シナトベ 神社の神様 - 神社ファン

シナトベ

しなとべ

  • 神話・伝説
  • 女神・女性らしい
シナトベ

玉蘭斎貞秀(神佛図會)

祭神ランキング103位

シナトベとは?

シナトベは日本書紀などに登場する風の神である。日本書紀の一書では級長戸辺命と記され、またの名を級長津彦命というとされる。古事記にはシナトベの名では登場せず、神産みの段で風の神としてシナツヒコが生まれている。このため記紀神話上ではシナトベとシナツヒコは同じ神格と考えられるが、後世の神社信仰ではシナトベを女神、シナツヒコを男神として二柱一対で祀る例も見られる。
日本書紀では、イザナギとイザナミが大八洲国を生んだ後、国中に朝霧が満ちていたため、イザナギが息を吹いて霧を払ったところ、その息が神となったのが級長戸辺命であるとする。そして別名を級長津彦命といい、風の神であることが明記されている。一方、古事記ではイザナギとイザナミによる神産みの中でシナツヒコが生まれており、こちらも風を司る神として位置づけられている。
シナトベの性別については一定していない。日本書紀では級長戸辺命と級長津彦命を別名関係としているが、後世には神名の「ベ」を女性を表す語と解釈し、シナトベを女神、シナツヒコを男神とする考え方が広がった。神社によっては二柱を男女一対の風神として祀っている。ただし、記紀そのものが二柱を夫婦や兄妹と記しているわけではない。
神名の「シナト」についても諸説がある。「シナ」を風、「ト」を場所や入口とみて風の起こる場所や風の通り道を意味するとする説や、長く吹く風に由来するとする説などがあり、いずれも風を司る神格と深く関係している。
風は稲作に必要な雨雲を運ぶ一方、暴風となれば農作物や人々の生活に大きな被害をもたらす。そのためシナトベはシナツヒコとともに風雨を調節し、農作物を守る神として信仰された。また風を利用して航行する船にとっても重要な神であり、航海や漁業を守る神としても崇敬されてきた。後世には「風」と「風邪」を結びつけて悪疫退散や病気平癒を願う信仰も生まれ、現代では風や空に関わる神として航空安全を祈願する信仰も見られる。
伊勢神宮では内宮の風日祈宮、外宮の風宮に級長津彦命と級長戸辺命がともに祀られている。特に元寇の際に神風を起こして日本を守ったという信仰が生まれ、風神への崇敬が高まった。風日祈宮はもとは風神社と呼ばれていたが、元寇後の正応6年(1293)に現在の名へ改められ、別宮へ昇格したと伝えられている。
シナトベのご利益は風雨調和、五穀豊穣、農業守護、漁業守護、海上安全、航空安全、悪疫退散、縁結びなどとされる。代表的な神社には姉埼神社(千葉県市原市)があり、志那斗弁命の名で主祭神として祀られている。このほか伊勢神宮の風日祈宮・風宮などでシナツヒコとともに祀られている。

エピソード

朝霧を吹き払った息から生まれた風神
『日本書紀』の一書によれば、イザナギとイザナミが大八洲国を生み終えたころ、国の中には朝霧が立ち込めていた。イザナギは、国が朝霧ばかりで満ちていると言い、その霧を吹き払うように息を放った。すると、その息が神となり、級長戸辺命、すなわちシナトベになったという。さらに同じ箇所には、別名を級長津彦命、すなわちシナツヒコといい、この神は風の神であると記されている。目に見えない人の息が空気を動かし、霧を散らす風へ変わるという、風の性質を端的に表した誕生譚である。一方、『古事記』ではイザナギとイザナミの神産みによって志那都比古神が生まれるが、シナトベという名は記されない。したがって、シナトベ固有の誕生譚として確認できるのは『日本書紀』の記述であり、古典ではシナツヒコの別名として位置づけられている。

出典・参考:『日本書紀』巻第一 神代上 第六段一書、『古事記』上巻 神生み、國學院大學「神名データベース 志那都比古神」



シナツヒコと同じ神であり、男女一対の神でもある
『日本書紀』は級長戸辺命について、またの名を級長津彦命というと記している。この記述に従えば、シナトベとシナツヒコは本来同じ風神の異名である。しかし、神名に含まれる「ヒコ」は男性を示す語であり、「ベ」は女性を表す語と解釈されることがある。このため後世には、シナツヒコを男神、シナトベを女神として分け、夫婦または男女一対の風神とみなす信仰が成立した。伊勢神宮の風日祈宮と風宮では級長津彦命と級長戸辺命の二柱を祭神とし、姉埼神社では女神である志那斗弁命を主祭神として、シナツヒコの妻神とする社伝を伝えている。つまり、古典の文章では一柱の神、神社信仰では二柱の男女神という、二つの捉え方が併存しているのである。どちらか一方を誤りとするのではなく、記紀神話から各地の祭祀へ展開する過程で、風神の姿が分化したものと考えるのが適切である。

出典・参考:『日本書紀』巻第一 神代上 第六段一書、伊勢神宮公式サイト「風日祈宮」「風宮」、姉埼神社公式サイト「御由緒」、國學院大學「神名データベース 志那都比古神」



元寇の神風によって信仰を高めた風の神
伊勢神宮では、内宮の風日祈宮と外宮の風宮にシナトベとシナツヒコが祀られている。両宮はもともと風神社と呼ばれ、農作物を育てる風雨が穏やかであることや、五穀が豊かに実ることを願う社であった。風は稲を育てる雨雲を運ぶ一方、暴風となれば田畑や家屋、航海中の船に大きな被害を与える。そのため風神は、良い風を送り、荒ぶる風を鎮める神として祀られたのである。鎌倉時代の元寇では、敵船を退けた暴風が伊勢の風神の神威によるものと信じられた。この信仰を背景として、風日祈宮と風宮は正応六年、すなわち一二九三年に別宮へ昇格したと伝えられる。幕末の文久三年にも、朝廷が両宮で十五日間にわたる祈願を行わせている。ただし、元寇の暴風をシナトベが実際に起こしたという意味ではなく、国家的な危機を退けた風を神の加護として受け止めた信仰上の伝承である。

出典・参考:伊勢神宮公式サイト「風日祈宮」「風宮」、伊勢志摩観光ナビ「風日祈宮」、神宮司庁編『お伊勢まいり』



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出典文献

日本書紀

先代旧事本紀

神格

風の神

ご神徳

風雨調和 五穀豊穣 農漁業守護 海上安全 航空安全 悪疫退散 縁結び

別称・異称

級長戸辺命

しなとべのみこと

日本書紀

級長戸辺神

しなとべのかみ

先代旧事本紀

志那津姫神

しなつひめのかみ

その他

志那津比売命

しなつひめのみこと

その他

志那津比女神

しなつひめのかみひめのかみ

その他

志那津毘女命

しなつひめのみこと

その他

志那都比売命

しなつひめのみこと

その他

志那都比女神

しなつひめのかみ

その他

級津姫命

しなつひめのみこと

その他

級津比売神

しなつひめのかみ

その他

級長津姫命

しなつひめのみこと

その他

同一とされる神様

シナツヒコ  

関連する神様

国御柱神 

祀られている主な神社

御前姫神社
(宮城県涌谷町猪岡短台字大谷地54 )
小物忌神社
(山形県酒田市飛島字中村甲178)
小物忌神社
(山形県酒田市山楯字三之宮48)
鹿島御子神社
(福島県南相馬市鹿島区鹿島字町199)
風天神社
(群馬県藤岡市小林838番地1)