オオイカヅチ
おおいかづち
- 神話・伝説
- 不明

玉蘭斎貞秀(神佛図會)
祭神ランキング91位
オオイカヅチとは?
オオイカヅチは記紀神話などに登場する雷神である。大雷と表記され、古事記に登場する八雷神、日本書紀の一書に登場する八色雷公の一柱である。
火の神カグツチを産んだことで亡くなり、黄泉国へ去ったイザナミを追って、イザナギは黄泉国へ向かった。イザナミは自分の姿を見ないよう告げるが、待ちきれなくなったイザナギが火を灯してその姿を見ると、イザナミの身体には八柱の雷神が成っていた。
古事記では、イザナミの頭にオオイカヅチ、胸にホノイカヅチ、腹にクロイカヅチ、陰部にサクイカヅチ、左手にワカイカヅチ、右手にツチイカヅチ、左足にナリイカヅチ、右足にフシイカヅチが成っていたと記されている。
日本書紀の一書にもよく似た伝承があり、イザナミの身体に八色雷公が成っていたとする。ただし八柱の位置や名称には古事記との違いがあり、日本書紀では大雷はイザナミの首にいたと記されている。このため、古事記では頭、日本書紀では首に現れた雷神という違いがある。
変わり果てたイザナミの姿を見たイザナギが黄泉国から逃げ出すと、イザナミは八雷神に黄泉の軍勢を率いさせて追わせた。イザナギは黄泉比良坂まで逃げ、そこに生えていた桃の実を投げつけると、八雷神と黄泉の軍勢は退いたと古事記は伝える。
「イカヅチ」という神名については、「イカ」を厳しく威力のあることを表す「厳《いか》」、「チ」を霊的な力を意味する「霊《ち》」とする説などがある。また「大雷」の「大」を、八雷神の一柱である若雷と対になる名称として捉える説もある。
雷は激しい雷鳴や落雷によって恐れられる一方、雨をもたらし農作物を育てる自然の力とも深く関わってきた。そのため雷神は雷除けだけでなく、祈雨や農耕とも結びついて信仰されている。オオイカヅチも八雷神の中心的な一柱として、雷の強大な力を神格化した神と考えられている。
これらのことから、オオイカヅチのご利益は雷除け、災難除け、祈雨、五穀豊穣などとされる。
オオイカヅチを祀る神社には、大雷神社(上之村神社末社・埼玉県熊谷市)などがある。大雷神社は「上之の雷電さま」として信仰され、現代では電気に関係する人々からも崇敬を集めている。また、雷神を祀る雷電神社などの信仰とも深く関わっている。
エピソード
イザナギは亡くなったイザナミを連れ戻すため、死者の世界である黄泉国を訪れた。イザナミは黄泉国の神と相談する間、自分の姿を見てはならないと告げた。しかし、待ちきれなくなったイザナギが灯りをともすと、イザナミの身体には八柱の雷神が成っていた。
『古事記』では、頭にオオイカヅチ、胸にホノイカヅチ、腹にクロイカヅチ、陰部にサクイカヅチ、左手にワカイカヅチ、右手にツチイカヅチ、左足にナリイカヅチ、右足にフシイカヅチが成っていた。オオイカヅチは、八雷神の中でも頭に位置する神である。
『日本書紀』の一書にも、イザナミの身体に八柱の雷神「八色雷公」が成った伝承がある。大雷と火雷は『古事記』と共通して登場するが、その位置には違いがあり、『古事記』では大雷は頭にいるのに対し、『日本書紀』では首にいると記されている。そのほかの雷神についても名前や位置に違いがあり、記紀はよく似た黄泉国の神話をそれぞれ異なる形で伝えている。
