ウマシマジ
うましまぢ
- 神話・伝説
- 男神・男性

菊池容斎(前賢故実)

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング170位
ウマシマジとは?
ウマシマジは記紀神話などに登場する男神である。『古事記』では宇摩志麻遅命、『日本書紀』では可美真手命、『先代旧事本紀』では宇摩志麻治命などと記される。ニギハヤヒとトミヤビメの御子神で、物部氏や穂積氏などの祖神とされている。
『古事記』では、父ニギハヤヒは神武天皇の東征に抵抗したナガスネヒコの妹である登美夜毘売を妻とし、宇摩志麻遅命をもうけたとされる。神武天皇とナガスネヒコの戦いでは、ニギハヤヒが神武天皇を天神の御子であると認め、ナガスネヒコを殺して帰順した。『日本書紀』でも饒速日命が長髄彦の妹である三炊屋媛を妻とし、可美真手命をもうけたとする伝承が記されている。父ニギハヤヒの帰順によって、その子孫である物部氏も天皇に仕える氏族として位置づけられていく。
ウマシマジ自身の事績は記紀では詳しく語られていないが、『先代旧事本紀』では物部氏の祖神として多くの伝承が記されている。父ニギハヤヒが天降る際に天神から授けられた十種神宝を受け継ぎ、神武天皇に献上したとされる。また、神武天皇の即位に際して十種神宝を用いて天皇のために鎮魂の祭祀を行ったと伝えられ、これを宮中で行われる鎮魂祭の起源とする伝承もある。こうした伝承から、ウマシマジは物部氏の祖神であるとともに、鎮魂や祭祀に関わる神としても信仰されている。
島根県大田市の物部神社ではウマシマジを主祭神として祀っている。同社の伝承では、神武天皇に仕えたウマシマジはその後、尾張、美濃、越国などを平定し、さらに石見国へ入り、当地で没したと伝えられている。物部神社はウマシマジの墓と伝わる御神墓を背後に鎮座し、物部氏の祖神を祀る神社として信仰されてきた。
ウマシマジは物部氏・穂積氏などの祖神として、鎮魂、勝運、文武両道などの神徳で信仰されている。代表的な神社は島根県大田市の物部神社である。
エピソード
『古事記』によれば、天つ神の御子であるニギハヤヒは、神武天皇が大和へ入る以前から地上へ降り、登美の長髄彦の妹であるトミヤビメを妻としてウマシマジをもうけた。長髄彦は神武天皇の東征を阻んだ勢力であったが、ニギハヤヒは神武天皇が天つ神の御子であることを認め、長髄彦を退けて服属した。『日本書紀』にも同様の筋があり、ニギハヤヒが長髄彦を殺して帰順し、その忠誠を認められたと記されている。
一方、両書はウマシマジ本人の働きを詳しく語っていない。『古事記』ではニギハヤヒの子であり、物部連や穂積臣らの祖であることが示されるにとどまる。後世に武門・祭祀氏族として勢力を伸ばした物部氏にとって、ウマシマジは王権への服属という転換点を受け継ぐ祖神となったのである。
出典・参考:『古事記』神武天皇段、『日本書紀』神武天皇即位前紀
『先代旧事本紀』では、ウマシマジは父から受け継いだ十種神宝を奉じ、神武天皇と皇后の御魂を鎮め、寿命の長久を祈ったとされる。十種神宝は、沖津鏡・辺津鏡・八握剣・生玉・死反玉・足玉・道反玉・蛇比礼・蜂比礼・品物比礼から成る霊宝で、振り動かしながら祝詞を唱えることで、人や万物の生命力を奮い起こす力を持つと語られている。
ここでいう鎮魂は、死者を慰霊するという現代的な意味だけではない。身体から離れようとする魂を鎮め、衰えた生命力を回復させる祭祀を意味する。ウマシマジがこの祭祀を初めて行ったという伝承から、物部氏は武力を担う氏族であると同時に、神宝を扱い祈祷を行う祭祀氏族としても位置づけられた。現在の物部神社でも鎮魂祭が行われ、ウマシマジは鎮魂と生命力再生の神として仰がれている。
出典・参考:『先代旧事本紀』天孫本紀、物部神社「鎮魂祭」
島根県大田市の物部神社には、ウマシマジが大和から石見へ移り、鶴に乗って鶴降山へ降り立ったという社伝がある。山上から国見をしたウマシマジは、周囲の山々が大和の天香具山に似ていることからこの地を安住の場所と定め、八百山の麓に宮居を築いたと伝えられる。社殿の背後には、ウマシマジが葬られたとされる御神陵も残されている。
この話は記紀に記された神話ではなく、物部神社が伝えてきた地域固有の鎮座伝承である。物部氏と関係する人々が石見へ移住し、その祖神を祀った歴史を神話的に表現したものと考えられる。物部神社ではウマシマジを文武両道、鎮魂、勝運の神として祀り、石見国一宮として広い崇敬を集めてきた。
出典・参考:物部神社社伝、島根県神社庁「物部神社」
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
新撰姓氏録
神格
ご神徳
ご神徳は不明です。
別称・異称
うましまじのみこと
古事記
可美真手命うましまでのみこと
日本書紀
宇摩志麻治命うましまじのみこと
先代旧事本紀
味間見命うましまみのみこと
先代旧事本紀
于摩志摩治命うましまじのみこと
新撰姓氏録
味島乳命うましまちのみこと
新撰姓氏録
味真治命うましまじのみこと
新撰姓氏録
宇麻志摩遅命うましまじのみこと
その他
可美摩遅命うましまじのみこと
その他
宇摩志摩治命うましまじのみこと
その他
宇麻志麻治命うましまじのみこと
その他
宇麻志麻遅命うましまじのみこと
その他
祀られている主な神社
石切劔箭神社
(大阪府東大阪市東石切町1-1-1)
物部神社
(島根県大田市川合町川合1545番地)
月寒神社
(北海道豊平区月寒西3条4丁目1番56号)
鳥見神社
(千葉県印西市小林2712)
鳥見神社
(千葉県柏市泉1358番地)
