足産日神
たるむすひ
- 神話・伝説
- 不明

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング229位
足産日神とは?
足産日神は『古語拾遺』『延喜式』などに登場する神。足産霊神、足産霊などとも表記され、宮中で天皇を守護する御巫八神《みかんなぎはっしん》の一柱として祀られてきた。『古語拾遺』には、神武天皇の時代に天照大神と高皇産霊尊の神意を受けて神籬《ひもろぎ》を立て、神産日神、高御産日神、玉積産日神、生産日神、足産日神、大宮売神、御食津神、事代主神の八神を祀ったとする伝承がみえる。後世、この八神は神祇官西院の八神殿に祀られ、『延喜式』にも宮中祭祀の重要な神々として記されている。明治維新後には宮中三殿の神殿に受け継がれ、現在につながる宮中祭祀の神々となった。
神名の「足」は、満ち足りる、十分に備わるという意味を持ち、「産日《むすひ》」は生命や万物を生み育てる霊妙な力を表すと考えられている。このことから足産日神は、生命力を満たし、物事を不足なく成長させ、天皇の身体と宮中の安泰を守護する神と解釈されている。記紀には独立した神話や系譜を持たず、その神格は宮中の八神祭を中心に伝えられてきた。
また、『先代旧事本紀』にみえる十種神宝《とくさのかんだから》の一つ、足玉《たるたま》と結びつけ、足産日神をその霊威を神格化した神とみる説もある。ただし、『先代旧事本紀』が足産日神と足玉を直接同一の存在として記しているわけではなく、神名と神宝の名称・性格をもとにした後世の解釈である。
足産日神は石上神宮摂社の七座社などで祀られている。八神は宮中祭祀の神々として信仰される一方、各地でも八神をまとめて祀る例がみられ、足産日神も生命力、成長、充足、身体健全などを司る神として信仰されている。
エピソード
足産日神《たるむすひのかみ》は、宮中で祀られた御巫八神《みかんなぎはっしん》の一柱である。『延喜式』神名帳には、神祇官西院に祀られる神として、カミムスビ、タカミムスビ、玉積産日神、イクムスビ、足産日神、大宮売神、御食津神、事代主神の八座が記されている。これらは天皇の身体や生命、宮廷生活を守護する重要な神々であった。
御巫は宮中祭祀に奉仕した女性で、御巫八神の祭祀を担当した。足産日神は記紀神話で具体的な物語を持つ神ではないが、宮中祭祀の実務においては明確な位置を与えられていた。神話上の活躍ではなく、天皇の生命と宮中の安泰を支える祭祀神として信仰された神である。
出典・参考:『延喜式』巻第九・神名帳、『延喜式』巻第一・四時祭、宮地直一『神祇史綱要』
足産日神の「足」は、手足ではなく、物事が十分に備わる、満ち足りるという意味の「足る」と解される。「産日」「産霊」と表記されるムスヒは、生命や物事を生み出し、成長させ、結び合わせる霊力を表す。足産日神は、生命を不足なく完成させ、身体や働きを充実させる神と考えられている。
御巫八神には、生成を担うカミムスビとタカミムスビ、生命力を生み出すイクムスビなど、ムスヒの名を持つ神が複数含まれる。足産日神もその一柱として、天皇の生命力を満たし、宮廷の秩序を完成させる役割を担ったとみられる。ただし、記紀には独立した系譜や神話が記されておらず、他のムスヒ神と同一神と断定することはできない。
出典・参考:『延喜式』神名帳、西宮一民編『古事記』、國學院大學日本文化研究所編『神道事典』
古代の御巫八神は神祇官西院で祀られていたが、律令制の衰退とともに祭祀のあり方も変化した。その後、宮中で祀られる神々は整理され、現在の宮中三殿の一つである神殿には、天神地祇が祀られている。足産日神を含む御巫八神の祭祀は、古代とまったく同じ形式のまま続いたわけではないが、皇室と国家を守る神々を宮中で祀る伝統へつながっている。
足産日神を祀る神社は、広く知られた神話神に比べて多くない。これは神格が低いからではなく、もともと宮中祭祀を中心とする神であったためである。足産日神は、古代国家が天皇の生命と宮廷の安泰をどのような神々へ祈ったのかを伝える重要な祭祀神である。
出典・参考:『延喜式』、宮内庁『宮中祭祀』、岡田荘司『日本神道史』
出典文献
延喜式
古語拾遺
ご神徳
ご神徳は不明です。
別称・異称
たるむすひのかみ
延喜式
足魂たるむすひ
延喜式
足産霊たるむすひ
古語拾遺
足留産霊命たるつめむすひのみこと
その他
神様グループ
祀られている主な神社
大宮神社
(和歌山県岩出市宮75番地)
八所神社
(山形県川西町大字吉田字先達前3023-1)
御霊神社
(福島県川俣町字大作18)
御霊神社
(神奈川県藤沢市羽鳥1062)
八所社
(新潟県小千谷市大字塩殿甲710番地)