雷鳴は天や地を震わせ、稲妻は暗闇を一瞬で照らす。黄泉国で変わり果てたイザナミの身体に八柱もの雷神が現れる神話には、死や穢れの世界と雷の恐ろしい力が重ねられていると見る解釈もある。オオイカヅチは、その中でもイザナミの頭に現れた雷神として描かれている。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「大雷」「八雷神」
変わり果てた姿を見られたイザナミは、恥をかかされたと怒り、黄泉醜女《よもつしこめ》を送ってイザナギを追わせた。イザナギは髪飾りや櫛を投げ、それらから生じた山ぶどうやたけのこを黄泉醜女が食べている間に逃げ続けた。
それでも捕まえることができなかったため、イザナミは八雷神と黄泉国の千五百の軍勢を追手として送り出した。オオイカヅチも七柱の雷神とともに、黄泉国から現世へ逃げるイザナギを追った。イザナギは十掬剣を後ろ手に振りながら逃げ、現世との境である黄泉比良坂へたどり着いた。
イザナギは黄泉比良坂にあった桃の実を三つ取り、追手を待ち受けて投げつけた。すると八雷神と黄泉の軍勢は黄泉国へ退いた。イザナギは桃の実の力をたたえ、現世の人々が苦境に陥った時にも助けるよう命じ、オオカムヅミという神名を授けた。
黄泉国の雷神たちが死者の世界からイザナギを追い、その追手を桃が退けるという神話からは、黄泉の穢れや災いを現世へ持ち込ませないという意味を読み取ることもできる。八雷神を退けた桃は邪気を祓う力を持つものとして描かれ、黄泉比良坂は生者と死者の世界を分ける境界となった。
出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「大雷」「意富加牟豆美命」
雷は落雷によって樹木や建物を焼き、人や家畜の命を奪うことがある。オオイカヅチが死者の国にいるイザナミの頭に成り、黄泉の軍勢としてイザナギを追った神話にも、雷神の恐ろしい姿が描かれている。
一方、雷を伴う雲は雨を降らせ、田畑を潤す。特に夏の雷雨は稲が成長する時期に起こるため、雷は作物の実りと深く関わる自然現象でもあった。「雷」を「神鳴り」と関連づける語源説があり、「稲妻」の「つま」を稲の配偶者と捉え、雷によって稲が実ると考える信仰も伝えられてきた。
このため日本の雷神信仰では、雷神は落雷や火災をもたらす恐ろしい存在である一方、雨を呼び、五穀を実らせる神としても祀られてきた。後世の信仰の中では、大雷神も雷除けや祈雨、農耕守護などと結びついて祀られるようになった。
雷に関わる神には、国譲りで活躍する武神・剣神タケミカヅチや、京都の上賀茂神社に祀られる賀茂別雷命もいる。しかし、タケミカヅチや賀茂別雷命は、黄泉国のイザナミの身体に成ったオオイカヅチとは別の神である。それぞれ成立する神話や信仰が異なっており、雷に関わるという共通点だけで同一の神とすることはできない。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學日本文化研究所編『神道事典』「雷神信仰」
イザナギは亡くなったイザナミを連れ戻すため、死者の世界である黄泉国を訪れた。イザナミは黄泉国の神と相談する間、自分の姿を見てはならないと告げた。しかし、待ちきれなくなったイザナギが灯りをともすと、イザナミの身体には八柱の雷神が成っていた。
『古事記』では、頭にオオイカヅチ、胸にホノイカヅチ、腹にクロイカヅチ、陰部にサクイカヅチ、左手にワカイカヅチ、右手にツチイカヅチ、左足にナリイカヅチ、右足にフシイカヅチが成っていた。オオイカヅチは、八雷神の中でも頭に位置する神である。
