菊理媛神
くくりひめのかみ
- 神話・伝説
- 女神・女性

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング22位
菊理媛神とは?
菊理媛神は日本書紀に登場する女神である。菊理比咩神、菊理比売神などの異名を持ち、白山比咩大神と同一視される。しかし、何故同一視されるようになったかは定かでない。
日本書紀の一書には、菊理媛神の逸話が記されている。神産みによって亡くなったイザナミを黄泉の国まで迎えに行ったイザナギは、変わり果てたその姿を見てしまう。黄泉平坂で二神が言葉を交わす場面に泉守道者が現れ、続いて菊理媛神が何かを語ると、イザナギはその言葉を褒め、その場を去ったと伝えられる。
日本書紀には菊理媛神が何を語ったのかは記されていない。そのため、イザナギとイザナミを仲裁して和解させたと断定することはできないが、後世には二神の間を取り持った神と解釈され、縁結びや夫婦円満などの信仰とも結びついていった。
菊理媛神の正体については諸説あり、イザナギとイザナミの娘であるとも、黄泉の国でイザナミに関わる女神であるともいわれる。また、神名のククリを物事を括る、まとめることと結びつける説もあり、こうした解釈から調和や縁を結ぶ神としても信仰されている。
菊理媛神は後世、白山の神である白山比咩大神と同一視され、白山信仰の中心的な神となった。白山比咩神社では白山比咩大神とともにイザナギ、イザナミを祀っており、全国各地の白山神社でも三柱を祀る例が多く見られる。古典上の菊理媛神と、白山信仰の中で形成された白山比咩大神としての姿を分けて見ることが重要である。
これらのことから、菊理媛神のご利益は五穀豊穣、夫婦円満、縁結び、農産牛馬守護、商談成立、安産守護、子育て、家内安全、開運除災、交通安全、受験合格などとされる。
菊理媛神は白山比咩神社(石川県白山市)をはじめ、全国各地の白山神社で広く祀られている。
エピソード
ククリヒメは『日本書紀』に登場する女神である。しかし、その登場は本文ではなく、イザナギとイザナミが黄泉の国で別れる場面を伝える一書に限られている。
亡くなったイザナミを追って黄泉へ向かったイザナギは、変わり果てた妻の姿を見て逃げ出す。黄泉比良坂まで追ってきたイザナミとの間で言葉を交わした後、泉守道者がイザナミの言葉を伝え、続いてククリヒメが何かを語った。イザナギはそれを褒め、その場を去ったと記されている。
ところがククリヒメがどこから現れた神なのか、その系譜や役割は記されていない。『古事記』にも登場せず、『日本書紀』でもこの場面以外には姿を見せない。後世に大きな信仰を集める神でありながら、記紀に残された記述は極めて少ない謎の神である。
出典・参考:『日本書紀』、白山比咩神社
『日本書紀』で菊理媛神が登場するのは、イザナギとイザナミが黄泉比良坂で別れる重要な場面である。
ところが、『日本書紀』は菊理媛神が何を語ったのかを記していない。ただ菊理媛神が何かを申し上げ、それを聞いたイザナギが褒めたことだけが記されている。そのため、二神の仲裁をした、イザナギに何らかの助言を与えたなど、後世さまざまに解釈されるようになった。
現在の白山比咩神社でも、黄泉の国で言い争うイザナギとイザナミの前に現れて仲裁した神として菊理媛神を説明している。しかし、菊理媛神が実際にどのような言葉を告げたのかは分からない。
神話の重要な場面に現れながら、その言葉そのものが残されていないことが、菊理媛神という神を一層神秘的な存在にしている。
出典・参考:『日本書紀』、白山比咩神社
現在、菊理媛神は縁結びや和合の神として信仰されている。その背景には、黄泉比良坂でイザナギとイザナミの間に現れたという『日本書紀』の伝承がある。
ただし、『日本書紀』には菊理媛神が「縁結びの神」であるとも、二神を仲直りさせたとも記されていない。二神の間で何かを語り、それをイザナギが褒めたことが記されているだけである。
後世にはこの場面が二神を仲裁したものと解釈され、さらに「ククリ」という神名も、人と人との縁を「括る」「結ぶ」ことと重ねられるようになった。白山比咩神社でも、菊理媛神を和合や縁結びにつながる神として信仰している。
菊理媛神の縁結びの神格は、記紀に明記されたものではなく、わずかに残された神話と神名の解釈が後世の信仰の中で重なりながら形成されてきたものと見ることができる。
出典・参考:『日本書紀』、白山比咩神社、新潟総鎮守 白山神社
現在、白山比咩神社では白山比咩大神を菊理媛尊として祀っており、白山信仰では両者は同じ神として広く扱われている。全国各地の白山神社でも、菊理媛神を祭神とする神社が数多く存在する。
