甕速日神
みかはやひ
- 神話・伝説
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甕速日神とは?
甕速日神は記紀神話などに登場する神。『古事記』では甕速日神、『日本書紀』でも甕速日神と記され、火神カグツチを斬った際に生じた血から誕生した神とされる。タケミカヅチと極めて近い関係を持つ神でもある。
『古事記』では、イザナミが火之迦具土神を産んだ際に火傷を負って亡くなったため、イザナギは怒って十拳剣でカグツチの頸を斬った。その剣の本に集まった血から甕速日神、樋速日神、建御雷之男神の3柱が生まれたと記されている。建御雷之男神は建布都神、豊布都神とも呼ばれ、後に葦原中国の国譲りで重要な役割を果たすタケミカヅチである。このため甕速日神は、タケミカヅチと同じカグツチの血から生まれた神として位置づけられている。
『日本書紀』にもカグツチを斬った際に神々が誕生する伝承があるが、その内容は『古事記』とは異なる。神代巻の一書では、カグツチを斬った際に生じた血から甕速日神が生まれ、次に熯速日神が生まれ、その熯速日神の子として武甕槌神が生まれたとする系譜が記されている。『古事記』では甕速日神、樋速日神、建御雷之男神が同じ場面で生まれるのに対し、『日本書紀』の一書では甕速日神から武甕槌神へとつながる系譜として描かれている。
神名の「甕」については酒や水などを入れる土器の甕に関係するとする説のほか、強い霊威や厳しい性質を表す語とみる説などがある。「速日」についても強く激しい霊威を表すと考え、カグツチの血から誕生し、タケミカヅチと密接な関係を持つことから、火や雷の激しい力に関係する神とみる説がある。一方、甕を土器と結びつける解釈から土器や農耕との関係を考える説もあるが、記紀には甕速日神が土器や農耕を司るとする具体的な事績は記されておらず、その神格については諸説ある。
奈良県高市郡高取町の波多甕井神社には甕速日命を祭神とする伝承や資料がある。一方で天照大神を祭神とする記録もあり、祭神については資料によって異なる伝承が伝えられている。
エピソード
『古事記』では、イザナミがカグツチを生んで亡くなった後、イザナギがその頸を斬る。刀の根元についた血が湯津石村に至って生まれた三神のうち、第一が甕速日神である。続いて樋速日神、建御雷之男神が生まれたと記される。甕速日神は、火神を斬るという出来事に続いて、剣と血、岩から生まれる神々の一柱として登場する。
『日本書紀』神代上第五段の一書第六にも甕速日神が現れるが、神名の表記や誕生の順序には違いがある。記紀の記述を一つの筋書きにまとめず、それぞれの伝承として読む必要がある。神名の「甕」を土器と解し、土器や農耕の神とする説もあるが、神名の意味や神格は定まっていない。國學院大學の解説では、雷神の性格を認める説のほか、火の鎮圧や刀剣の製作などに結び付ける解釈も紹介されている。
出典・参考:『古事記』上巻「伊耶那美命の死」、『日本書紀』神代上第五段一書第六、國學院大學古典文化学事業「甕速日神」
『日本書紀』神代上第五段の一書第六は、刀の鐔に垂れた血から甕速日神、熯速日神、武甕槌神が生まれたと記し、甕速日神を武甕槌神の祖とする。これは、甕速日神を剣の血から生まれた神として語るだけでなく、後に国譲りの場面などに登場する武甕槌神につながる系譜に置く伝承である。
一方、『古事記』は甕速日神と樋速日神、建御雷之男神を同じ場面で生まれた神々として記すが、甕速日神を武甕槌神の祖とする系譜は述べない。『日本書紀』の一書は、同じ神々の誕生譚にも複数の伝え方があることを示している。甕速日神と武甕槌神の関係を、記紀に共通する確定した系譜として扱わず、異伝の一つとして捉えることが大切である。
出典・参考:『日本書紀』神代上第五段一書第六、國學院大學古典文化学事業「甕速日神」
奈良県高取町の波多甕井神社は、甕速日命を祭神とする神社として紹介されることがある。高取町観光ガイドも甕速日命を祭神として挙げる一方で、『大和志』や棟札、江戸時代の『高市郡神社誌』には天照大神を祀る、または天照大神社と称した記録があると説明している。『日本歴史地名大系』も、明治期の神社明細帳には甕速日神とある一方、現在は天照大神を祀ると記している。
このように、波多甕井神社と甕速日神の結び付きは案内や時代によって記述が異なる。神社の名に「甕」が含まれることだけから、甕速日神を古くから一貫して祀ってきたと判断することはできない。甕速日神の祭神分布を紹介する際には、同社を祭神の確定した例として扱わず、伝わる祭神表記の違いも併記する必要がある。
出典・参考:高取町観光ガイド「波多甕井神社」、『日本歴史地名大系』「波多井神社」
出典文献
古事記
日本書紀
古語拾遺
神格
ご神徳
ご神徳は不明です。
別称・異称
みかはやひのかみ
古事記/日本書紀/古語拾遺
甕速日命みかはやひのみこと
日本書紀
祀られている主な神社
蜂前神社
(静岡県浜名区細江町中川6915)
星神社
(岡山県北区真星1615)
劔神社
(福岡県直方市下新入2565)
古四王神社
(秋田県にかほ市象潟町五丁目塩越13)
太平神社
(秋田県仙北市角館町小勝田具吹1)