『日本書紀』の一書にも、イザナミの身体に八柱の雷神「八色雷公」が成った伝承がある。大雷と火雷は『古事記』と共通して登場するが、その位置には違いがあり、『古事記』では大雷は頭にいるのに対し、『日本書紀』では首にいると記されている。そのほかの雷神についても名前や位置に違いがあり、記紀はよく似た黄泉国の神話をそれぞれ異なる形で伝えている。
雷鳴は天や地を震わせ、稲妻は暗闇を一瞬で照らす。黄泉国で変わり果てたイザナミの身体に八柱もの雷神が現れる神話には、死や穢れの世界と雷の恐ろしい力が重ねられていると見る解釈もある。オオイカヅチは、その中でもイザナミの頭に現れた雷神として描かれている。
出典・参考:『古事記』、『日本書紀』、國學院大學 古典文化学事業「大雷」「八雷神」
変わり果てた姿を見られたイザナミは、恥をかかされたと怒り、黄泉醜女《よもつしこめ》を送ってイザナギを追わせた。イザナギは髪飾りや櫛を投げ、それらから生じた山ぶどうやたけのこを黄泉醜女が食べている間に逃げ続けた。
それでも捕まえることができなかったため、イザナミは八雷神と黄泉国の千五百の軍勢を追手として送り出した。オオイカヅチも七柱の雷神とともに、黄泉国から現世へ逃げるイザナギを追った。イザナギは十掬剣を後ろ手に振りながら逃げ、現世との境である黄泉比良坂へたどり着いた。
イザナギは黄泉比良坂にあった桃の実を三つ取り、追手を待ち受けて投げつけた。すると八雷神と黄泉の軍勢は黄泉国へ退いた。イザナギは桃の実の力をたたえ、現世の人々が苦境に陥った時にも助けるよう命じ、オオカムヅミという神名を授けた。
黄泉国の雷神たちが死者の世界からイザナギを追い、その追手を桃が退けるという神話からは、黄泉の穢れや災いを現世へ持ち込ませないという意味を読み取ることもできる。八雷神を退けた桃は邪気を祓う力を持つものとして描かれ、黄泉比良坂は生者と死者の世界を分ける境界となった。
出典・参考:『古事記』、國學院大學 古典文化学事業「大雷」「意富加牟豆美命」
群馬県邑楽郡板倉町の雷電神社では、火雷大神、オオイカヅチ、別雷大神《賀茂別雷命》という、由来の異なる雷神が祭神として祀られている。雷や水に関わる災害から人々の暮らしを守る神社として信仰されてきた。
関東平野では古くから雷が多く発生し、落雷は家屋の火災や農作物への被害を引き起こす恐ろしい自然現象だった。一方、田畑を潤す雷雨は、稲作や農業に欠かせない恵みでもある。人々は雷神を遠ざけるだけでなく、その荒々しい力を鎮め、必要な雨をもたらして作物を実らせる神として祀ってきた。
雷電神社では雷除けをはじめ、雨乞いや五穀豊穣など雷と農耕に関わる祈りが捧げられてきた。雷を恐ろしい災害として避けるだけでなく、雨と豊かな実りをもたらす自然の力として神に祈る信仰が、雷電信仰の大きな特徴となっている。
黄泉国で恐ろしい姿を見せたオオイカヅチは、後世の雷神信仰の中では雷の災いを防ぎ、その力を人々の暮らしや農業の恵みへと導く神としても祀られている。荒ぶる自然の力を鎮め、その恵みを願うという日本の雷神信仰の一面を見ることができる。
出典・参考:雷電神社公式サイト「御祭神・由緒」、群馬県神社庁「雷電神社」
出典文献
古事記
日本書紀
先代旧事本紀
神格
ご神徳
別称・異称
おおいかずち
古事記/日本書紀/先代旧事本紀
神様グループ
祀られている主な神社
西野田雷電神社
(栃木県栃木市大平町西野田436)
雷電神社
(群馬県伊勢崎市境伊与久3581番地)
雷電神社
(群馬県板倉町大字板倉2334番地)
大雷淡洲神社
(埼玉県滑川町山田1852)
雷神社
(千葉県流山市鰭ヶ崎1767番地)