しかし、『日本書紀』に登場する菊理媛神には白山との関係がまったく記されていない。黄泉比良坂でイザナギとイザナミの間に現れるだけで、白山の神であるとも山の神であるとも説明されていない。
一方、白山では古くから霊峰そのものを神聖視する信仰が育まれ、その神は白山比咩大神として祀られてきた。後世、この白山の女神と『日本書紀』に登場する菊理媛神が同一視されるようになったが、両者がいつ、どのような理由で結びついたのかは明確ではない。
そのため、白山比咩大神と菊理媛神を記紀の時代から同じ神だったと考えるのではなく、別々の由来を持つ神が後世の白山信仰の中で重なり、現在では同じ神として祀られていると捉えると分かりやすい。
出典・参考:『日本書紀』、白山比咩神社
『日本書紀』では黄泉比良坂に一度だけ登場する菊理媛神が、なぜ白山を代表する神になったのか。その経緯には、現在も明らかでない部分が残されている。
白山は石川県・福井県・岐阜県にまたがる霊峰で、古くから山そのものが神聖視されてきた。白山比咩神社では白山を神体山として仰ぎ、白山比咩大神を祀っている。
一方、『日本書紀』の菊理媛神には白山に鎮まったという神話も、白山を支配するという記述もない。白山比咩大神と菊理媛神が結びついた時期や理由については諸説があり、一つに定めることは難しい。
それでも後世には両者の同一視が定着し、現在では白山比咩神社をはじめ全国各地の白山神社で菊理媛神が白山の神として祀られている。原典では白山との関係が見えない神が、長い信仰の歴史の中で霊峰白山を代表する女神となったことは、菊理媛神を理解するうえで重要な特徴である。
出典・参考:『日本書紀』、白山比咩神社
白山信仰が大きく展開する契機となった人物が、奈良時代の僧・泰澄《たいちょう》である。
白山比咩神社では、養老元年(717)に泰澄が白山を開山し、翌年には山頂に奥宮を祀ったと伝えている。白山は山岳信仰と仏教が結びつく霊山として発展し、その信仰は北陸から全国各地へ広がっていった。
こうした白山信仰の広がりとともに、白山比咩大神と同一視された菊理媛神も各地で祀られるようになった。白山系の神社では菊理媛神を中心に、イザナギ・イザナミをあわせて祀る祭神構成が広く見られる。
『日本書紀』ではわずか一度しか登場しない菊理媛神が、現在では多くの神社で祀られる神となっている。その大きな背景にあるのが、菊理媛神自身の記紀神話の広がりというより、白山比咩大神との同一視と、全国へ展開した白山信仰である。
出典・参考:白山比咩神社、石川県神社庁
白山系の神社では、菊理媛神だけでなく、イザナギとイザナミをあわせて祀る祭神構成が広く見られる。白山信仰の中心である白山比咩神社でも、白山比咩大神である菊理媛神とともにイザナギ・イザナミを祀っている。
この三神を結びつける神話が、『日本書紀』一書に記された黄泉比良坂の物語である。菊理媛神が記紀に登場する唯一の場面で、その前にいるのが黄泉の国で別れることになったイザナギとイザナミである。
原典には菊理媛神が二神を仲直りさせたとは記されていないが、後世には二神の間を仲裁した神と解釈されるようになった。菊理媛神とイザナギ・イザナミの三神は、この黄泉神話を通じて深く結びつけられていった。
そして、この三神の組み合わせは白山比咩神社だけに限られたものではない。各地へ広がった白山信仰の中でも受け継がれ、白山系の神社に特徴的な祭神構成の一つとなっている。『日本書紀』に残されたわずかな三神の接点が、後世の白山信仰では実際の祭神構成として大きく展開したのである。
出典・参考:『日本書紀』、白山比咩神社、石川県神社庁
出典文献
日本書紀
神格
ご神徳
別称・異称
きくりひめのかみ
日本書紀
久久理比咩命くくりひめのみこと
その他
久久理比売命くくりひめのみこと
その他
喜久理比売神きくりひめのかみ
その他
岐久理姫命きくりひめのみこと
その他
岐久理媛命きくりひめのみこと
その他
岐久理毘売能命きくりびめのみこと
その他
菊久理毘売命きくりびめのみこと
その他
菊理姫くくりひめ
その他
菊理比咩命くくりひめのみこと
その他
菊理比売命くくりひめのみこと
その他
菊理比女命くくりひめのみこと
その他
菊理毘売命きくりひめのみこと
その他
菊里姫神くくりひめのかみ
その他
関連する神様
祀られている主な神社
白山神社
(新潟県中央区一番堀通町1番地1)
石浦神社
(石川県金沢市本多町3丁目1-30)
白山比咩神社
(石川県白山市三宮町ニ105-1)
白山神社
(東京都文京区白山5-31-26)
木ノ下白山神社
(宮城県若林区木ノ下3-9-1 )

