岡県直方市下新入2565)