菊まつり
笠間稲荷神社の菊まつりは、毎年10月下旬から11月下旬にかけて開催される、笠間市を代表する秋の祭典です。正式には「笠間の菊まつり」と呼ばれ、笠間稲荷神社の境内を中心に、門前通りや周辺施設まで会場が広がり、町全体が菊で彩られます。
この菊まつりは、明治41年(1908年)に、笠間稲荷神社の先々代宮司である塙嘉一郎によって始められました。日露戦争後の時代背景の中で、人々の心を和ませたいという思いから、神社に菊を育てる農園部を設けたことが起源とされています。神社の宮司が地域や参拝者のために始めた花の祭りという成り立ちは、現在まで受け継がれる大きな特徴で、日本で最も古い菊の祭典の一つとされています。
笠間稲荷神社の境内では大菊花展が行われ、立ち菊、懸崖菊、千輪咲き、盆栽菊など、さまざまな仕立ての菊が展示されます。展示数は約5,000鉢に及び、神社農園部の菊をはじめ、県内外の菊愛好家が丹精込めて育てた多彩な菊を鑑賞できます。整然と並ぶ立ち菊や、滝のように垂れ下がる懸崖菊は、育成技術の高さを感じられる見どころとして人気があります。
また、菊まつりは神社境内だけで完結する行事ではありません。門前町の通りや歴史的建物にも菊の装飾が施され、参拝とあわせて町歩きを楽しめる構成になっています。参道を歩きながら菊を鑑賞し、土産物店や飲食店に立ち寄る風景は、笠間ならではの秋の風物詩です。
さらに、昭和23年(1948年)からは菊人形展も開催され、祭典の内容はより広がりを見せてきました。近年では、菊の花をあしらった花手水や、参道に色とりどりの和傘を吊るす「参道アンブレラスカイ」も実施されています。青空を背景にした和傘の美しさは毎年好評で、多くの来場者が写真を撮る人気の演出となっています。
そのほか、菊まつりの期間中には「笠間稲荷神社・夜祭り」が行われる年もあり、お囃子とともに神輿が渡御し、境内には縁日の屋台が並びます。花の祭りでありながら、神社の祭礼としての性格も色濃く残している点が、この菊まつりの大きな魅力です。開催日程や催し内容は年によって異なるため、訪問の際にはその年の公式案内を確認することをおすすめします。